10、花言葉
まずは、お嬢様を誘うと決めたけど
なんて言えばいいのか分からない
どれだけ考えても思いつかない
これは、時間をかけてもダメなのか
……しょうがないよね
こういう時は、当たって砕けろ!
とにかく、言ってみよう
と、意気込んだのはいいけど
目の前にすると少し怖い
いやいやいや、ここで怖気付いても無駄
さぁ、私の足よ動くのだ!
よし!行ける!
……動くのだ!
また、植物を見ている
お嬢様は、クローバーがお好きなのかな
今なら、行けそう
「お嬢様は、植物がお好きなのですね」
「あら、七海じゃない
何か用?」
「えっと、何をしているのかなぁと」
言葉が出なぁい!
なんで、何をしてるのか聞いてるの!?
そんなの、見ればわかるじゃない
返ってくる答えなんて
「植物を見てたのよ」
はい、そうですよね!
知ってましたよ
見ればわかるんですから
「クローバーがお好きなのですか?」
「どうして?」
「あ、いえ、よく見ていらっしゃるので」
「……あまり好きじゃないわ」
「そうなんですか」
「だって、私と違うもの」
「違うから見てるのですか?」
「……」
なんだか、まずい空気になってきた
聞いちゃいけないこと聞いちゃったかな
今は、離れてた方がいいのかも
「私、行きますね」
「まるで、あなたと私みたい」
「え?」
「双葉と四葉」
「どういうことですか?」
「双葉が私で四葉があなた」
花言葉のことを言っているのだろうか
でも、違う気がする
私は、お嬢様が言った言葉の意味が
よく分からなかった
「ごめんなさい、よく分からなくて」
「形よ」
「形?」
「私は、2つしかない
でも、あなたは4つある」
「もしかして、手足のことですか?」
「そうよ」
気にしていないように見えて
本当は、気にしているんだ
そのことを私は
いつからか忘れていた
お嬢様は、繊細な方だということを
「私は、あなたが羨ましい」
「四葉だからですか?」
「そう、私は双葉」
俯いたまま
お嬢様がそう言い放った
「もしかして、アクセサリーに
四葉が多いのって」
「あなたに四葉になりたいからよ
でも、無理ね私は一生双葉」
「……」
私は、言葉が出なかった
なんと言ってあげればいいのか
ただの励ましなんて
今のお嬢様には逆効果
嫌な気持ちにさせるか
怒らせるかのどっちか
ここは、何も言わずに
離れた方がいいのか
いや、それもだめな気がする
頭の中であれこれ考えていると
四葉のクローバーが見えた
その時、私はこれだと思った
「お嬢様」
「何よ」
「四葉だからって必ず幸せに
なれる訳ではありませんよ」
「嫌味?」
「いえ、私がそうでしたから」
「あなたは、今幸せそうじゃない
笑って話して友達もできて」
「それは、ここに来てから
お嬢様に出会ってからなんです」
「そう」
「私は、ずっとひとりぼっちでした
人が怖かった」
「……」
「だから、メイドになったのです
誰とも友達にならなくて済むから」
「あなたらしくないわ」
「ふふ、昔の私が
本当の私なのかもしれないです」
「今のあなたは、嘘なのね」
「今は、違うと思います」
「そう」
自分でもビックリするぐらい
スラスラと言葉が出てくる
頭で考える前に出てくる
お嬢様なら、私の話を聞いてくれる
そう思えている
こっちを見ていなくても
絶対にここから離れないって
「お嬢様は、クローバーの
花言葉を知ってますか?」
「幸せでしょ」
「はい」
「そんなの有名じゃない」
「では、もうひとつあることは?」
「知らない」
「クローバーには復讐という
花言葉も存在するのですよ」
「怖い花言葉ね」
「はい、では、もうひとついいですか?」
「いいわよ」
「双葉の花言葉は知っていますか?」
「いいえ、知らない
そもそも、花の名前に
双葉なんてないわ」
「そうですね、正確には
二葉あおいなんですよね」
「で、その花言葉はなんなの?」
「二葉あおいには、細やかな愛情
クローバーになると素敵な出会いや平和
そんな、言葉があるのですよ」
「そうなのね」
「それに、二葉あおいには
怖い花言葉はありません」
「そうなの?」
「はい、神聖な植物なのですよ」
「そんな言葉があったのね」
「四葉より二葉の方がいいかもですね」
「……そうね」
その時のお嬢様の顔は
少し嬉しそうだった
「それにしても、あなた
花に詳しいのね」
「私も植物は好きなので
本当は、専門家になろうとしていたのです」
「そう、でもならなかったのね」
「植物の勉強をするには
人と話さないといけなくて」
「あなたって本当に人嫌いだったのね」
「はい」
まさか、植物のことで
お嬢様とこんなに話せるとは思っていなかった
お嬢様と出会ってから
発見ばっかりで
そんな日々が楽しかった
ちなみに、この時の私は
鎌倉に行こうと誘う目的を
忘れていた
そして、部屋に戻った後に気づき
急いでお嬢様の部屋に向かい
目的を果たした
結果は、OKだったが
お嬢様の部屋のドアを叩きすぎて
怒られてしまった
そんな、お嬢様の顔も可愛いなと
思いながら見ていると
また、怒られた
どうやら、ニヤニヤしていたらしい
そんなことがあったが
無事お嬢様と鎌倉に行くことになり
後日、色々と決めることにした
最近、私と話している時
お嬢様が笑っていることが増えた




