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小説屋 習志野 誠司

この話しに出てくる事は全てフィクションです。

『小説屋になろう』というサイトは今のところ実在しないもようです。

┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬


 敵の放った魔法『メテオバツーカー』が俺様の胸に突き刺さった。

 直撃だ。大爆発をして辺りは火の海に包まれた。

「馬鹿め、あのお方に逆らおうとするからだ」

 敵の黒いローブの男が言った。


 舞い上がる粉塵の中から、俺様は何事も無かったかのように立ち上がった。

「なっ、なにぃー、無傷だと!!」

 敵の黒いローブの男が驚いた。


「そんなもんじゃ俺様は倒せないぜ、こんどはこっちの番だな、ギャラクティカ・スウォード」

 剣を一振りすると敵の黒いローブの男はドグシャアと吹っ飛んだ。


┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴


 ……なんかイマイチだな、もっと良いフレーズは他にないか。

 読者をバッチリ引きつけるコレだという書き出しはないだろうか。


「……ダメだ、思いつかない。とりあえずこのままでいいや。先のシーンに進もう」


 俺の名は、習志野(ならしの) 誠司(せいじ)。文系の大学に通っていて今年で3年目を迎える。

 ごく普通の学生と言っても良いのだが、友人にすら打ち明けていない秘密の趣味がある。

 それは、なんと小説を書くこと。

 しかもただ書いて満足している訳では無い。『小説屋になろう』というサイトで作品を全世界へ向けて公開をしている。


「俺の書く作品はどれも大ヒット、ベストセラー作家です」と言いたい所だが、どの作品も反響は(かんば)しくない。

 作品の人気を示すブックマークの数字はいずれも一桁に留まっている。


 ちなみにブックマークがもらえない人気の全く無い作家は『底辺作家』と(ののし)られ酷い扱いを受ける。

 だが俺は今、その状況から這い上がる為に、とっておきの新作を用意した。

『ファンタスティック・ファンタスティック』という異世界物の小説を書いている。


 異世界物の小説は『小説屋になろう』では花形で、一番人気のあるジャンルなのだが。下書きをしている時点では、あまり良い手応えが感じられない……


「うーん、どうすりゃいいんだ?」


 パソコンの画面をジッと見る。もちろん見ているだけでは良いアイデアは浮かんでこない。

 なにげなく、机のそばに置いてある飴を口に放り込む。


「人気の作品から少しだけ,アイデアを拝借(はいしゃく)して…… いや、ダメだろ、それは作家としてやっちゃだめだ」


 さらに15分ほど時間が経過するのだが、やはり何も出てこない。


「……うーん、まあ、良いか今日はここまでにしよう。とりあえず下書きとして保存だ」


 パソコンの画面から『保存』を選択する。

 まだ書いている途中なので、この小説は公開はまだ先だ。


「作品中の主人公のように、俺もなにか特別な能力が使えたら良いんだけど……」


 そういって、二つ目の飴を口に放り込んだ。すると、舌をするりと抜け変な所へ収まった。


「っが、い、息が……」



 こうして俺はあっけなく死んだ。


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