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四葉と双葉に友情を  作者: 榊みつば
2章 過去
16/17

16、居場所

お嬢様とおじいちゃんは似ている

そう感じたのは今だけど

もしかしたら、前からずっと感じていたのかも



私のおじいちゃんは

一匹狼だった

とはいえ、人付き合いが苦手なわけでも

人が嫌いな訳でも無く

ただ、一人でいる方が楽だと考える人だった

そして、感情を表に出さない人だった

表情もあまり動かず

一見ぶっきらぼうに見える

でも、誰よりも他人のことを考えていた

家の隣に畑を借りていて

そこで、育てた野菜をよく

近所の人におすそ分けをしていた

たまに野菜以外のもの

例えば、石鹸だとか雑貨類を

持って行って

おばあちゃんによく怒られていた

それでも、懲りないのがおじいちゃんだった

一人でいたい

でも、誰かに何かをしてあげたい

その性格がおじいちゃんの特徴


私は、そんなおじいちゃんが大好きだった

その気持ちはおばあちゃんも同じだと思う

きっと、昔からそうなのだろう

だから、おばあちゃんもいつも笑っていた

私は、そんな2人の関係も大好きだった


でも、母は気に入らなかったのか

私とおじいちゃんを引き離した

高校生になってからは一度も会えなかった

高校生になって忙しくなったのもあるけど

一番の原因は、母だった

おじいちゃんの家は遠かった

母と一緒じゃないと行けない

一人で電車乗っていくと半日はかかる

日帰りはできない

夜は、補導される可能性がある

泊まることもできない

泊まったら一発で母にバレるから

この頃から、母への嫌悪感が強くなっていた

早く家を出たいと思うようになった

でも、高校生の私はお金もないし

行くあてもなくどうにもできなかった


家に泊めてくれる友達もいない

人付き合いが苦手な私は

高校に入学してから半年経った今も

友達はできていない

最初は、みんなから話しかけてくれたが

それでも、私は話せず

気づけば周りは仲良くなり

グループができ

私は、1人になっていた


次第に私の居場所は

図書室になった

昼休みになる度に軽くご飯を食べてから

図書室に行くのが日課になり

残りの半年を過ごした


2年生からは委員会が始まった

私は、人と関わりがあまりなさそうな

環境委員に入った

ただ、最初はオリエンテーションがあり

人と話さないといけなかった

それは、仕方の無いことだと何とか乗りきった

私は、植物係になった

仕事内容は単純で校舎の裏にある

花壇に水をあげることだった

夏は、2回 春と秋は、1回 冬は、2日に1回

今は、春だから1回だけ

先生は、朝でも夕方でも

どっちでもいいと言っていた

私は、少し悩んだが

朝は、人が沢山いるため夕方にした

夕方にすると言うと

先生から部活のことを心配されたが

私は、部活に入っていなかったため

時間はたっぷりあった

それに、早い時間に家に帰りたくなかった

なるべく遅く帰りたい

その理由は、たった一つの

母が夜に出かけるから

きっと、あの男とあってるんだろうなと

私は、気にしていなかったが

たまに、出かける前に家に連れてきている

こともあった

私は、その男が嫌いだったから

できる限り遅くまで学校に残った


植物係になってから

月日が流れ

今は、夏になった

練習試合が近いのか

サッカー部が気合いの入った練習を

しているようだった

いつもより声が出ていた

私は、その声を聞きながら

植物に水をやるのが日課になった

この頃から図書室には行かなくなった

新たな居場所を見つけた

それが、花壇のところだった

校舎の裏ということもあり

人が来ることは無かった


そして、少しずつ私は植物に惹かれていった

言葉を発することは無いのに

人間よりも寄り添ってくれる気がした

私が栄養を与え水を与えれば

それだけ、育ってくれる

大きくなって綺麗な花を咲かせてくれる

元気が無くなれば分かりやすく教えてくれる

人間みたいに隠さずになんでも


植物に水をあげ

そばに座る時間が

私にとって一番静かで平和な時間だった

時々、母の愚痴をこぼしたりして

誰も聞いていないことはわかっている

そばにいるのは、植物だけ

なのに、不思議と言葉が出てくる

誰にも話したことないことまで

全部がスラスラと口から出た

それだけで、私の心は軽くなった気がした


ある日、いつものように花に水をあげていると

ふと、植物にも感情があるのか気になり

その場で調べてみることにした


植物に感情はないが

音や光を感じ

人間の感情にも電気的な反応を

示す可能性がある

と出てきた


「ほんとに、植物は面白い」

私は、本気でそう思った

これが、植物の専門家を目指そうと思った

きっかけだった


「思ったよりも、あなたの過去ってくらいね」

お嬢様が少し低い声で呟いた

私は、苦笑いをしながら「はい」と答えた


「でも、ここから明るくなるの?」

そういうお嬢様の顔を少し眺めてから

私は、小さく首を振った

お嬢様は、また黙ってしまった

でも、雰囲気は変わらなかった

聞かせてという顔をしていた


そう、私の過去は

ここから、一気に下り坂になる

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