表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
近衛戦記  作者: 島隼
第二章 ダルリア・セシル同盟
9/45

第二話 リーフポート

 セシル王国の一行が西方師団砦を出発した少し後、王宮の正門の先にある石橋の上にフォルティスとクラウス、他に近衛騎士達が十数名程が馬と共に集まっていた。

「それでは、セシル国王のお迎えに行ってまいります」

「ああ。最近瘴獣が頻繁に発生しているとのことだ。王国騎士団の方で相当片づけたようだが、道中注意を怠らないようにしてくれ」

「わかりました」

 クラウス達は馬に跨ると、セシル王国の一行を迎えにリーフポートへと向かった。今日の夕方に王都の西にある街リーフポートでセシル王国の国王一行と合流後に一泊し、明日の午後には共に王宮に到着する予定となっている。

 王宮を出発したクラウス達は王都ルキアの噴水広場の時計台で時間を確認し、そこから西に進路を変えるとブランデル邸とその先にある大聖堂の前を通りそのまま王都を抜ける。噴水広場から続く街道はセシル王国との国境近くまで伸びており、リーフポートはこの街道沿いにある。

 しばらく街道を進み日も大分高くなって来た頃、クラウス達は街道の途中にあるラートゥムの森へと入った。ラートゥムは広大な森であり、その広さは一般的な街と同程度ある。そして、このラートゥムの森を含めた西方地域がボストラーゴと呼ばれ、元老家の一角サビオ家の治める領地であり、居を構えるリーフポートはボストラーゴの中央に位置するリーフ湖畔にある西方最大の街となっている。

 クラウスはラートゥムの森に入ると無意識に上を見上げた。周りの木々は街道の上にまで枝葉を伸ばし、その間から心地良い木漏れ日がクラウスの顔を照らした。

「久しいな」

 久しぶり感じる木漏れ日の感覚に、クラウスは思わず頭で考えていたことが口から出る。

「クラウス様、どうかされました?」

「あ、ああ、いや、なんでもない。気にしないでくれ」

 声を掛けてきたすぐ隣にいる近衛騎士にクラウスは慌てて軽く手を振った。

 母親のクレーネとは三か月の一度の元老会議の際に王宮に来るため、たびたび会ってはいたが故郷のリーフポートに戻るのは一年振りだった。

「そうですか。しかし、いつ来てもすばらしい森です。任務が無ければ森林浴でもしたいところですね」

 近衛騎士の一人が周りや上を見上げる。広大な森ではあるが木々はそれ程密集しておらず、陽の光が地上にまで届くため柔らかな光の筋がクラウス達の周りを囲んでいた。

「このラートゥムの森とリーフ湖がボストラーゴの象徴だからな。もっとも、今年はこの森にも瘴獣が多く発生しているらしいが……」

「今年は本当に多いようですね。先日、王国騎士団から受け取った輝石は平年よりも五割程多かったようです。王宮の魔法官達は喜んでいましたが……」

「今年で落ち着いてくれればいいがな」

 瘴獣を倒すと残される輝石は魔力を込めて魔石として灯りや種火に使用出来るため、王国騎士団では倒した際に輝石を持ち帰り商人に売り渡したり、王宮の魔法官に届けている。王宮は夜間も灯りを必要とするため、絶えず輝石を必要としていた。

 

 ―― ……キィン ――

 

 クラウスが唐突に馬を止める。それに続いて他の近衛騎士達も同じく馬を止めた。

「聞こえたか?」

「はい。剣撃の音のようでしたが。王国騎士団でしょうか?」

 

 ―― ……キキィン ――

 

「何かと戦っているようだな。様子を見に行こう。明日のためにこの辺りの状況も確認しておきたい。二人程着いて来てくれ。他の者はここに残れ」

「はっ」

「かしこまりました」

 クラウスは馬を降りると二人の近衛騎士と共に街道を外れ、音が聞こえてきた方向に進む。森の奥へと入りしばらく進むと王国騎士団と思われる声が聞こえてきた。

 

「そっちへ行ったぞ!」

「逃すな!」

 

 クラウス達は声の聞こえる方へと進んでいくと、突然正面の茂みが弾ける。

「バジリスクッ! クラウス様! 危ない!」

「参謀長!」

 弾けた茂みから通称バジリスクと呼ばれるトカゲの瘴獣が現れた。バジリスクとは瘴獣となる前は手の平程度の普通のトカゲだったものが、死後に瘴気に取り憑かれ異形な変貌を遂げたいわゆる化物である。四つん這いではあるが立ち上がれば成人の胸ぐらいまではありそうな体長であり、全身が赤黒い鱗に覆われ、眼球は淀んだ赤い光を宿している。そのバジリスクが茂みを抜けるとすぐに正面にいたクラウスへと跳びかかった。

「下がれ」

 クラウスは慌てることなく二人の近衛騎士を手で制すと、自らの腰のバスタードソードに手を掛ける。そして、バジリスクがクラウスの間合いに入ると一閃、抜き放った剣はバジリスクが大きく開けた無数の牙の生えた口から胴体の中央部まで一気に切り裂いた。

 切り裂かれたバジリスクは断末魔を上げることもなくそのまま地面に落ちると、一瞬痙攣した後には動くことは無かった。そして、元はトカゲだったその体が消滅すると、その後には瘴気が結晶化したものと言われる黒い石、輝石が残された。

 瘴獣が輝石へと変貌したのと同時に、バジリスクが出てきた茂みから三人の青い鎧を着た王国騎士が姿を表す。

「どこにいった! ――あ、これはクラウス参謀長ではありませんか」

 小隊の隊長と思われる一人の王国騎士が、クラウス達に気付くと慌てて敬礼を行う。

「哨戒ご苦労。探しているのがバジリスクなら、たった今斬って捨てたぞ」

 クラウスは足元の輝石を拾い上げるとそれを渡した。

「これは申し訳ありません。一度に三匹も現われたものですから、一匹取り逃がしてしまいまして」

「この辺りもやはり多いか?」

「はい。例年に比べると多いですね。ですが、大分減りました。草原地域はほぼ一掃したのですが、この森がもう少しといったところです」

「そうか。明日、セシル王国の一行とここを通ることになっているのだが……」

「はい、聞いています。現在第一大隊が総出で哨戒を行なっていますので、明日までには街道沿いの安全は確保するつもりです。そうでなくても民の生活にも影響が出ていますので師団長からも激を飛ばされてますよ」

「そうか。エルス殿は息災か?」

「はい。セシル国王の相手で少々肩が凝ったと言われてましたが」

「ふふ、あの方らしいな。では、俺達はリーフポートへと向かう。街道の安全確保はよろしく頼む」

「はっ。道中お気をつけて」

 クラウスが敬礼をすると王国騎士達も慌てて敬礼を返した。近衛騎士団と王国騎士団は別組織のため直接的な上下関係は無い。

 

 クラウス達は街道へと戻ると再びリーフポートへと馬を進めた。

「西方師団が大分片付けてくれているようだな」

「はい。明日は安全にここを通れそうですね」

「ああ。だが、だからと言って油断するなよ」

「わかっています」

 ラートゥムの森を進んで行くと、二度ほど王国騎士達に護衛されたリーフポートと王都ルキア間を行き来する商隊や乗合馬車とすれ違った。普段は随時護衛されることはないが、最近の瘴獣の多さに対する対処として西方師団と王都防衛師団が交代で護衛に付いていた。

 しばらくしてラートゥムの森を抜けると視界が開け、草原の広がる広陵地帯へと出る。初夏の日差しで汗のにじむ顔を心地よい柔らかな風が撫でると、その風はそのまま草原の上を走り、草がまるでさざ波のように揺れた。

 ラートゥムの森から続く街道は途中で北、西、南の三方向に分かれている。北に向かうと北方の鉱山都市マウトサント、南にカリフ海まで行くと港湾都市オーシャルカーフへと続いているが、クラウス達はリーフポートへと続く中央の道を進み、小高い丘の頂上まで来ると一度馬を止めた。

「見えたぞ。リーフ湖だ」

 クラウス達の視線の先にはダルリア王国最大の湖であるリーフ湖があり、その水面が日の光を反射し美しく輝いており、未だ距離があるにも関わらず眩しく感じられた。

 そして、リーフ湖の北側には白い街並みをしたボストラーゴ内最大の都市リーフポートが見える。

「急ごう。瘴獣のことで少し時間が掛かってしまった。セシル王国の一行よりも後に着くわけにはいかない」

「はっ」

 クラウス達は馬の腹を大きく蹴るとリーフポートへと急いだ。

 

 石畳の街道をしばらく駆けると、日の光に輝くリーフ湖とリーフポートの白い街並みが徐々に大きくなってくる。クラウス達はリーフポートの街の入り口に差し掛かると馬を降り、手綱を引いて街の中を進んでいった。

 白で統一された建物が並ぶ街並みは、南側に見えるリーフ湖の輝く水面と上空の青空とで、まるで絵画のように美しい。リーフ湖はダルリア王国有数の観光地であり、リーフポートは観光都市として大いに栄えていた。

「まだセシル王国の一行は到着していないようだな」

「ええ、夕方頃に到着の予定でしたから、もう少々後ではないでしょうか」

 クラウス達は街の中をしばらく進んで行くと、それに気づいた街の人々が次々に集まり始めクラウスはそれに対して丁寧に対応していく。

 クラウスはボストラーゴの領主としてこの街に居を構える元老サビオ家の次兄としても、近衛騎士団の参謀長としても有名である。

「クラウス様、お久しぶりです。最近はなかなか街に戻られないから心配しておりましたぞ」

 クラウスのことを昔から知っていると思われる初老の男が声を掛けるとクラウスは苦笑いで返した。

「すまないな。王宮での職務が忙しくて。今日も任務で来ているんだ」

「ひょっとして、セシル王国の国王の迎えですかい? 数日前にクレーネ様から連絡がありまして、街の腕のいい料理人を集めていましたぞ」

「その通りだ。すまないが今日は先を急ぐ。また休暇が取れた時にでもゆっくりと寄らせてもらうよ」

「そうですか。ではクレーネ様によろしくお伝え下さい」

 男はクラウスの元は離れると、その話を聞いていた周りの住人も一緒に離れた。少し離れた位置で見ていた他の近衛騎士たちはクラウスの元に戻るとまた街中を進み始める。

「すまないな。気を使わせてしまって」

「いえ。ですが、相変わらずすごい人気ですね」

「ありがたいことではあるが、毎回こうだと少々疲れるな。先を急ごう、サビオ卿の邸宅はもう少し先だ」

「サビオ卿の邸宅? 御実家では――」

「今日は任務で来ている」

「は、はっ。失礼しました」

 

 街の中央まできたクラウス達は塀で囲まれた三階建ての大きな邸宅の前で足を止めた。他の建物と同じように白で統一された外観をしており、この邸宅がボストラーゴの領主であり元老の一人、サビオ卿クレーネ・サビオの邸宅でありクラウスの実家でもある。

 クラウスは塀の門から中に入ると広い庭を抜けて入り口の扉を叩いた。少し待つと中から低い男の声が聞こえてくる。

「どちら様でしょうか?」

「近衛騎士団参謀長クラウス・サビオです。セシル王国御一行の先導役として参りました。サビオ卿はご在宅でしょうか」

 クラウスが答えると慌てたように扉が開き、中から執事のような正装に身を包んだ背の低い六十前後と想われる男が現れた。

「これは、クラウス坊ちゃまではありませんか。お久しゅうございます。どうぞ中へお入りになって下さい」

「……ロバス。今は任務中だ。坊っちゃまは止めて欲しい。参謀長と呼んでくれないか……」

 クラウスは後ろで控えていた近衛騎士達からの気まずい雰囲気を感じながら、小声でロバスに耳打ちをする。ロバスは長年サビオ家の執事を務め、この館の一切の雑務を取り仕切っておりクラウスのことも子供の頃からよく知る人物だった。

「あ、こ、これは申し訳ありません。クラウス参謀長殿、中でサビオ卿がお待ちです」

 ロバスは慌てて言い直すと、再度クラウス達を中へと招き入れた。中に入るとすぐに広いロビーとなっており、白い壁には調和の取れた絵画や観葉植物、魔石のランプが置かれている。入り口の正面には二階へと続く階段があり、階段の両側と側面の壁にはいくつかの扉があった。

 クラウス達が中に入ると、正面の階段の上から緩やかでシンプルな赤色のドレスを身に纏い、クラウスと同じ金色の髪を肩まで伸ばした五十歳半ば程の女性、元老の一人、サビオ卿クレーネ・サビオがクラウス達を迎えた。

「おかえりなさい。クラウス」

 クレーネはクラウスに微笑んだが、クラウスはそれには答えずクレーネの目を訴えかけるように見据える。

「近衛参謀長クラウス・サビオです。セシル王国国王御一行の先導の任のために参りました」

 それはクラウスのクレーネに対する抗議の現れでもあった。その返答にクレーネは顔をしかめると大きく溜息をついた。

「ふう。相変わらずですね、クラウス。あの人にそっくり。母親一人をここに残して兄弟そろって家を出て、たまに帰ればその態度……。シリルはたまに手紙をくれるけど、あなたは連絡もよこさないで」

「サビオ卿……。その話は、また今度に……」

 クレーネの本気なのか冗談なのかわからない表情と、部下である後ろの近衛騎士達から感じる気まずい視線にクラウスは困り果てた。クレーネの言う『あの人』とは、八年程前に病死したクラウスの父親であり、近衛騎士でもあったオルド・エル・サビオのことであり、『シリル』とはクラウスの兄、シリル・サビオのことである。シリルは現在はダルリア王国の第二都市である公都シーキスにある大公宮で、大公アウロ・グラウィスの元、次期サビオ卿として政治を学んでいた。

「ふふ。冗談が過ぎましたね。まあ、全部ではないかもしれませんが。では、あなたの望み通り本題に入りましょうか。クラウス参謀長、先ほど西方師団から早馬が参り、あと一刻程で到着との連絡を受けました。館に部屋を用意しましたから到着までの間、こちらで待機するように」

 クレーネは笑顔から真剣な表情に切り替えると、クラウスに西方師団からの報告を伝えた。

 クレーネはロバスにクラウス達を案内するように言うと二階へと戻って行った。クラウス達は案内された部屋に入りひとまず腰を落ち着ける。クラウスは館に自室を持っているが、ロバスに頼み他の近衛騎士達と同じ客室を準備してもらっていた。

「クラウス様、よろしいので? 久々の御実家ですから我々に気にせずに――」

 ロバスが部屋を出ると近衛騎士の一人が口を開いたが、クラウスは手でそれを制する。

「もう母親に甘える歳ではないよ。それに今は任務中だ。すまないな、気を遣わせてしまって」

 クラウスは苦笑すると、その後はセシル王国の一行が到着するまでの間、先導と護衛の手順を打ち合わせた。

 

 

 ―― コンコン ――

 

「クラウス参謀長、セシル王国の一行がリーフポートに到着されたとのことです。間もなくこちらにいらっしゃいます」

 ちょうど一刻程経った頃、部屋の扉が叩かれロバスの声が聞こえてきた。

「わかりました。すぐに参ります」

 クラウスは返事を返すと他の近衛騎士達と共に部屋を出た。門の所まで来ると既にクレーネが出迎えの為に来ており、クラウスは近衛騎士達を正面の道に沿って整列させると、自らはクレーネの一歩後ろでセシル国王ヴィント・セシアルを出迎える準備を整えた。

 程なく正面の道の先に、西方師団の小隊に先導された馬車とセシル王国の近衛兵一団が見えてくる。

「クラウス……参謀長。いらっしゃったようです」

「はっ」

 一行はクレーネの邸宅の前で止まると、先導してきた西方師団の小隊とセシル王国の近衛兵が馬を降り馬車の周りに整列する。そして、近衛兵の一人が後ろの扉を開けるとセシル国王ヴィント・セシアルが馬車から降りた。クラウスは近衛騎士達に号令すると近衛騎士達が敬礼の構えを取り、ヴィントは軽く手を上げそれに応える。ヴィントは近衛騎士達の間を通りクレーネの前まで進むと、クレーネは丁寧なカーテシーでヴィントを迎えた。

「――クレーネ・サビオ殿だったかな?」

「はい。この国で元老を務めておりますクレーネ・サビオと申します。クレーネとお呼び下さい、ヴィント・セシアル閣下」

「うむ。聞いた通り美しい街だな。非常に調和の取れた街並みだった」

「光栄なお言葉、ありがとうございます。セシル王国からの長旅でお疲れでしょう。お部屋を用意してございますので夕食までの間お休み下さい。護衛の方々はこれにいるロバスがご案内致しますのでお待ち下さい」

 クレーネは後ろで控えていたロバスに護衛の兵士を案内するように伝え、自らはヴィントの案内役となり館へと入っていった。クラウスはここまで先導してきた西方師団の小隊の労をねぎらい砦に戻るの見送る。

「よし、我々も行動に移ろう。全員計画通りに明日の出発まで細心の注意を払って警備に当たってくれ」

 『はっ』

 近衛騎士達も各々の持ち場へと移動し、クラウスも館へと戻っていった。

 

 その日の夜、館の食堂ではささやかながらヴィントを歓迎する宴が催された。厨房ではリーフポートの街から集められた腕に覚えのある料理人達が腕を振るい、リーフ湖の新鮮な魚を捌いている。

 そして食卓で食前酒を楽しんでいたヴィントの前には、最初に生魚と野菜をオリーブ油と柑橘の絞り汁で和えた前菜から、主菜となるツァンダーと呼ばれるリーフ湖の代表的な魚のソテー、副菜として根菜の煮物、最後にはデザートとして数種類の果物が出された。

 どれもリーポートの代表的な料理であり、ヴィントと近衛兵達はそれらに舌鼓を打ちながら堪能した。そして、全ての料理を食べ終わった後にヴィントは大きく頷いた。

「すばらしい料理だった。リーフポートの魚料理のことは聞いていたが想像以上であった。魚を生で食べたのは初めての経験であったが、うまいものだな」

 ヴィントは自らの葉巻に火を付けると食後に供された葡萄酒を一口飲んだ。

「ご堪能頂けたのであれば大変うれしく思います。今日出させて頂いた魚は全てリーフ湖に住む魚でございまして、湖が近いからこそ出来る料理でございます。また、淡水魚は本来臭みがあるものですが、湧き水を源泉としているリーフ湖の魚はそういった臭みもなく生でもあのような料理にすることが出来るのです」

 ヴィントの斜め前に座るクレーネが丁寧に説明すると、ヴィントはその説明に耳を傾け時折頷いた。

「リーフ湖か。来る時に通ったがとても美しい湖だったな」

「ありがとうございます。リーフ湖は透明度も高く、もう少し暖かくなれば泳ぐことも出来まして、良い避暑地ともなっておりますので今後機会があれば是非お越しくださいませ」

「うむ。そうさせてもらおう」

 ヴィントは葉巻を一度吹かすとまた葡萄酒を一口飲んだ。

「今回の同盟は民間的なものでは無いが、ゆくゆくは互いの民も自由に行き来出来るようになり、この街に我が国の民も観光に来れるようにしたいものだな」

「それは素晴らしいことですね。セシル王国とダルリア王国は歴史的にも敵対したことはありませんが、不思議と交流もありませんでしたから。これを期に両国間の関係が深まることを願います。そうなれば互いに大きな価値が得られると思います」

「互いの価値、か……」

 ヴィントはグラスに残っていた葡萄酒を飲み干すと、クレーネが空いたグラスに葡萄酒を注いだ。

「是非ともそう、願いたいな……」

 ヴィントは注がれた葡萄酒に映る自らの顔を見つめる。

 その後はしばらく互いの国のことで談笑が続いた後、それ程遅くない時間に宴は終わった。

 

 

 翌朝、館の前に従者とセシル王国の近衛兵、そして先導するクラウス達近衛騎士が集まり準備を整えていた。そして、ちょうど準備が整え終わった頃に、ヴィントがクレーネと共に館から出てきた。

「それではヴィント閣下、王都までの道中お気をつけ下さいませ」

「うむ、帰りの料理も楽しみしていると料理人達に伝えておいてくれ」

 セシル王国の一行は帰りもリーフポートで一泊することになっている。

「かしこまりました」

 クレーネは深々とお辞儀をするとヴィントは軽く頷き馬車へと乗り込んだ。そして、クラウスを先頭にした近衛騎士達が先導し、王都ルキアへと出発した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ