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四葉と双葉に友情を  作者: 榊みつば
1章 距離
6/12

6、赤く染まった沈黙

食事会の時間が迫っている

準備は完璧だった

が、私とお嬢様の気持ちが完璧じゃなかった

今日の朝、お嬢様の顔を見てすぐにわかった

今回の食事会が自分のためじゃないことを

知っている顔をしていた

交流会の時よりも嫌な顔をしていた

そりゃそうだよね

自分の姉のための食事会を

代わりにするなんて

世話係の私でもわかる

なんの意味もないことを

食事会は13時を予定している

今は、11時

あと、まだ時間はある

自分の気持ちなんてどうにでもなる

けど、お嬢様にはどう声をかければいいのか

分からない


今、私たちは食堂にいる

部屋にいると出て来れないからと

お嬢様が言ったためここにいる

食堂はいつもより静かだった

ただ、時計の音が響いている

秒針がカチカチと動く度に

鼓動が早くなってる気がする

不安しかない

ちらっと横にいるお嬢様の顔を見ると

目が合った

私は、咄嗟に逸らしてしまった

するとすぐに、お嬢様が

「ねぇ」と声をかけてきた


「ねぇ、ひとつ言っときたいことがあるの」

「なんでしょうか」

「私のことは、助けなくていいから

何もしなくていいから」


予想外の言葉が聞こえた

何もしなくていいなんて言われるとは

思いもしなかった

私がお嬢様を見続けていると


「あなたは、世話係だから

ボディーガードじゃない」

私が「でも」と言い返すと


「それに、これは神崎家の問題だから

あなたには、関係ない」

そう続けたあと黙ってそっぽを向いた

私は、この時何も言えなかった

どうすればいいのか

何か言った方がいいのか分からなかった


そして、とうとう13時になってしまった

京香様の婚約者はイケメンの方だった

お料理を婚約者と奥様とお嬢様の

3人が美味しそうに食べ

おしゃべりをしていたが

基本的に奥様と婚約者の方だけが話していた

そして、よく聞いてみると

姉の京香様の話ばかりだった

お嬢様のことは空気のように扱っていた


食事会は順調に進み

デザートを食べているときだった

いきなり婚約者がお嬢様の見て

にやりと笑いながら一言


「でも、可哀想ですよ

こんな姿のやつが娘なんて」

と言った

その瞬間、空気が分かれたのを感じた

奥様と婚約者の汚れた空気

お嬢様の今にも崩れそうな空気

私たち使用人の苛立ちの空気

ここに来てたから

空気が変わった瞬間は何度も遭遇しているが

ここまでハッキリと分かれたのは

初めてだった

だが、婚約者は止まらなかった


「こいつが死ねば良かったんですよ

京香じゃなくて、こいつが!」

どんどんヒートアップしていく

お嬢様は、下を向いて何も言わなかった

奥様は、隣で笑っていた


この時、はっきりとわかった

この家族は狂っている

お嬢様の手が震えていた

きっと、こんなことが過去にも沢山あった

だからこその無言なのだろう

そうすれば、いつか終わると


私は言い返したかった

けど、お嬢様に何もしないでも言われている

婚約者の悪口は止まらない

それどころか、もっとエスカレートしている

私は、気持ちが抑えられそうになかった

お嬢様に止められている

でも、こんなの酷いじゃない!

お嬢様は、お嬢様は!


「お嬢様のことを

悪く言わないでください!」

私がはっと我に返ったときには

自分の口から言葉が出ていた

ここにいる全員が呆然としていた

ここで謝って辞めれば楽なのかもしれない

でも、私はお嬢様の方につく

こうなったらどうにでもなればいい

そう思っていた

私は、お嬢様の元に行き


「どんな姿でもお嬢様は人間です!

あなた方と同じ!いや、違う

あなた方よりもっと良い人です!」


次第に婚約者の顔がみるみる変わり

ついに爆発してきた


「なんてことを言うんだ!

俺は、一流企業の社長だぞ!」

「なら、その会社は潰れますね!」

「はぁ!?」

「こんな人が社長の会社なんて

いい未来が見えません!」

「お前!」


止まらない私にお嬢様は

小声でやめてと言っていたが

私には聞こえてなかった


「お前!クビにするぞ!」

「どうぞ、してください!できるもんなら!」

「お母様!してくださいよ!こんなやつ!」

「……私には、できないの」

「どうして!」

「権限がないのよ」

「嘘だろ」

「メイドを甘く見ないでください!

こんな食事会する意味が無い!

お嬢様、行きますよ」

私は、車椅子を押して

食堂を出た


私は、メイドの仕事をしているうちに

誰にどんな権限があるのか

何となく把握していた

旦那様がいない今

誰もクビにすることは出来ない


私は、お嬢様の部屋に向かっていた

部屋に入った途端我に返った

そして、なんてことをしてしまったんだと

自分を責めた

これで、私はクビになる

早かれ遅かれいつかは

こんなことをしてしまったんだ

頭を抱えてる私の肩に

お嬢様が手を置いた

そして、私と目が合うと


「ありがとう」

と一言呟いた


「お嬢様、申し訳ありません

大事な食事会を壊してしまって」

「いいの」

「私は、クビになると思います

また、新しい世話係が」

と続ける私の言葉をお嬢様遮って


「クビになんかさせない」

「え?」

「……初めてだった

あんなに私のために言ってくれる人

いつも、みんな黙ってた

どうして?言ってくれたの?」

「お嬢様の手が震えてました

ずっと、我慢されていたのですよね」

「あなたは、何か違うのね」


私は、また、言葉が出なかった


「今日は、休みなさい

疲れたでしょう」

「わかりました、では、失礼します」


私が部屋を出ようとした時

お嬢様が「待って」と呼び止めた


「明日、朝私の部屋に来て」

そう言って背中を向けた


私は、静かに部屋を出た

自分の部屋に戻る途中

食堂を覗いてみた

中には、奥様が1人

頭を抱えていた

が、私は助ける気にはならなかった

自業自得そう思っていたから

そのまま、歩き出した

最後にちらっと奥様の方を見ると

目が合い睨まれた

この時、私は思った

完全に目をつけられたと

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