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おとぎ迷宮と魔法っ子  作者: 暦 あみだ
プロローグ
1/2

大穴の始まり

「アリス、アリス! どこにいるんだい、アリス!」

「こっちよこっち! 皆、手のなる方へおいで!」


 どかどかと魑魅魍魎ばりの外見の皆が私の後をついて走ってくる。

私がちらりと姿を見せると、皆こっちに気付いて近寄ってくる。

皆、私のことが好きだから心配してるのかしら。

だったら嬉しいけれど、お姉様に言わせれば「気味が悪い」?

そんなことないわ。

みんな素敵よ。ちょっと私には訳が分かんないことが多いけどね。

――ああ、考え事の間にもう到着しちゃった。

私の帰るべき道に!


「危ないよアリス!」

「アリス。なんてことをしてるんだい!」

「そうよ。そうよ。ラララ、あなたらしくないわ~」


 皆がそろって言う言葉。

どうしてかって、私が今立っているのは崖っぷちなの。

落ちたら死んじゃうわね。

でも死なないわ。だってここは夢だから。


「いいえ皆の考え方が間違ってるの! 私は人間。現実で生きるために生まれた存在。ここは夢。現実とはかけ離れた異質な時間。お茶の時間に間に合うように私は帰らなきゃならないわ。ここにいるべきじゃないの。だからね、お家に今すぐ帰るの! だからさようなら、皆!」


 地面を蹴って、荒れ狂う涙の海に飛び込むの。


アリス、アリス!そっちへ行ったら本当に君はッ――


 大好きなみんなの声を聞いて、私は帰るの。

大好きなお姉様、お母様、お父様、飼い猫のダイナ!

三月ウサギさんや帽子屋さんや眠りネズミさんみたいにへんてこなお茶会じゃなくていいわ。

みぃんな笑顔でいられればそれがいいかしら。

そう考えると水の苦しさもなんてことないじゃない。

もう息を吐き出して泡にして、水を飲みましょう。

 ほら。目が開かなくなってきた。

 ああ、早く帰りたいわ。

私の愛しの現実の世界!



「――馬鹿なアリス。自分からおとぎの国になってしまうなんて。ここで死んでも現実には帰れないのに」

「白ウサギ、どうして教えなかったの!」

「僕も僕で忙しかったんだよ、女王様。遅刻したら僕が今のアリスになっちゃうよ」

「それもそうだね。はてさて主人公がいなくなったこの世界はどうしようかしら」

「はいはいはーい! オレに提案があるヨっ!」

「なんだい、帽子屋」

「忘れられないように、夢を現実にしちゃえばいいんだヨ! そうすれば誰も忘れない。オレ達は絶対に消えないんだヨ、女王様!」

「それは素敵だね! ん、でも、それだけだと面白くないよ。……そうだ。子供がこの夢を消せたら私達は思い切ってプレゼントをあげよう。そして、いさぎよく消えてあげよう!」

「そんなー! どうしてですか女王様!」

「バラの花。大丈夫だよ。そう簡単に消させないようにしたらいいんだよ。そうだね、じゃあ女王の私の首をとれたらプレゼントをあげて消えようか。皆異論はあるかい?」

「じゃあ僕らが女王を守ればいいんだね!」

「ああそうだよ、グリフォン。王も、異論は?」

「ありませーん!」

「そうと決まれば始めるよ、おとぎの世界を人の世界に!」

「「「「おとぎの世界を人の世界に!」」」」

「「「「おとぎの世界を人の世界に!」」」」

「魔女の私が王様さ!」

「「「「女王様はおとぎいち!」」」」

「「「「女王様はおとぎいち!」」」」


 盛り上がる海の上。

それを遠くで、半目でニヤニヤといやらしい顔で笑う猫が一匹。


「くだらないね。ぼくはおーりた。あーあ、それにしてもアリスに本当の出口の事教えればよかったなぁ。ま、今言っても遅いケド」


 ピンクとムラサキのシマシマ模様をゆっくりと消して、誰にも気づかれず、最初からいなかったような雰囲気が残る中、奇妙な猫は外への扉を叩いていた。


ある意味プロローグです。大穴の始まりです。

童話の主人公が自殺すれば始まる童話の世界ですけど……嫌だなぁ、こんな童話。夢ぶちこわしだなぁ。


読んでいただけたら幸いですぞ。

そんでは!

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