3.固有スキル
侯爵であるオースティン家。
そもそもカインはこの家の実子ではなかった。
オースティン夫妻は子宝に恵まれなかった。
家を継ぐ者がいない事に困った夫妻は遠い親戚の親を亡くした優秀な子を引き取った。
それがカインであった。
カインは本当に優秀であった。
頭も性格も体付きも、周りからの評判も良かった。
夫妻は満足していた。
そんな中でようやく夫婦にも子が出来た。
それが俺、ことヴェル・オースティンだった。
夫婦は喜んだ。
これで養子に頼る事なく自分たちの血筋で家は安泰だと。
カインに対しての扱いまで雑になるほど浮かれていた。
生まれた俺の姿を見るまでは。
カインが黒い騎士と呼ばれているのと対応的なように、キャラクターデザインにあったヴェルは真っ白い子であった。
髪も肌も白い。
なんてことはない生まれつき色素の少ないアルビノであっただけだ。
しかし前世では広く認識されていたがこの世界では違う。
両親のどちらとも似てない色
まず母親の不貞がうかがわれた。
赤子が少し大きくなれば使用できる血縁関係を示す魔道具もあった。
のちに正式に二人の子と判明はされたのだがその時にはもう遅かった。
色も白く誰にも似ていない不気味な子。
赤子は見向きもされず、誰からも忘れ去られていた。
それでも今まで生き延びられてきたのは兄であるカインのお陰であった。
カインは事あるごとに生まれたばかりの弟を可愛がった。
カインの手前お世話を放棄することもできず、とりあえずの存在は許されていた。
赤子の頃はまだ良かった。
その内に3年がたちカインは13歳となり全寮制の学園に通う事になってからは地獄の始まりであった。
屋敷の中でも誰の目にも触れないような場所に置かれていた。
ろくに食事も与えられずに不衛生な部屋。
そんな中でも学園が休みごとに帰って来てくれていたカインには感謝してもしきれない。
カインが可愛がってくれていたのでカインがいる時にはまだマシな扱いだった。
ヴェルがカインに依存するのは当たり前の流れだったと思う。
実際にヴェルとして生きていて、両親の顔よりもカインの顔の方が記憶にある。
前世を思い替えす前からカインの事は大好きだった。
誰からも相手にされない両親にすら忘れられている存在。
そう、そうして今俺が盗賊に見つからなかったのはヴェルの固有スキルのせいではないかと思った。
ゲーム内ではヴェルが固有スキル持ちであるなんて書かれてはいなかった。
だぶん命の危機を感じてスキルが生まれたのだと思う。
自身の存在を希薄…というか消すようなスキルなのではないか。
現に盗賊とは目が合ったのに見つからなかったし、今自身の手が薄っすらとしか見えていなかった。
ゲームのシナリオでは書かれていなかったが、このタイミングでスキルが発動してヴェルは生き延びたのかと知った。
そうか。ならばもう…
と部屋を出る。
屋敷の所々で火の手が上がっている。
盗賊の中に火の魔法を使える者がいて、屋敷中に火を放ったのだ。
そして階段下の大広間に横たわっている2人の死体。
オースティン夫妻はこの一件で亡くなっていた。
唯一の生存者であるヴェル。
この後カインが勇者に出会って旅をするまで、家族を亡くした二人は寄り添って生きていくのだった。
でも俺はストーリーを事を知っていた。
この後起こる悲劇を。
だから俺はここが分岐点ではないかと考えた。
ヴェルを殺すにはここしかない。




