異常が常
不快な表現や描写があります。
そういった物が苦手な方はお帰り下さい。
それが読者、作者、共に幸せになる為の唯一の方法です。
「 」
なんて言ってるんだろう。
分からない。
全ての音が遠ざかっていく、
「 」
「起きなさい、常」
急激に覚醒する。
ここは、ぼくの部屋だ。
そして、ぼくを揺すってるのはぼくの母さんだ。
ずっと起きないでいると、左頬に凄まじい痛みが走った。
悲鳴をあげながら、まぶたを開けると、母さんがバットを振りかぶっているところだった。
バン!
歯が何本か折れる音がした。
痛い。
「母さん起きたよ!」
息も絶え絶えに叫ぶと、母さんはバットを振るのを止めた。
「ご飯の用意は出来てるから、早く学校に行きなさい!」
ぼくが食卓にに着くと、お父さんが新聞をムシャムシャ食べていた。
「常。父さん今、すごい駄洒落思い付いたぞ」
ぼくは一応耳を傾けながら、妹の下着を食べ始めた。
「哲学者にカントって居るだろ。でもあっちじゃキャントって呼ばれてる。何でもカントはあっちでは『女性器』っていう意味だからだそうだ。だからキャント。can’t。キャン、ノット。できない。カント、キャント。女性器、できない」
どうでも良かったので、妹の脚を投げつけておいた。
急いで鞄の中に物を入れる。
えーと、チェーンソー、ショットガン、火炎瓶、ハサミ、カッターナイフ、木串、拘束具、妹の手、父さんの暑い(というか暑苦しい)想い、母さんのあの眼、ナイフ、ミキサー、釘、金鎚、後は、後は…
口の傷口に唾液が染みた。
「痛ッ」
あ、そうだ、バットだ。
「母さん、母さん!」
食卓に走りこむと、丁度母さんが父さんをバットで殴ってた。
「母さん!バット頂戴!」
母さんは父さんの割れた頭から脳味噌を引きずり出して食べながら、バットを渡してくれた。
「常。そのまま行くのは駄目よ。顔を洗ってから行きなさい。みっともないわ」
「え!今、ぼく急いでるんだって!」
「口答えしない!」
母さんが手刀で肩を貫いた。母さんは素手でも凄い強い。
これ以上、痛いのは嫌なので早く洗面所に向かう事にした。
洗面所にはベラベラさんが居て、剃刀で顔の皮を剥がしてた。剥がした皮は封筒に詰めて、手紙を添えて、愛しい人へと送るのだ。 いつもなら、ぼくも皮を剥がすのを手伝ったりするのだが、今日は違う。急いでる。
洗面所は狭い為、ベラベラさんにはどいて貰う事にした。
ぼくはベラベラさんの持っている剃刀を、眼の奥へと突き込んだ。
「ボァ、べぁ、ビレビレビレ!」
ベラベラさんが叫んで抵抗する。
ぼくは何回も何回も、顔の柔らかいところに突き込んで掻き回した。
ベラベラさんがビクビク、としか動かなくなる頃、ぼくは射精していた。
まぁ、思春期にはよくあることだ。
そう言えば、最初はビックリしたな。病気かと思って母さんに相談したものだ。今思うと、とても恥ずかしい。
あ、そんな場合じゃない。早く顔を洗わないと。
鏡で確認すると、ぼくの顔は醜く腫れ上がってた。こんな状態で学校なんて行った日には、クラス中の笑い者だ。ありがとう、母さん。でも、あなたさえ居なければぼくは怪我をしませんでした。
素早く剃刀で顔の皮を剥いで、包帯でぐるぐる巻きにした。
よし今度こそ、
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃーい!」
何かを忘れた気がする。
とても、大事だった気がする。
何かがおかしい気がする。
別に、いつもの事なのに。
学校に着くと、いつも通り教室は血塗れだった。
昨日あんなに掃除したのに、とぼくはため息をついた。
ぼくが教室に入ると、キタローが話しかけてきた。
「常、駄目だった。止められない。やくざとカミカゼが、今、やってる」
「まぁ、見れば分かるよ。あんな奴ら止められないよなぁ、お前じゃ」
キタローは片方しかない眼を悲しそうに歪ませて、
「ゴメン」
と謝った。
ぼくはわしゃわしゃとキタローの頭を撫でてやった。
「気にすんなって」
キタローは髪が長く、女の子のようだった。
キタローとは幼なじみで、ぼくの弟分みたいな存在だ。
昔から、体が弱いのと、片目が無いせいで、みんなからいじめられていた。ぼくがそれを助けてあげたから、感謝されているのだ。
そう、助けてあげた。
なにもしなかった大多数の大人達とは違う。助けてあげたんだ。
それだけなのに、
少し、痛い思いを、キタローと同じ思いを、させてやっただけなのに。
―なんで、こんな事、
―すいません。
―この子とうちの子は別のクラスにして!
―お母さん、落ち着いてください。
―この子が同じクラスに居るって事は凶悪犯が同じクラスにいる事と同じなのよ!
―とにかく、落ち着いてください。
―うちの子がもう学校行きたくないっていうのよ、それもこれも、全部お前のせいだ!
不快な気分。
親子共々、お揃いにしてやろうか。
してやる。
そうだ、今日行こう。そして、思い付く限りの拷問をしよう。そうしよう。
「全く、あの人、母親として失格ね」
不意に、隣に母さんが居る事に気付いた。
そう思うと、今考えていた事がとても恥ずかしい事のような気がした。
「本当に、息子の事を思ってるなら、文句を言う前に、息子の隣に居てやらなきゃ」
この人は、本当にいい人だ。
本当にぼくの母親なのだろうか。
「母さん」
「ん?」
「もし、逆の立場ならどうしてた?」
「んー。多分、常を叱ってたんじゃないかな」
「…」
「弱いもの虐めをする奴なんて最低だー、って言って」
「…」
「でね、抱き締めてあげる」
「…」
「悪いことをした時、それを許してあげるのが、母親の義務だと思うから」
「…」
「でもね、悪いことをしたからって常はやりすぎた」
「でも、母さん。キタローはもっと苦しかったんだ。あんな痛みじゃ足りない、もっと…!」
「コラ!」
「痛ッ!」
「それじゃ駄目。常があの子に同じ事をしたら、あの子と同じだけ悪いことをした事になる」
「…」
「それじゃ、あの子と同じ」
「でも…」
「考えればいいの。もっと努力して、決して汚れる事の無い道を、常には歩いてほしい」
ああ、いい人だ。
愛しいよ、母さん。
それはいけない。
愛すのは間違ってる。
え?なにが間違ってる。
この世界ではいつものことだろう?
なにもおかしくない。
だけど、
何かを忘れた気がする。
とても、大事だった気がする。
何かがおかしい気がする。
別に、いつもの事なのに。
「トッコウ!トツゲキ!ギョクサイ!」
「ウベバババザ!ぶざげんなァ!ゲベダ!」
「汚れぬセイギなどないのであります!誰かが汚れなければならないのであります!誰かが砕けなければならないのであります!」
カミカゼの言葉で正気に戻った。
そうだ。そうじゃないか。
汚れない正義なんてない。
だから、ぼくは問題ない。
カミカゼはやくざの唇をカッターでえぐった。
やくざは血を吹き飛ばしながら叫んで、カッターを奪い返し、カミカゼの胸に突き刺した。
「バンザイ!バンザイ!バンザイバンザイ!」
カミカゼは腹に手術で埋め込んでいた爆弾の、スイッチを押した。
ドカン、と。
2人が居ない事以外何もおかしくない、いつもどおりの教室だった。
キーンコーンカーンコーン
チャイムがなる。
ドアが空いて、先生が入ってくる。
「ほら、お前ら早く座れー」
ぼくとキタローは急いで自分の席に着いた。
「あん?カミカゼとやくざは休みか?」
「あの…」
キタローの言葉を遮りぼくは言う。
「知りません」
「そうか」
そうだ、これでいいのだ。
汚れたものは皆消えた。ぼくとキタローだけの教室。
「てー事は、だ。このクラスは5人。その内3人も休んだ。半数以上だから学級閉鎖だ!」
「そうですね、先生。」
なんで、先生が嬉しそうなんですか。
まぁ、いいや。
先生が文字通り消えた。
つくえが、いすが、音が、境界が消えた。
ぼくとキタローだけ、服も消えたからぼく達は裸だ。
この教室で2人は一体となる。 境界が消えたから言葉も要らない。
足を絡ませ、抱き合い、求め合い、貪る。
可愛いな、キタローは。
お前の事はぼくが守ってやるから。
間違ってないよな、ぼくら。
悪いことなんてしてないよな。
キタロー?
気づいたら、体を絡ませてたのは妹だった。
周りを見渡すと、其処は妹の部屋だった。
裸の妹は泣きながら首を振っていた。
嫌だ嫌だ、という意思表示にも取れるが、この世界では問題ない。
妹の右足は今朝父さんに投げたから、左足と両手しか残ってない。
可愛いいなぁ、と思いつつ、ぼくは、チェーンソーで両手左足を切った。
だるまみたいな妹が可愛くて、射精した。
母さんがドアを開けて部屋に入ってきた。
「お父さんが動かなくって」
「父さんが?ああ、それは、今朝母さんが脳味噌を食べたからだよ」
「え?どうしようかしら」
「大丈夫。妹に貸して貰おう」
そう言った瞬間、妹は腹を曲げて虫のように這い出した。
逃げてるようにも見えるが、この世界では、問題ない。
「半分貸して」
金鎚で何度も叩き、妹の頭蓋骨を割る。
ぴくぴく、と震える妹が可愛くて、脳味噌に射精した。
半分、脳味噌を妹から借りると、父さんの頭に入れた。
動かなかった。
え?
動かなかった。ったカナタウゴカナカッタウゴゴカナカッタウゴカナカッタウゴカナカッコカッタウゴカナカッタウゴカナカッタウゴカナカッタウコカナカッタウゴカナカッタ。
振り向くと、其処にはバットを振りかぶる母さんがいた。
「常、自分の妹を犯したのね」
痛いよ。
母さんはキタローになった。
キタローは小さなナイフを持っていた。
「いじめっ子より、一番怖いのは、常。君なんだ」
何回も差した。
そうか、やっぱり嫌だったんだな。
そして、最後は妹だ。
妹は、
「死ね」
と、
言って、
頭が、
何かを忘れた気がする。
とても、大事だった気がする。
何かがおかしい気がする。
別に、いつもの事なのに。
「殺してやる」
聞こえた、こえが
何かがおかしい気がした。
なんで初投稿でこんな狂った物書いたかな、とひたすらに後悔
。
それでもいいと言ってくれる方に捧げたい、です。




