大躍進時代
俺は新作を投稿した。これが思いのほか好評らしくアクセス数はイマイチだったが、ブックマークの数が順調に増えていく。
モチベーションが上がりまくり、ガンガン続きを書いた。
~ 第11話が公開されました ~
「さて、ブックマークの数を確認してみるか。しかし俺の話は面白いんだろうか?」
ブックマークを確認してみると124件。俺の不安をよそに増えている。
これで底辺作家と言われる領域の脱出に成功した。怖いくらいに順調すぎる。
小説情報のページを眺めていると、いつもは0だった感想の件数が1になっていた。さっそく見てみよう。
感想ページを開くとそこには、
『見ていて楽しいです、続きを期待しています』
と、短いながらも応援のコメントが書かれていた。
ふおぉぉ、やった、感想がもらえた。『誤字と脱字の指摘』以外を初めて書き込んでもらえた。
よし、頑張ろう。もっと面白い話しを書いてやろう。
~ 第23話が公開されました ~
ブックマーク数143件。最近すこし伸び悩んでいる。
ちゃんとプロット練り直したほうが良いのだろうか。
設定など、少し見直してみる。
「うーん、どうしたものやら。自動的にブックマーク増えないかな」
そんな事をつぶやきながら、再び小説情報のページを開く。
新たに話しを投稿した訳では無いので、ブックマークはどんなに増えても、2~3ぐらいだろう。
ところが、なんとブックマーク数219件、76件も増えていた。わずか2、3時間の短時間に何が起こった!
だが、原因はすぐにわかった。レビューが付いていた。
レビューにはこう書かれていた。
『この作品には、何か引きつけられるものがあります』
そして俺の作品がベタ褒めされていた。
はじめて小説屋になろうで、絶賛された気がする。
これがきっかけで、俺の作品はランキングに入る事ができた。
~ 第62話が公開されました ~
ブックマーク数13,027件。総合評価26,054ポイント。
今や総合ランキング上位の常連である。
話しを投稿すると「さすがです」「すごいです」など、かならず応援のコメントがもらえるようになった。
ネット噂によると、2万ポイントを超えた辺りから、書籍化の話しが出始めるようなのだが……
「まあ、書籍化なんて話しは、そうは無いだろう」
もっともな独り言をつぶやく、そんな美味い話はあるわけが無い。
最新話を投稿する為に、ホーム画面を開く、すると
『新たなメッセージが来ています』
と、新着メッセージをしらせる告知が表示されていた。
「あれ、メッセージが来てる。珍しいな、なんだろう?」
メッセージボックスを開けてみると、メッセージの件名に
『書籍化の打診が来ています』
と……
キター、マジでキター。
「ふおぉぉしゃやあぁぁぁ」
俺はよく分らない歓喜の声がでた。
いや、マジ、どうしよう。どうしよう。
メッセージを開くと『あなたの作品を是非、書籍化させてください』とあり、具体的な初版の発行部数と印税の割合が記されている。
「いや、おちつけ、落ち着け俺。ちょっと落ち着こう」
一息つき、コーヒーを飲む。
すこし時間がたち、興奮状態が収まり、心拍数が安定してきた。
「まずは情報収集だろう」
あまり当てにはならないが、某巨大掲示板の情報を読みあさる。
「なるほど、なるほど、出版社によって少し条件が違うのか」
人気作家になると、複数の出版社から打診が来て、その中で一番良いモノを選ぶわけだ。
だが、俺みたいな作家がそんな事を選べる立場にはない。
出版社の気分が変わらないうちに返事を書かなければ。
ふたたび小説屋になろうのホーム画面を開く。
すると、
『新たなメッセージが来ています』
なんだ、もしかして、さきほどのメッセージが間違いだったとか……
おそるおそるメッセージボックスを開けてみる。
そこには、
『書籍化の打診が来ています』
と、新たなメッセージが4件ほど。
なんだろう、同じメールの送信ミスだろうか?
メッセージの中身を確認すると、
『書籍化に興味はありませんか?』『うちから書籍をだしてみませんか?』
別々の出版社からそれぞれ書籍化の打診が来ていた。
打診を示してきた出版社には、この業界の最大手と言って良い『角巛 dooks』の名前まである。
「マジかこれ……」
俺はこの打診にすぐに飛びつく。出版社はもちろん最大手で条件の良い『角巛 dooks』を選択した。
それから担当の方と何度か打ち合わせをする。
そして2ヶ月後、店頭に俺の本が並んだ。