転生する前に現状を確認をしよう
俺は死んでしまったものの無駄死にではないようだ。チート能力を何かもらえるらしい。それも能力を自由に選べるそうだ。
いままで読んだ小説の中では、能力は選べずに強制的に異世界に飛ばされる者も多い。これは凄くラッキーだぞ。第二の人生を大いに謳歌しよう。
でも転生する前に一つ気になる事がある。これは聞いておかねばならない。
「ところで、俺の転生前の人生ってどうなるんですか?」
「『飴で喉をつまらせて、死んだ』それ以上でも以下でもありません」
いや、その死に方はあんまりだ。なんとかならないだろうか。
女神様に少し無理を言ってみることにした。
「……転生でなく、蘇生する形でなんとかなりませんか?」
「トラックにはねられて遺体が酷い損傷があるという訳でもないので、あなたが望むならその形でも構いませんよ」
「やった。生き返れるなら、それでお願いします」
「分りました、ところで特別な能力は何がいいですか?」
「えっ、生き返れる上にさらにチート能力がもらえるんですか?」
「あなたが望むなら、そうします」
「あっちょっと待って下さい。今考えます」
チート能力がもらえるのか、考えもしなかった。しかしどこまで無茶な注文が出来るのだろう。
ためしにこんな質問をしてみよう。
「もしかして魔法とかも使えたりしますか?」
「ええ、白魔法系と黒魔法系のどちらかになりますが、現代社会でも使えます」
「白魔法とかだと、どんな事ができるんです?」
「病気、怪我の治療など出来ますが、おまじないレベルです。ハッキリ言うと現代医療の方が進んでいますね」
……白魔法は使い物にならなそうだ。気を取り直して質問を続ける。
「黒魔法では、どんな事ができるんです?」
「一般人にわかりやすい魔法だと、サンダーボルト、ファイヤーボールあたりですかね。これらの魔法に説明はいらないでしょう?」
「はい、だいたい分ります。威力とかはどうなんです」
「状況によりますが、20~30人程度はまとめて黒焦げにできますよ。能力は黒魔法にしますか?」
「……いえ、黒魔法は止めときます」
なんだその桁外れの威力。この女神は俺に何をさせたいんだ。
考えてみれば、魔法なんて現代社会では役に立ちゃしない。日常生活の中で攻撃魔法を使うシーンが有るわけ無いや。
他に何か考えよう。身近に役に立ちそうな能力を……
そこで、思い当たる事が一つ出てきた。それは実に小市民的な願いなのだが……
「ところで小説に関して、こう、不思議な力とか何かできますか?」
そう言うと女神様はこれまで見せなかったとびきりの笑顔を浮かべる。
「私はなろうの女神『ナーロウ』です。専門分野なので、いかようにも出来ますよ」
女神様は喜びで後光が増して、その姿が直視できなくなるほどだ。
だがここまで喜ばれると、ちょっと他の種類の願い事は頼みにくくなってしまった。
「じゃあ、その方向でお願いします」
もっと凄い能力を希望してもよかったんだが、生き返られるだけでも十分ラッキーだ。
このチート能力は人生のおまけのようなものだと割り切ろう。