情報屋は異世界出身者4
指定されたのは雑居ビルの4階だった。
古びたドアをノックすると女性の声がする。
(昨日の彼女…と、もう2人は男性か)
悪意は無いようだ。単純に依頼だろう。
情報を読み取っていると扉が開いた。
シスルが顔を出す。
「待っていたわ。入って」
部屋の中には彼女と男性が座っていた。長身に黒い瞳の男性―――ロベリアが口を開く。
「情報屋、わざわざ呼び出して悪かったな」
「悪いと思ってない態度で言われてもね」
肩を竦めて少女は席に着いた。
彼女の目には依頼の内容が視える。
(なるほどねぇ〜…単なる殺し屋じゃないってか)
彼は机の上に一枚の写真を置いた。世界でも有名なあるIT経営者の写真だ。
「わかっていると思うが彼の営業ルートを教えてくれ」
今回の仕事は直接殺すわけではないらしい。自ら手を下さずとも滅びるほうへと誘導する。
確かに写真の彼は黒い噂も絶えない人物だった。
少女は情報を集める。どの物語が最短で最善か。
「―――はい、どうぞ」
書き出した情報を机に置いて立ち上がる。
その紙を手に取りロベリアは薄く笑う。
「礼は弾もう。今後もよろしく頼むよ」
その顔を無表情で見遣り、少女はいつもの言葉を告げた。
「またのご利用をお待ちしてます」
◇ ◇ ◇
「ロベリア、今の子だあれ?」
もう1人潜んでいた男性が現れた。
茶髪に軽快な口調で尋ねる彼は組織の諜報部員、ストック。
「今のが情報屋だ」
「ま、じ、で?」
ふむふむと頷きながらストックはロベリアを見た。
「てことは次の観察対象は彼女ってことでおーけー?」
「ふぅん、そのつもりだったの」
「彼女は何処にも属さないようだが彼女自身には黄金より高い価値がある。少なくとも組織の害とならないよう接触しろ」
「あいあーい」
ヒラヒラと手を振りストックはビルを後にした。
◇ ◇ ◇
少女にとって情報はこの世界で生きるための術でしかない。
なにが正しくてなにが悪なのか。そんなもの誰にも決めれやしないのだから。