情報屋は異世界出身者
彼女が生まれたのは戦争が絶えない国。
貧民街で暮らしていた彼女は実験施設へと売られ、魔力強化と殺しの術を教わった。彼女の魔力強化には多数の魂が使用され、火・土・風・水のみならず、聖魔法と闇魔法も習得した。
他にも暗殺に必要なスキルから、様々な道具の使い方、製薬方法などなど。身につけた技術は他国との戦に使われた。
あるときは首都を陥落させ、あるときは要人を殺害した。そこに感情は無かった。ただ命じられるまま、国のためにとその身を捧げてきた。
そして彼女の国は世界を統一した。全ての人がいる国を配下に治め、平穏が訪れた。
平穏と共に処分されたのはかつての殺戮道具。
そう、人類兵器と成り果てた少女を、世界は切り捨てた。
魔方陣の中心に彼女はいた。正確には後ろ手に縛られ、転がされていた。
『なぜっ!?』
彼女は悲痛な叫び声をあげた。此処は断罪の間。通常であれば罪を犯した人物を裁く場である。
――――何故此処に私がいるのだ。
見下ろすシスターの声は冷酷に響いた。
『あなたの力は大きすぎる。この世界を揺るがすほど。もう不要なのです、あなたは』
『私は国のために、あなたのために戦ったのです!国王陛下!!』
シスターの隣で薄ら笑いを浮かべる王。野心と神をも畏れぬ悪行により世界を統一した国王は、されど道具には興味など微塵も無かった。
『やれ』
『待ってください!!まっ―――――』
魔方陣が光り、室内にも関わらず風が吹き上げる。彼女の姿が光に包まれていく。
「ごめんね………アイーダ」
微かな呟きは誰の耳にも届かなかった。