情報屋は異世界出身者2
―――――ある日突然、世界を揺るがす出来事が起きた。
【彼女】という存在が現れたのだ。
彼女は世界のあらゆる情報を知っていて金さえ積めばどんな依頼も請け負うらしいと言われた。
噂によると軍事用の武器庫を持つ機関を破壊しただとか、どんな要人の情報も全て筒抜けだとか、解決した依頼の報奨金は一億をくだらないだとか。
いつしか【彼女】は【情報屋】と呼ばれるようになった。各国の政府や組織は彼女を利用せんとコンタクトを試みた。
しかしのらりくらりとかわされて、結局どこにもまだ所属していない。
そう、彼女の名は。
◇ ◇ ◇
そこそこ人通りのある道のオープンテラス。
ウッドデッキをヒールで響かせながら金髪碧眼の美女は辺りを見渡し、目的の人物を見つけた。
「ここ、相席してもいいかしら?」
テーブルに座る少女へと声をかける。声をかけられた黒髪の少女は読んでいた本から顔をあげ頷いた。
金髪の美女はテーブルにつくと、コーヒーに口をつけて目の前の少女を見つめた。
本当にこの子がそうなのかしら。どこからどう見ても普通の女の子にしか見えないのよねぇ。まぁ『右から三番目のテーブルに座って待つ』っていう言葉通りではあったけども。
座ったは良いが、本題を切り出せずにいる美女の様子をじっと見つめていた少女はおもむろに口を開いた。
「申し訳ないけどその依頼、情報の提供だけで良いかしら?」
疑問で聞きながら断定の表情で少女は告げる。
慌てたのは美女のほうだ。依頼内容は伝えていないはずだ。何故わかったというのか?動揺を抑え、努めて冷静に返す。
「そもそもあなたが情報屋で間違いないのね?」
「まぁ情報屋って名乗ってるわけじゃないけど」
「私の依頼がわかって?」
「そうね。でも今回直接手を下すのは私の請け負う範疇じゃない。あくまで情報を提供するのが私の仕事」
美女は眉を潜めた。なるほど。そもそも依頼しようとしていたのは【とある要人の暗殺】。組織が調べたところ情報の提供だけでなく、システムの破壊や暗殺も少女の関わりがあるようだったのだ。
「何故?」
「別に殺すまで私に依頼するつもり無いようだし?ちなみに今までも殺人はしたことないわよ。賞金首になりたくないもの。あなたたちの組織の情報は完璧じゃない」
今度こそ美女は大きな溜め息ついた。
「流石情報屋ね。恐れ入ったわ」
少女は読んでいた本から白紙を取り出し、対象者の移動ルートと時刻を記入した。
「はい、これ」
「ええ…ありがとう」
「いーわよ、仕事だもの。それじゃ、振込よろしくね。シスル」
「………どうして私の名前を?」
「情報屋だもの、当たり前じゃない」
普通の女の子だと思っていた少女は、なんてことない表情で美女を見つめた。