くちなしの花の思い出
れみの母が小学校4年生の時に書いた物語です。
夏のさかりの八月、ある一軒の家の前にとても美しいくちなしの花がさいていました。そのそばには、一人の少女が悲しそうにたたずんでいました。そして一枚の写真をさも親しげに見つめているのです。これには、わけがあるのです。
「ミカちゃん、ほんとにまた来てね」
「うん、私のことわすれないでね。ああ、そうだ。このくちなしの枝をあげる。挿し木して、かわいがってね」
車が走り出しました。
「エミ子ちゃーん」
「ミカちゃーん」
二人の声は、だんだん小さくなっていきました。
エミ子は、それからくちなしの木をそだててきました。今では、大きくなって夏になると美しい花をさかせてくれるのです。
くちなしの花を見ていると、ミカちゃんに会えるような気がしました。しろい花びらは、あの日、ミカちゃんが着ていたワンピースによく似ています。