第2話
翌日
「というわけで、生徒会メンバーを募集しようかと思う」
二人で使うには若干広すぎる生徒会室で、会長が提案を発した。
「は、はぁ……」
「なんだ?達也だって理想に近いメンバーが欲しいだろ?」
会長がぶちぎれてから一日たって今日、辞退すると逃げるように消えていった三人は、
どうやら本当に辞めてしまったらしい。なんか手続きやら教師の反対は
会長が押し切ったとかなんとか。噂がすぐに広まったらしく
朝教室に入ったときには俺まで白い目をされたものだ。いや、俺もあのぶりっ子には
イライラしていたけども。俺は直感であいつは何も変えることはできないと感じてたし、
少し理不尽すぎるけど最初だからこそ妥協はしていけないのだ。
「そりゃぁそうですけど、何か方法はあるんですか?」
すると会長はふふんと鼻を鳴らし、やたら誇らしい顔で喋りだした。
「昨日の学校帰り、本屋で僕は○達が少ないを立ち読みしてて閃いたんだが」
「うっわぁ~。まさかの人気ライトノベル参照ですか」
そんな俺の指摘はスルー。
「どうやらそのラノベでは部員募集ポスターに斜め読みというトリックを
使用しているらしいのだ。そうだな……例えば普通に呼んでも校則の事しか書かれて
ないが、文を斜めから読むと生徒会役員募集と読めるように工夫する訳だ。
一般の奴には分からないようにして、意図が分かる奴だけを勧誘できるって事だな。
この方法を使うのはどうだろうか?」
「パクるって事ですね」
「オマージュと言ってくれ」
「しかし会長、そもそも早速悪評が立ってるこの生徒会にそんな小細工を使わなくても
人はあまりこないと思いますよ?」
「む、それもそうじゃないか」
あー……馬鹿なんだな会長。
「なんだその見下すような目線は」
「あ、いや何でもないです。てか、生徒会役員の再選挙とかはやらないんですかね?」
「ふむ、それも考えたのだがな、また昨日の様な輩が混入してくる可能性もあるから
なんとか阻止しといた。役員は私達がスカウトするよう手配したぞ」
「会長権力すげぇー……」
まぁ世間から見たら辞退してった三人が通常で俺達が異端なのだろうけど。
だがここまで来たら後戻りもできないし半ヤケクソだ。
「そんな事はどうだっていい。達也お前も方法を考えろ」
「そうですねぇ~……とにかく今までの生徒会に不満があって意見をたっぷり持ってる奴を片っ端からスカウトするしかないんじゃないですか?」
「つっまんないな……お前は。センスって言葉を知ってるのか?」
「いや楽しさを競ってる場合じゃないでしょうが!」
「……まぁ仕方あるまい。まだ下校してない生徒もちらほらと
いるだろうし早速スカウトしてくるんだ。私はお茶を沸かして待ってるから」
「いやいやいや会長も行きますよ!?効率も全然違いますし!」
「私は昨日買った僕は○達が少ないを読みたくてだな……」
「買ったんかい!いいですから行きますよ!」
俺は面倒くさがる会長の背中を押し生徒会室を後にするのだった。
効率良く進めるために二手に別れて勧誘開始。
最後までブーブー言っていた会長だったが、はがないを取り上げた所意外と素直に
勧誘をはじめ一安心。俺好みの学校にする所か会長一人に手こずるのだから悲しい。
「さて、と」
自分では言ったものの生徒会に不満を持ってるなんて奴の
見分けなんかつくわけもなく、適当に声をかけていく。
朝の段階では周囲に白い目をされていたが、ここ一年でつくりあげてきた信頼は
そうそう崩れるわけも無く、皆もいつも通りに接してくれる。が、
「生徒会?予備校あるから時間ねぇんだわ」
「あの怖い会長さんがいるんだろ?あんな人だって知らなかったら投票するんじゃ
なかったぜー……。やっぱ顔だけで決めちゃ駄目なんだな!」
「生徒会?あーなんかいいわ。授業だけで精一杯だって」
みんな忙しくてどうにも食いついてくれない。それに生徒会(主に会長)の悪評もあって
あまり良い顔をしないのも事実。……一旦生徒会室に引き返すか。
ほとんどの生徒が下校したか部活中のため、人が少ない廊下を一人歩く。
しばらくして生徒会室に到着し、中に入る。夕焼けに染まる生徒会室は無人だった。
まだ会長は勧誘を続けているのだろうか。
ああ見えてやり始めると熱心な性格なのかもしれないな。
お茶をいれて、すすっていること五分。会長がなにやら満足気な顔で戻ってきた。
何か収穫があったのだろうか。
「どうでした?」
「一人、見つけてきたぞ」
「えっ!?まじっすか!」
「ああ。入っていいぞ」
すると生徒会室のドアががちゃりと開き一人の女性、いや女の子、いや幼女……?
ん?ん~~~~~??? が入ってきた。
サイドテールの髪形のその子は、とても愛らしい顔つきをしてるが身長が物凄く低い。
……小学生低学年ぐらいだろうか?
「会長……この子ですか?」
「ああ」
「……子供ですよ?」
するとその子は俺のスネを思いっきり蹴り上げ、大きく叫んだ。
「子供じゃないわよ!!」
「いっつ……!なにすんだ糞ガキ!」
「ガキじゃないし!ぶち殺すわよ!?」
とても子供からでるとは思えない言葉を浴びせられ、
何かしらのショックを覚えたところで会長が手でストップをかけた。
「はいはい喧嘩終了。達也、この子は本物の高校生だ」
「え、マジですか?」
「マジだ」
その子に向き直ってもう一言。
「……マジ?」
「マジだって言ってるじゃない!」
おぉう……世界は広いもんだな……。