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四葉と双葉に友情を  作者: 榊みつば
1章 距離
8/12

8、音にならない感謝

朝食が終わり

部屋でのんびりティータイムをしていた

弥生さんたちに今日は仕事は任せて

休んでと言われてしまった

心配してくれているのはわかっているが

何故か素直に受け取れなかった

怒っているのか

大変なことをしてしまった

まだ、そんな気持ちが私の中にあった

部屋には、お嬢様と私の2人だけ

特に会話などはなく

静かな時間がすぎている

紅茶を口に運んだ時には

もう冷めていた

色々分からない

きっと、私の気持ちはお嬢様にも伝わっている

でも、お嬢様は何も言わない

ただ、静かに紅茶を飲んでいた


ようやく会話ができたのは

ティータイム開始から

1時間経った時だった


「もう1回走りたいと思った理由って

聞いてもいいでしょうか?」

「なんにもない」

「そう、なんですか」

「ただ、楽しかったから

あの時は、みんな優しかった

笑っていられたから」

「あの時に戻りたいですか?」


私の問いに

お嬢様は、「そうね」と言いながら俯いた

どうして今のようになってしまったのか

疑問と後悔が顔に出ていた


「あの、義手と義足を見てもいいですか?」

私は、そう言った

お嬢様は、ぽかんとしていた

私も自分でびっくりしている

なぜ、その言葉が出てきたのか

分からない

義足や義手が重いのは聞いている

だから、見なくてもいいものなのに

気づいた時にはもう言っていた

お嬢様が困惑しながらも

義手などが入っているところを教えてくれた

箱に入っている義手を持った瞬間

私は驚いた

こんな重いものだとは思わなかった

これを、つけるなんて無理な話だ

義足も取り出しマジマジと見ていると


「義足とか見るの初めて?」

と聞いてきた

「テレビとかで見たことはありますが

こんな近くで見るのも持つのも初めてです」

「重いでしょ」

「はい」

「これをつけて動くのが大変だから嫌い」

「そうなんですね」


この時どうにかして

義足と義手を軽くできないかと考えていた

お嬢様にもうひとつ質問しようとした時

ノックが聞こえた

私は、持っていた義足を置いて

扉を開けた

目の前に弥生さんと

その後ろにことねさんが立っていた

お嬢様にお客さんが来ているらしく

お嬢様にそのことを伝えると

「わかった」と言って車椅子を動かした

扉の前で止まり

背を向けたまま


「部屋の片付けお願いしてもいい?」

と小さく呟いた

私は、笑顔で返事をした

お嬢様は、部屋を出ていった

私は、義足などを元の場所に戻していた

その時、弥生さんが呟いた


「お嬢様、お礼も言わずに出ていったわ」

ことねさんもその言葉に続いて

「昔から変わらないわね」

と言っていた


でも、私にはわかった

お嬢様は、ちゃんとお礼を言っていた

音として出ていたかと言われれば

多分出ていなかったと思うけど

ちゃんと見えた

口が「ありがとう」と動いているところを

きっと、それは私しか気づいていない

2人には見えない位置だったから


私が部屋の片付けを終わらせた時

ことねさんがこちらを向いて


「それにしても、義足見せてもらえたのね」

と一言言った

私は、「はい」と答えると


「私は、何度お願いしても

見せてもらえなかったわね」

「そうなんですか?」

「えぇ、そうよ」


誰にも見せたくないものを

なぜ、すぐに見せてくれたのか

理由は、何となく思いつくけど

本人から聞きたい

だから、深く考えることはしなかった


その時

「あ、そういえば」

とことねさんが言った

私と弥生さんが同時にことねさんの顔を見ると


「奥様の噂聞いたかしら?」

噂?なんのことか分からず

弥生さんの方を見ると目が合った

弥生さんもわかっていないらしい


「噂ってなんですか?」

「あら、知らなかったのね」

「はい」

「最近、奥様彼氏が出来たみたいよ」


ことねさんがそう言うと

しばらく沈黙が続き

弥生さんが反応した


「え!?旦那様がいるのに?」


突然の声にことねさんは驚きつつも

頷いた


「そうみたいよ」

「それは、やばいわね」

「そうよね、七海さんも

そう思うでしょ」

「えっと、そうですね」


私は、どう答えればいいのか分からなかった

まだまだ、奥様のことも

先輩たちのことも

何も知らない

そんな私がとやかく言っていいものなのか

その後も弥生さんとことねさんは

止まらなかった

そのまま時間はすぎ

2人が仕事に戻ろうと立ち上がった

私は、その時聞きたかったことを思い出し

2人を呼び止めた


「あの、怒ってないですか?」

「え?」

「食事会を台無しにしてしまって」


私が俯きながらそう言うと

弥生さんは、笑いながら


「大丈夫夜、私たちは怒ってないわ

逆にスカッとしたわ」

と言い放った

私がぽかんとしている顔を見て

弥生さんはもっと笑いながら


「だって、婚約者に対して

あんなに言う人初めて見たわ

あの時の空気は最悪だった

だから、ぶっ壊してくれて良かったわ」


弥生さんからの予想外な言葉に

体の力が抜けた

今までずっと怒っていると

ビクビクしていた私が

馬鹿だったと感じるほど

弥生さんは笑っていた


「はぁ、笑った笑った

あなたそんなこと心配していたの?」

「あはは、そうなんです」

「まぁ、でも奥様は怒っているわね」

「やっぱりですか?」

「でも、あなたなら大丈夫よ」

「どうしてですか?」

「だって、強いから」


そう言うと弥生さんは

ニコッと笑った

ことねさんも隣で頷いていた

2人は、そのまま楽しそうに話しながら

部屋を出ていった

私も自室に戻った


今、やることは何となくわかった

まずは、義足と義手を何とかして

その次にお嬢様と二人で

どこかにお出かけしようかな

なんてことを考えながら

私は、パソコンを開いて

義足と義手について調べた

どんなに大変だったとしても

まずは、義足を義手を軽くしてあげたい

誰でもあんなに重いものをつけて

動くなんて嫌に決まっている

そう思っていた

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