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第二章 2

~登場人物紹介~

小林 将宗

新城 楓



          2


 数十分後、再び俺の部屋を訪れた楓は、白いワンピースに長めのコートを羽織り、黒い濃いめのタイツに茶色いブーツを履いてやってきた。両手にはまぁまぁ大きめの紙袋をふたつ持っている。袋のなかには多分、これから売りに行く本が入っているのだろう。

 「じゃあいくか」

 「はい、道案内の方お願いしますね」

そう言ってお互い隣同士、部屋の鍵を閉めた。もちろん、紙袋を一つ俺に持たせて。まぁこういうのは妹の買い物ついででよくあることなので慣れてはいるが。そして、何気に彼女の私服姿を見るのは今回が初めてになる。昨日は結局、一日中あのジャージだったから、こういった彼女の姿はとても新鮮に映った。

 「服、意外と可愛いと思うよ?」

 「将宗さんはだいたい一言余計なんですよ。あとなんで最後疑問形なんですか」

文句を言われつつ、俺は彼女に正直な感想を打ち明ける。自分は女性の服にめっぽう詳しいわけではないが、おしゃれな感じだと思う。妹とたまに買い物に行くついでに、ふらっと一緒にお店に立ち寄ったりはする程度の知識でしかないが。

 「まぁこれ、お母さんのおさがりですから。私がこんなかわいい服を選んで買えるわけないじゃないですか」

 「なんでそんなえらそうなんだよ・・・」

彼女は薄い胸を張ってそう宣言していた。

 「私は基本的に着られればなんでもいいって人ですから。多分、なにも言わなければ普通にジャージとかスウェットとかで外出しますよ。女の人がみんな可愛いと思っているのは童貞だけですからね」

 「俺、服装褒めただけなんですけど。なんで俺こんなところでも童貞言われなきゃいけないんですかね」

自分そんなに悪いことを言ったか、と内心思いながらも、彼女はさらに言葉を続けた。

 「そもそも、私、この『また』の開いた服ってのが嫌いなんですよ。スースーするじゃないですか。あとなんか全体的に下半身が守られてないんですよ。攻撃されたときとかタイツだと防御力が低いんですよ」

 「一体なにと戦うっていうんだよ・・・」

まぁおしゃれは我慢だという言葉もあるくらいだし、考え方は人それぞれだろう。でも嫌と言いながらスウェットで来なかったのはありがたい、というべきなのだろうか。とりあえず楓は開店時間すぐに行きたいということなので、まだ朝の九時半だが、その古本屋は歩いて少し距離があるので早いが家を出ることにした。

 「で、この紙袋の中身は本なんだろ?どんなのが入ってるか聞いてもいい?」

外を出て、まだ少し肌寒い風を受けながら、俺は彼女にそう尋ねた。俺自身が書店の店員というのもあり、どんな本かというのは少しだけ興味がある。紙袋の中の本の上から新聞紙が覆いかぶさっており、タイトルを見ることはできなくなっている。

 「本当にくだらないものですよ。大学受験の赤本とかもう今の私にとっては不要なものですし。それと私の趣味の本を少々、って感じです。あとはあのくそ親父が読んでたマンガもちょっと持ってきました」

 「なんか最後のはいけないもののような気がするけど?」

下手したら今頃、家中を探している親父さんの姿が目に浮かぶ。まぁ会ったことはないので何とも言えないが。まぁ楓が持ってくる、というくらいならそれほど大切にしているものでもないのか、と勝手に自分の中で納得できる解釈をしておく。

 「この本たちが一体いくらくらいになるのかはわかりませんが、とりあえず海苔は買わないとですね。あとは余裕があればカーテンがほしいです。今のところそれがないんで窓から将宗さんに見られ放題なんですよ。将宗さん、パソコンとか詳しいからって私の部屋を盗撮してネットにあげたりしたらダメですからね」

そう言って彼女が不審な人を見るような目でこちらを見つめる。

 「あのね、そんなことしたら俺普通に警察に捕まっちゃうから。まぁでも、そうなるとそういった家具とかのコーナーにも少し行かないとだな。まぁ多分今日行くところで全部揃うとは思うけどさ」

カーテンが欲しい、という彼女の意見はもっともで、隣り合う俺たちの部屋は、お互いの部屋の窓が向かい合っている形(コの字型)になっており、いまのままでは俺の部屋からだけならまだしも、多分、俺の部屋の上の階と下の階の人からも彼女の部屋が丸見えだろう。いまは一応段ボールを積んでどうにかしているらしいが、さすがにそれでは不格好だし、なによりそれでは陽の光が入ってこない。

 「私、まだここに越してきて一日目で、全然お店とか知らなかったんでほんと助かりましたよ」

 「そうなの?予め住む部屋の下見とかはしなかったの?」

彼女の言葉に対し、俺がそう不思議そうに尋ねると、なぜか彼女は少し嫌そうな顔をした。

 「私、部屋自体を見るのは昨日が初めてですね、ネットなんかで写真も見ていませんでしたし。私だって来る前はもっとボロい、すきま風が吹き荒れているアパートを想像していましたよ。でもこの部屋はお母さんとあのくそ親父が勝手に契約したやつですから、文句は言えません。多分借主もお父さんのままになってると思います。とりあえずあいつとしては私に早く出て行ってほしかったって感じじゃないですか?そこは私にもわかりません」

実は娘のことを思って、女の子が住んでも安心なところを当てがったようにも見えなくはないが、俺はその話を聞いてなんとも言えない気持ちになった。とりあえずその話を蒸し返すのはやめておいた。

 「じゃあ本当に突然引っ越してきたばっかり、って感じなんだな。大学はだいたい俺の家から歩いて15分くらいだけどとりあえず入学式までに一回行っておいた方がいいか?」

 「私、大学も高校の時の先生に薦められるがまま、って感じだったんで。どうですか、大学は楽しいですか?」

 「どうかな、女の子は少ないけど俺的にはまぁ悪くないと思ってるよ」

俺の専攻している学科では顕著だが、IT系の大学ということもあり、基本的に女子はいないと思ってくれていい。CGやアート・デザインの方になるとちらほらみられるみたいだが、基本、絵に描いた大学生活や、女の子との出会いなんかを目的にしてきたやつらが来る大学ではないと個人的には思う。

 「将宗さんって、なんでこんなゲイっぽいエピソードが多いんですか?違うんですよね?私、信じていいんですよね?」

 「俺はただ単に好きなことをしたいと思ってこの大学に来ただけだ。ただ遠くの大学に行くのはやめろって妹がうるさいから近場を選んだってだけ。マジで他の理由はない」

何故か俺をやたらとゲイ扱いしてくる彼女はさておき、俺たちはお互いのことをまだ全然知らないんだなぁと改めて実感させられる。

 「そうですか。私的にいろいろ聞きたいことはあるんですけど、まずば妹さんがいるんでしたよね。どんな方なんですか?」

彼女もきっと、そんな風に思っているのだろうか。昨日から俺のことについてよく質問を受ける気がする。まぁお互い出会って1日だから仕方がないだろう。むしろそんな人と一緒に買い物をしに出掛けている、という方が不思議なくらいだ。

 「妹か?まぁ兄視点の補正を抜きにしてもそれなりにモテそうな顔立ちだとは思う。ただちょっと思い込みが激しいというか、見ていないとなんかやらかしそうっていうか、そんな感じだ。まぁ俺の部屋によく遊びにくるから、それなりに会う機会はあるんじゃないか?あいつ勉強苦手だから教えてやってくれ」

 「遊びにくるんですか。それじゃあ来た時是非教えてください。どんな教科でも任せてください」

 「あぁ、ただあいつ遊びにくるときはものすごい不定期にくるから、俺の部屋に来たときに楓がいるとは限らないかもな」

俺の妹は一応高校生なのだが、あまり学校には行きたがらないやつなので、とりあえず平日の昼間に来たり、はたまた深夜にもお構いなくおしかけてくることがある。親と喧嘩したりすると決まって深夜に親から電話がかかってきて、その後しばらくすると妹が俺の部屋にくるって感じだ。雨の日だろうと吹雪の日だろうとお構いなしだ。

 「平日というと高校、というか学校には行かないんですか?」

 「まぁ、小学校、中学校の頃から学校にはあんまり行きたがらないやつでさ。親は行け行け、ってうるさいんだけど、俺は別に好きなときに行けばいいんじゃない?、って言ってるうちにお兄ちゃんっ子になっちゃったってわけ」

親からはいつも甘やかしすぎんなと怒られたものだ。しかし最近では、もう親の方もあきらめたようで、そう言われることも少なくなった。

 「だから将宗さんはやけに世話好きなんですね。こんな貧乏神みたいやばいのが隣に住みはじめても平然としているわけですよ」

 「そういう自虐のされかたをすると突っ込みづらいからやめてくれ」

そう俺が言ってみるものの、楓は笑顔でそれをカラっと笑い飛ばすだけだった。

 「じゃあ私が妹さんの家庭教師をしつつ、私は将宗さんにご飯を食べさせてもらうってのはどうでしょうか。我ながら良いアイデアだと思うんですけど」

 「まぁ、確かに助かるっちゃ助かるかな。あいつ、ちょっと頭は弱い方だし」

俺も以前、楓に勉強を教えようとしたことはあるものの、どうやら俺は人になにかを教えるということは向いていないらしく、あまり妹も乗り気にならなかった。まぁ一応俺の専門知識的なパソコンとかインターネットとか、そこらへんのことについて聞かれた時だけ簡単に教えるようにはしている。まぁそのおかげか妹はいまでは立派なネット廃人と化してしまっているようだが。

 「ちなみにですが、私、人に勉強は教えれますけど、料理とかは一切教えれないんで。というか私自身が教えてほしいくらいです。昨日は将宗さんに勢いでなんでもするとか言っちゃいましたけど、料理だけは頼まない方がいいと思いますよ。掃除、洗濯とかは好きなんで頼まれれば全然やりますけど、料理だけは本当に勘弁してください。いや、作ってもいいですけどね。後悔するのはきっと将宗さんのほうだと思いますよ?」

 「・・・なんだよそれ」

後半の部分にとてもまがまがしい雰囲気を感じたが、とりあえずは彼女に料理は頼まない方が良いということだろうか。

 「将宗さんは料理得意なんですか?」

 「いや全然」

 「じゃあ食事はどうしてるんですか?」

 「忙しいときは冷凍食品を適当にチンしたり、あとはバイト終わりに総菜コーナーから半額の弁当買って帰るのが多いかな」

俺は別に料理が不得意なわけではない。しかし、一人分の食事を作って、食べて、その皿を洗って、また食材を買ってきて、というサイクル自体、結構労力がかかるということに大学一年生の後半あたりで気が付き、それ以来は作ることもあれば、外食(基本的には半額弁当)をすることもあるという感じだ。

 「大学生なんてみんなそんなもんだろ」

 「そうなんですか?私のイメージでは大学って安い学食とか、格安お弁当とか売ってるのを想像していたんですがそこらへんはどうなんですか?」

 彼女の生活の一部がかかっているせいか、さきほどの話のときより楓の目つきがガラリと変わり、俺の体に穴が開くかのごとくこちらを睨みつけてくる。

 「そんなに睨まれても。うちの大学はそこまで大きくないからな。一番安いのはかけそばとかうどんとかな。200円くらい食えたりするけど。楓的にはこれってどうなの?」

 「いや、高いですよ、なんですかそれ。なめてるんですか?家で麺ゆでて食べれば100円もしないじゃないですか」

 「まぁ、ですよね」

そう言うとは思ったけど。うちの大学で定食を食べようとするとかるく400円はもっていかれる。よくネットでみる学内の格安の学食なんていうのは、いわゆるマンモス校、と言われる学生数が1000人とかそのくらいの大学でのことで、それは全国に数百ある大学のほんの一握りにすぎないと思う。

 「私、ほんと将宗さんに見つけてもらえてよかったです。正直学食をアテにしてたところもあったんで。もしこのままだったら春に生えてくる植物とかを食べなきゃいけないところでした」

 彼女は若干低いトーンでそう言いながら今はうっすらと雪に覆われている公園の芝生をぼーっと見つめている。

 「・・・そのマジなのか冗談なのか判断しかねるのはやめてくれ」

 「いやだなぁ、結構美味しいのもあるんですよ?」

・・・とりあえず、この話はさすがにレベルが高すぎると判断し、これ以上掘り下げずに別の話題を探すことにした。

 「ってか俺からもひとつ聞いていいか?」

 「なんです?」

俺は無理矢理話題を変えるよう若干早口になりながら彼女に話を振った。

 「楓の誕生日っていつ?きっと秋頃とかじゃない?」

 「9月2日ですよ?それがどうかしました?」

 「いや、良い名前だな、って昨日漢字見て思ってさ」

昨日の夜、電話帳に彼女の名前を登録したときに、そう感じたのをふと思い出した。咄嗟に出した話がこれってのは若干不自然だとは思ったが、まぁ食べられる草や植物の話よりかは幾分マシだろう。

 「・・・将宗さん。やっぱり貴方ってとっても素敵な方ですね。養ってください」

しかし、俺の心配とは裏腹に、楓はその言葉を聞いて目をキラキラと輝かせていた。

 「いいってそういうのは」

 「まぁ、冗談はさておきですが。私の名前は今は亡き本当のお父さんがつけてくれた、とお母さんからは聞いています」

今は亡き、楓の本当のお父さん。昨日は物心ついたころにはいなかったと聞いていた。改めて家庭の事情ってのは人それぞれなんだなぁと俺は実感する。楓はそこからさらに言葉を続けた。

「秋の月に生まれたんできっと楓、って名前を付けてくれたんだと思います。苗字の新城、ってのも自分的には結構気に入ってるんですよ。新城楓、ってなんかすごい綺麗だと昔から私自身、自画自賛ですがそう思って生きてきました。まぁ名前くらいしか取り柄がないからかもしれませんけどね」

 「いや、そんな自虐的にならなくても。すごいいい名前だと思うけどな。いや、別に口説いてるとかではなく」

一応最後に断りもしておいたが、決して口説いているわけではない。それにしても新しい城に秋の紅葉をイメージさせる楓。とっても良い名前で女の子らしいというか。そんな風に昨日聞いて思った気がする。

 「でもなんでしょう。新城楓、って漢字の画数的にはなんか良くないらしいですけどね。不運というかなんというか。それもお母さんからだいぶ昔にちょっと聞いただけなんで詳しいことは覚えてないですが」

 「画数?画数って漢字の画数ってことか?そんなもん当てにならんだろ。それを言ったら日本人以外の人に名前の人に説明がつかないじゃんか」

 「まぁ確かにそうですけどね。私の今までの人生が人生なんで、そこを疑いたくもなるんですよ」

 「そんなもんなのか?」

 「そんなもんなんですよ」

自分の名前の由来はともかく、名前の画数とか今まで生きていて全く気にしたことがなかったなと少し考えてみる。じゃあ海外の人とかはマイク、とかケビン、とかそういうのにも運勢があるのだろうか。しばらく考えてみたが、よくわからなくなったので俺は考えるのをやめた。一方隣の彼女はというと、なぜか少しご機嫌なようだった。少しだけ顔がにやけているように見える。

 「・・・顔が緩んでるぞ」

俺がそう指摘すると、楓はハッ、と我に返り、自分の頬を一度両手で平手打ちした。

 「いや別になんでもないです。ただ、将宗さんが私のことに興味をもってくれる、ってのはちょっとうれしいなって。あとなにか聞きたいこととかありますか?あっ、セクハラみたいな質問は禁止ですよ。私が年下だからと言ってなんでも答えるなんて思わないでくださいね」

 「そんな思ってないから」

一応釘を刺されたが、やはり見ての通り上機嫌だった。お互い知り合ったばかりだが、俺としても少しずつ知らない人と打ち解けていく感じはとても楽しい。楓自身、若干生意気なところはあるが、きっと根は真面目で、いいやつだと勝手に思っていた。まぁそんなやつだからこそ、からかい甲斐があるってものだ。

 「じゃあ逆に聞くけどさ、セクハラみたいな質問ってなんだよ」

 「えっ、それは、なんでしょうね。いやらしい話とか?」

そう言って彼女は困った顔をしながら少し言葉を濁した。

 「いやらしい話って抽象的すぎだろ、もっと具体的に説明してくれないと分からないから」

 「・・・将宗さん、わざとなんですか?私にそういうことを言わせるのが趣味なんですか?結構マニアックなんですね」

別に趣味とかではなかったのだが。俺自身、彼女のことを隅から隅まで根掘り葉掘り聞くつもりもないし、というか彼女が怪しい人ではないということは昨日の一件でなんとなく知れた気がする。少なくとも多分、あと一年は部屋が隣同士の関係は続くわけだから、知っておいても損はないだろうといった感じだ。

 「例えばですよ。昨日私は将宗さんに下半身すっぽんぽんなところをばっちり見られたわけですが、そういう話を蒸し返したりするのはNGです」

 「いきなりすごいのぶっこんできたな」

 「あと、将宗さんにたくさん質問をしているあいだ、私はずっとノーブラで、ノーパンだったの?とかいう質問も受け付けていません。セクハラで訴えますよ」

 「えぇ・・・」

俺的には、彼女が勝手に蒸し返したような気がしてならないわけだが。現にいま言われるまですっかり忘れていたわけだし。

 「どうせ私は色気のない貧相な身体だなぁって思われたんだと思います。胸だってこの通りですし」

 「いや、被害妄想すぎるだろ」

ってか、昨日に関して言えば、下はすっぽんぽんでも、上の服はしっかり着ていただろ。脱いだブラジャーはしっかりと見てしまったけれど。

 「世の中の男性はですね、もっと女性の内面的なところを見るべきなんですよ」

 「まぁ確かにそれには同意見だけど」

 「それにですね、胸があったって邪魔なだけですよ。どうせ男をたぶらかすための道具にすぎないんですから。体の前面にあんなおもりみたいなのをつけていたって邪魔なだけです」

 「はぁ・・・」

よくわからん彼女の力説におもわずため息が漏れる。でも確かに俺自身、中学生の頃に徒競走をしている同級生の女の子の胸部を見て「あれは、走るのに邪魔だろうなぁ」と思った記憶は確かにある。まぁ周りの男子はそれを見て「揺れてる」とか「あいつやっぱりでけぇよ」なんか言って興奮していたので、俺もそれに合わせるようにはしていたが、やはりあれは女子的にも邪魔なのだろうか。男に生まれた以上、そんなことを考えてもどうしようもない気もするが。

 「それに、今は若くてピチピチしていても、いずれは年をとって醜くなるだけですよ。あんなのなくて良かったです。ついていないことに誇りを持つべきですよ。別に悔しいわけじゃありません、ただ生きてくうえで本当に必要かと言われればですね・・・」

 「・・・なんか悟りが始まったけど」

 その後、彼女のスタイルに関する一人語りが長々と続いたが、とりあえず適当に聞き流すことにし、俺たちは古本屋へと歩みを進めた。


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