【後半戦】
実況:
さあ、昼食休憩を終え、お腹も満たされたところで、後半戦開始です。
長きにわたって議論されてきた犬派・猫派の戦いも、ついにクライマックス!果たして、どう決着がつくのか……両者一歩も譲らず、目が離せません!
猫田「……貴様、昼休憩のときに、そこの助手の女となにやらこそこそ耳打ちをしていたな。『猫の毛は掃除機の天敵』だったか?『奴らが来るたび、コロコロ(※コロコロとローラー状になっている粘着テープ)をかけまくらなきゃならない』『掃除する身にもなってみろ』全部聞こえてんだよ、このウスノロが!!」
犬山「え。そんなこと言ったか……?」
相原「言っていませんわ。だって、うちの病院には、お犬さましか来ませんもの」
猫田「うるせえ!!猫の聴力なめんなよ!!!」
実況:
あ!なめ猫!!なめ猫だ!!!
懐かしいですね~。ワタクシ、アレ、持っておりましたよ。
解説:
『なめ猫』は、1980年代初頭、名古屋で生まれ、日本で大流行したキャラクターです。暴走族風の身なりをした実写の猫のキャラクターで、本物の仔猫に、暴走族風の衣装を着せたあのファッションが爆発的にヒットしました。当時のツッパリブームもあり、世は『なめ猫』一色でしたね。
実況: 一色はさすがに言いすぎですが……。
犬山「まあまあ。お茶でも飲みなよ」
実況: お茶犬!!お茶犬です!!!
解説:
こちらは、2002年、連日の仕事で疲れたOLさんたちを癒すために生まれたお茶と犬がモチーフのキャラクターです。緑茶、ハーブティー、紅茶、ウーロン茶など、派生キャラクターもたくさん生まれたんですよ。確か、姉妹キャラクターとして、さくら茶やジャスミンティーがモチーフの猫のキャラクターもいなかったかな。
犬山「ん?ちょっと待った……クンクン……なにか臭わないか?」
実況: おや。これは……? 犬山選手、なにをしているのでしょうか?
解説:
『ノーズワーク』ですね。最近では『クン活』と呼ぶこともあるとか。
犬がクンクンと臭いを嗅ぐ。いわば、犬の本能のようなものです。ワンちゃんの嗅覚はとても優れていますから、こうして臭いを嗅ぐのは当然の習性といっていいでしょう。
犬山「わかった!!貴様の臭いだろう、猫田!貴様が毎日体じゅうの毛をペロペロしている唾液の臭いが、こっちにまで漂ってくるんだよ!知ってるか?昨今ではこういうのを『スメルハラスメント』――通称スメハラって言うんだぞ?」
解説:
猫ちゃんの『グルーミング』は彼らの習性ですから、致し方ないことです。
猫田「うるせえ!!そっちこそ、毎晩毎晩、キャンキャン大きな声で喚きやがって……騒音トラブルで苦情言ってやろうか!?なんなら、弁護士を通すこともできるぞ?」
犬山「私がそんなこといつ言った!?証拠は!?証拠を見せろ!!!」
実況:
両者、言った言わぬの水かけ合戦。これは面白くなってきました……!
裁判沙汰になったらSNSも大盛り上がりですね!?もう、いっそのこと、まったく関係ない群衆も巻き込んでワイワイやりましょう!!
ねえ、羽鳥さん、羽鳥さんもそう思われませんか!?
解説: いやあ、ワタシは炎上するの怖いんでやめておきます。
猫田「言っただろ!?」
犬山「言ってない!!」
猫田「いや。言ったね」
犬山「言ってないと言ってるだろ!?」
猫田「言ったと言ってるだろ!?」
犬山「言ったと言ってないと言ってるだろ!?」
猫田「ぐぬぬぅ……」
実況: うう~ん……あの……早口言葉ですか?
解説: 舌噛みそうですね。
実況:
まさに泥仕合。
これが令和のアイドルソングの楽曲ならば、そろそろ転調して全員で合唱し始める頃合いですが……おや? 助手のおふたりの様子が変ですよ?どうかしたんでしょうか。
相原「父の仇ーーーッッ!!!」
実況: え?
相原「パパは、犬山戌次郎――あんたのせいで死んだ。寒い中、家に帰ってきて、囲炉裏の火で暖まろうとしたパパに、あんたの仲間の毬栗がアツアツの身体で体当たりをしてきたんだよ!そのせいでパパは重い火傷を負った。パパはすぐに身体を冷やそうとしたわ。でも、水桶に近づいた途端、またしても仲間のハチが飛び出してきてパパの鼻を刺したの。パパはびっくりして外に出ようとした。そしたら、なんていうこと!玄関のドアの下には、とびきりデカい糞が……犬の糞が落ちていたのよ……臭い……犬……犬許すまじ……それで……屋根からドッスンと落ちてきた臼に押しつぶされて、パパは死んだのよぉぉ!!!」
実況: うん?なんかどこかで聞いたことあるような。
解説:
栗に蜂に、糞、それから臼……『猿蟹合戦』ですね。日本昔話では、犬の糞ではなくて、牛の糞だったかと存じますが。
相原「わたしが、いままで、なにも言わずに黙って従っていたのはどうしてだと思う?すべてはパパの仇を討つためよ。今日だって朝の4時から準備させられているけど、休憩1時間入れても12時間……完全にブラック企業じゃない……残業代だってまだいただいてませんからね。さっさと給料払いなさいよ、この銭ゲバ!」
実況: か、過重労働……。
解説: ちょ、ちょっと待ってくださいよ、まさか、相原さんって……?
相原「そうよ。わたしは相原愛子、アイアイよ。わたしは、猿の仲間のアイアイなのよ!南の島の、しっぽが長くて、おめめの丸い、お猿さんなのよーーー!!」
実況・解説: えええーーーーっ!?
相原「犬山、あんた、よくもパパを殺してくれたわね!?許さないーーーっ!!」
実況: 仇討ちはカニの役割だから、取ったらダメだぞー?
解説:
相原さんはアイアイ、つまり、猿の仲間ですからね。
あっ。これって、つまり『犬猿の仲』だったということでしょうか!?ホウホウ、それで、犬山さんのことを……相当根に持ってらしたんですね……。
相原「アイアイは夜行性なんだよ!いまだって、眠くて眠くてしかたないけど、頑張って起きてるんだから!!」
実況:
先程はメイクで気付きませんでしたが、よく見ると、うっすらクマのようなものが見えますね。相原さん、相当、お疲れだったんですね。いつもお疲れ様です。
犬山「い、いや、それは……すまん……知らなかった……」
相原「知らなかったで済むかあ!!このボケナス!!」
実況:
いや、ナスはあなたです。ナスとナース……なんちって。
解説: それ、全然おもしろくないですよ。
実況:
あれ?公方さん?
さっきから拳を握りしめて、頬もパンパンに膨らませちゃって……こんなかたでしたっけ?
公方「おい!!猫田猫三郎!!あたしからも、あんたに言いたいことがある!!」
猫田「ファッ!?」
公方「朝の4時から準備させられていたのは、こっちだって同じよ。しかも、あたしは相原さんと違って、無償で働くボランティア。いくらボランティアだからって12時間も働かせるのはどうなのよ!?人の善意踏みにじってんじゃねえぞ、まったく!!」
実況: うわぁ……エグい。エグすぎる。
解説:
公方星来。
ハッ!?まさか……。
ハ
ム
星
て、ことですか!?
ハムスターといえば、ねずみの仲間。『窮鼠猫を噛む』とは、まさしくこのことですね!
公方「ハムスターだって夜行性なのに、朝の4時から働かせてんじゃねえぞ!?眠くて眠くてしょうがないんだよ!!」
実況: えぇ……嘘ぉん……。
解説:
『敵を欺くにはまず味方から』と言いますからね。敵を騙すためには、味方にさえ、真実を打ち明けておかずにおくことが勝利の鍵となります。
この場合、状況がカオスすぎて、もう、誰が味方で誰が敵なのかわからない状態になりつつありますが。
実況:
つまり……状況を整理いたしますと、相原さんが猿で、公方さんが鼠なんですね。
あれ。
猿とねずみ。なんか、日本昔話で、共通のなにかがありませんでしたっけ。
解説:
『おむすびころりん』のことでしょうか。
おじいさんがねずみの穴へ落としたおにぎりを、拾った鼠に猿がひまわりの種と交換しようと持ち掛けて、まあ、『猿蟹合戦』のカニならば、ここで柿の種を埋めて大きく育てるところですが、ハムスターはひまわりの種が大好きですからね、食べてしまいます。はい、おしまい。
実況: そんな話でしたっけ?
解説:
ハムちゃんもバカですねえ。「食べてしまえばそれきり」のおにぎりを、せっかく、芽を出し木になる種と交換したはずなのに、その種を食べてしまえば意味がないじゃないですか。『明日の百より今日の五十』とはよく言ったものですね。
相原「ああ!もう限界! ……これでも取ってこーい!」
実況:
相原さんが懐から取り出したのは、なんと、獣医さんが往診用に使うアルミシャーレです!それを、まるで、フリスビーかのように……宙を舞うアルミシャーレ……美しい……なんて美しいんだ……。
犬山「ああ……か、身体が勝手に……追いかけてしまう……ワォーン!」
実況:
犬山選手、アルミシャーレを追いかけて、どこかへ行ってしまいました。あのぅ、戻ってきてくださーい。まだ試合は終わってないですよー?
猫田「フッ。しっぽを巻いて逃げ出したか。私の不戦勝で決まりだな」
実況:
猫田選手、勝利を確信して高笑いをはじめています。
このまま猫田選手の不戦勝で決まりでしょうか……?
おや。
どうも様子がおかしいですよ。
猫田選手の視線の先には、先程、アルミシャーレを投げた相原さん……正確には相原さんの長いしっぽ……ゆらりゆらりと小刻みに揺れるしっぽ……猫じゃらしのようなその動きに、猫田氏の視線は釘付けになっています!これは!これはまずい!
猫田「あぁ……目が……目が回るぅ~!にゃぁ~ん!」
実況:
おおっと、猫田選手、しっぽを見つめるあまり、目を回して気絶してしまいました!
解説: 猫の本能ですからね。致し方ありません。
実況:
これをもって、両者、引き分けとなりました。
今回も結局、決着はつかず。
《犬派》《猫派》の仁義なき戦いは、まだまだこれからも続きそうです。




