2、知ろうとすることは
次の日、私はいつもと同じ
朝を過ごした
今は、お昼の13時過ぎ
この時間は、いつも落ち着いている
お嬢様は、この時間に
どこかに行っている
私は、少し距離をとり
何をしているのか見ていた
お嬢様は、最初に
花に水をやっていた
水やりが終わったあとも
ひとりで花の前にいた
何も触らず
ただ、じっと花を眺めていた
数十分経ったころ
お嬢様は移動し始め
私もついて行った
今度は、葉っぱが咲いてるところに
向かっていた
植物が好きなのかなと思ったが
花を眺めているお嬢様の背中は
寂しそうな雰囲気が漂っていた
そんなことを考えていた私は
いつの間にうつむいていた
ふと、視線をあげると
さっきまでいたお嬢様がいなくなっていた
私は、見失うと思い辺りを探すと
お嬢様は、家に入ろうとしていた
距離はあったため
こっそりとあとをつけた
そして、お嬢様が中に入る直前
後ろを振り返った
私は、咄嗟に隠れた
目があったかもと心臓がバクバクしていた
「……」
ちらっと様子を伺うと
お嬢様は、中に入られていた
私も後ろを続いて入った
部屋に入ると
お嬢様は、出てこなかった
私は、ついて行くのをやめ
今度は、先輩方に話を聞いた
「叶恵お嬢様について?」
「はい、何か知ってますでしょうか」
「私、叶恵お嬢様苦手なのよね」
「僕もです」
「そうなんですね」
「あ、でも叶恵お嬢様の元世話係の人なら
僕知ってますよ」
「え!本当ですか?」
そう言ってくれたのは
綾斗という人だったら
綾斗さんは、真面目で面倒みの良い方
そんな印象を私は持っていた
「世話係は、何をしているの……」
綾斗さんに教えて名前を聞き
その方の元へ行った
お嬢様の元世話係をしていた人は
ことねさんという方だった
ことねさんを初めて見た時
見た目の影響だろう
お嬢様と似た雰囲気を持っていた
だが、性格は逆で
いつもニコニコしていた
周りの人達からは
犬のような人と言われているらしい
本人もそう言われて満更でも無さそうだ
私は、お嬢様について聞いた
しかし、返ってきた答えは
曖昧なものだった
ことねさんは、苦笑いをしながら
「ごめんなさい、私もよく分からないの
元世話係だけど喧嘩をして
やめてしまったから」
「そうなんですね」
「それに、あまりお嬢様のプライベートや
過去に入り込むのは逆効果な気がして」
「そうなんですか?」
「ただ、私が不器用なだけだから
気にしないで」
「はい」
「七海さんは、七海さんの方法で
仕事をこなせばいいわ」
「はい」
「でも、知ろうとしすぎるのは
おすすめできないわ」
「そうなんですか?」
「逆に追い詰めてしまう可能性があるからね」
「確かに」
「叶恵お嬢様がご自分で話せる
環境を作ってみたらどうかしら?」
「話せる環境」
そんな、環境が私に作れるのか
少し不安になった
それと同時に
私は、ひとつの疑問ができた
それは、なぜこの家での仕事を
やめなかったのか
それが気になり
恐る恐る聞いてみると
「他に行く場所がなかったのよ
ずっと、メイドとして仕事してきたから
それに、ここが好きだから」
「素敵な理由ですね」
「ふふ、ありがとう」
「あ、もう6時になってしまう
お嬢様のお風呂の時間なので失礼します」
「頑張って」
「はい!」
「あ、ちょっと待って」
「なんですか?」
「もし、叶恵お嬢様のことを知りたいなら
交流会に行ってみるといいわよ」
「交流会ですか?」
「えぇ、一年に一回あるの
あなた行ったことないでしょ
多分、楽しいわよ」
「わかりました、行ってみます!」
「それじゃ」
今日知ったことは
常に一人でいること
そして、よく寂しそうな顔をすること
なんだか、お嬢様のことを知るたびに
私は、このまま世話係を
続けることができるのか不安になってきた
「ねぇ」
「はい!」
驚いて振り向くと
そこには、お嬢様がいた
お嬢様は、なんだか怒っているように見えた
私は、何かしてしまったのかと思い
謝ろうとしたが
私の言葉を遮って
お嬢様がいきなり
「ねぇ、何してたの?」
「私何かしましたか?」
「私の後をついてきたでしょ
それに、他の使用人たちに聞きまわってた」
「ですが、お嬢様のことでは」
「隠さなくていい、わかってるから」
「えっと」
「みんな、あなたと同じことしてたから
ことねに話を聞いた」
その言葉を聞いた時
隠し事はできないそう感じた
「なぜ、私がことねさんに話を聞いたと
思われたのですか?
過去にも同じことがあったとはいえ」
「簡単なこと、私とことねが
一番長く一緒にいたから」
だから、みんなことねさんの名前を
「でも、私のことをちゃんと話したことはない
もういいでしょあなたと話すつもりもない」
「あの!」
「何?」
「明日、交流会があると聞きました」
「そうね」
「その交流会に私も」
「私は行かない」
「え……」
「あの空間は嫌いなの
それじゃ、おやすみ」
「あ、はい」
私は、何も言えなかった
交流会の話になったとたん
お嬢様の顔が曇った
引き止める言葉が出てこなかった
私は、その場から動けなかった
本当は、意見を尊重したい
でも、自分に正直になるなら
今の私は
自分の気持ちを抑えることができない




