7、友達
朝、支度をしてから
すぐにお嬢様の部屋に向かった
途中で奥様に会ったらどうしようと
ビクビクしていたが
そんなことはなかった
今日の朝は、いつもより静かだった
まるで、この屋敷から誰もいなくなったみたい
かすかに声が聞こえるのに
孤独感を感じていた
私は、足早にお嬢様の部屋に向かった
部屋に入ると
お嬢様は、パジャマのままで
車椅子に座っていた
そして、私に気がつくと
ここに座れと言うように
椅子を指さした
私が椅子に座ると
お嬢様が前に来て
真剣な目で私を見ていた
少し、重い空気が静かに流れた
だんだんと怖くなった私は
お嬢様から目線を外し
ドアの方に目をやると
お嬢様が口を開いた
「交通事故のこと、お姉様のことは
知ってるのよね」
「はい」
「なら、あの時婚約者が言った意味も
わかったのよね」
「はい」
また、沈黙が続いたあと
お嬢様が続きを話した
「昔から、そうだったの
お姉様は可愛がられて私は除け者
でも、友達はいた方だったから良かったの」
その言葉を聞いた瞬間
やっぱりお嬢様は
本当はいい性格なのだと確信した
「でも、私が8歳だったから6年前ね
その時に起きた交通事故から
一気に変わったの何かもかも全部が」
「全部ですか」
「えぇ、私が信号を見ずに道路を飛び出した
信号は、赤になっていたのに
トラックが来ていたことに気づいてなかった
そして、お姉様が私に気づいたけど
遅くて2人でぶつかった」
そう話すお嬢様の声は震えていた
話を聞くに姉妹は仲が良かったのがわかる
そうじゃなきゃ助けないかもだから
「お姉様は、直撃
私は、直撃ではなかったけど
小さな体だったから
耐えられなかったみたいね」
「それで、手足を」
「そう、目が覚めた時は病院だった
でも、私の周りには誰もいなかった」
「目が覚めたことを知らなかったのですか?」
「いいえ、みんなお姉様のところにいた
どんなに待っても誰も来なかった」
「……」
「そして、ようやくお母様顔が
見えたと思ったら
邪魔者を見るような目をしていた」
「……」
私は、なんと言えばいいのか分からなかった
体が勝手に強ばる
お嬢様の声は震えたままで
目には涙が溜まっていたことに
気づいていたからだ
ここで止めてあげたいが
それは、違うと思った
ここで止めれば変わらない
その事をわかっていた
だから、私は静かに聞いた
お嬢様の話を
「その瞬間から、私に味方がいなくなったの
車椅子の私を見てみんなが変な人扱いする
お母様は、私を見る度に嫌な顔をする
使用人たちも理解しようとしてくれてるのは
わかっていたけどなんだか違った
だから、私の性格が変わってしまったのね
自分でもわかってるの」
話を聞いて私は
ひとつ大きな間違いをしていたことを知った
お嬢様は、何も知らないわけでも
見ていないわけでもない
だからこそあの時
私がいるとみんなに迷惑がかかる
この言葉が出てきた
今までの行動が出ていた
私は、知るのが気づくのが遅かったみたい
だとしても、今悔やんだって仕方ない
それよりも、今気づけたこと大切
私は、自分の気持ちを落ち着かせ
気になっていたことを聞いた
「なぜ、その話を私に?」
「あなたなら、聞いてくれると思ったから
他の人と違ったあなたは、理解しようと
するんじゃなくて寄り添ってくれた
だから、話せると思った」
その言葉を聞いた時
私の胸が熱くなった
ちゃんと届いてたんだ
そう思えた瞬間だった
その時、お嬢様が慌てた様子で
もう、8時になってしまうと言った
私は、慌ててお嬢様の着替えを手伝い
身支度を整えた
もう、朝ごはんの時間がすぎていた
それでも、なんだかこの時間が楽しかった
「あはは、話しすぎたね」
「そうですね」
あと少しで、準備が終わる時
突然お嬢様が手を止めた
その瞬間カーテンが揺れた
「ねぇ、私義足と義手嫌いなのよね」
「何故ですか?」
「だって、重いもの」
「ですが、今は軽いものも」
「これは、昔に作ったものだから」
「そういう事ですか」
「でも、私昔のように走ったり
歩いたりしたいの」
「そのためには、義足を」
「だから、あなた手伝ってよ」
「え?」
突然のお願いに
私は、固まった
そんな私を構いもせず
お嬢様は、続ける
「私が義足と義手を使えるように
練習付き合ってよ」
「でも、私なんかよりも
もっと詳しい方が」
「嫌なの?」
「嫌では無いです」
「なら、いいじゃない」
「私なんかでいいのでしょうか」
「聞いて」
「はい」
「私は、あなたがいいの
これからも沢山わがまま言うと思う
でも、あなたは聞いてくれる
他の誰かじゃダメなの
私は、七海がいいの
私は、私も仲良くなりたいの」
「お嬢様」
「不器用だし、性格も可愛くない
けど、離れたくないの
あなたと一緒にいたいの!」
そういうお嬢様の顔は
本気と何かを堪えている顔だった
私は、そんなお嬢様を見て
笑顔で
「では、友達になりましょう」
と答えた
その瞬間、お嬢様は、
ぽかんとしていたけど
その後すぐ笑顔になった
私たちは、その後
すぐに食堂に向かった
2人で、弥生さんに怒られたけど
それよりも、さっきまでの出来事で
いっぱいだった
一日のたった数時間の出来事なのに
一日中話していた気分だった
この日から、あの瞬間から
私とお嬢様の生活は一変した




