2.RPG『勇者と黒き魔王』
ガタガタッ…ギィィ…
と嫌な音を立てて無情にもクローゼットは開けられた。
盗賊の男の一人と目が合う。
「?ん?なんだぁ…?」
もう絶体絶命のピンチだった。
本当にパニックになると人は声も出ないのだ。
殺されるにもせめて苦痛は一瞬で終わりますようにと半ば諦めて目をつぶる
「んだよ…ボロボロのクローゼットの中には汚ぇ子供服しか入ってねぇじゃねぇか」
お宝があると思ったのによ…とブツブツ言って
俺が寝床にしていたベッドのようなものもひっくり返して
興味を失ったのかまたぶつくさ言いながら部屋を出て行った。
助かった…しかしなぜ?
呆然としながらも俺には思い当たる事が一つあった。
まずゲームであったこの世界の話をしよう。
『勇者と黒き魔王』
某大人気ゲームの存在により少し知名度は低かったが、シナリオも良く一部からは人気があったゲームだった。
俺も大好きでよくやりこんだものだ。
主人公は勇者となり旅をして色々な仲間を得て、最後に魔王を倒して平和をもたらすといった王道のもの。
仲間も多くいて、物語には分岐もあるし何度プレイしても飽きないものだった。
俺の大好きなキャラ、黒騎士カイン・オースティンは仲間の一人だ。
というか作品で一番人気があった。
ジャケットにも後ろに大きくご尊顔が乗っていたし、カインの顔の良さに惹かれて始める人も多かったと思う。
見た目は黒騎士という通りで、
鎧も髪の色も黒くて顔はイケメンだし身体も鍛えていてカッコ良かった。
性格も良く頼りになる少しクールなみんなの兄貴というキャラだ。
何よりもステータスがチート級だった。
俺はゲームには効率も求めちゃうから見た目だけカッコ良くても好きにならなかったんだけどカインは誰よりも強かった。
攻撃力も防御力もスピードもあって、何よりもゲーム内でも数人しか持っていない固有スキルを持っていた。
固有スキルとは人によってそれぞれ違うもので、その人のパーソナルに関係していることが多いようだった。
勇者はみんなを守りたいという気持ちから強くなるキャラなので、仲間が増える度にステータスが底上げされるといった感じ。
カインは魔法を使う時の消費MPが半分になるというシンプルなもの。
しかしこれがチートであった。
初っ端からガンガン大魔法が打てる…大分お世話になりました。
スキル名は『はんぶんこ』というかわいい名前でカッコイイ見た目のカインからはかけ離れていたが、そのギャップこそがいいと女性のファンは萌えていたな。
どういうパーソナルでこの固有スキルになったのかと女性ファンの間では考察が盛り上がっていたな。
そんな作中ナンバー1の人気があったカインを弱体化させて二軍落ちさせるのがヴェルという弟だった。




