情報屋は異世界出身者3
「じゃ、またのご利用をお待ちしてます」
そう告げると少女は本を手に、店を出ていった。
「………なんなの、あの子」
◇ ◇ ◇
美女―――シスルは情報屋と別れて、待機していた車に戻った。助手席に乗り込むとハンドルを握る男が声をかける。
「首尾は?」
「えぇ、欲しい情報は手に入れたわ。ただ貴方の読み通り手を下すのはこっちの仕事になったわよ」
「問題ない。まずは情報の正確性が判明すれば構わん」
男は簡潔に告げるとアクセルを踏んだ。
しばらく車内は無言のまま、車は郊外へと進む。
「ねぇロベリア」
流れ行く外の景色を見つめたままシスルが溢す。運転するロベリアは前を向いたまま答えない。
「あの子、まだほんの20かそこらよ。それなのにこんな世界で生きてるなんて恐ろしいどころか壊れてるわよ」
情報屋と向き合ったとき、なによりも彼女から生気を感じなかったのだ。人間であるはずなのに、まるで人形を相手にしているような。
シスルは恐ろしかった。少女がいつか世界を壊すような気がして。
ロベリアは黙って車を走らせ続けた。
◇ ◇ ◇
ビルの屋上で風を受けながら少女は呟く。
「流石ね、あの組織は」
彼女の情報には、昨日渡した対象者の死亡が入ってきた。痕跡を一切残さず、あたかも被害者が自殺したかのように作為されている。
「まぁ私はお金が入ってこればいいんだけど」
黒髪が風に揺られる。なにかが聴こえたらしく、彼女は薄く微笑んだ。
「そうね……」
そこへバイブ音が響く。ポケットの中のスマホだった。非表示の画面に躊躇いなく通話ボタンを押す。
「はい」
『情報屋か?』
声は男のようだ。彼女には相手が誰だかすぐに察しがついた。
「ええ、そうよ。用件は?」
『誰だか聞かないんだな』
「わかるもの」
昨日美女シスルに渡した情報を本当に依頼した人物――――ロベリア。
『………ふっ。流石情報屋だな。追加の依頼がしたい。今から此処まで来てくれ』
声の主は薄く笑い、一方的な指示のもと通話を切った。
「へーへー。まったく……」
スマホをポケットに仕舞った彼女はビルの屋上から空へ飛び出す。
風を纏った体はふわりと浮かび、次々にビルの屋上をつたい目的の場所まで向かった。