17.終焉
俺が眠っていた間に世界は色々な事が変わっていたらしい。
まず人間と魔族の共存…というより不可侵協定みたいなものが結ばれた。
さすがに一瞬で地形まで変える力を持つ存在には手も足も出ないと思ったのだろう。
一つの国があった土地だけで侵略が済むのならありがたいくらいだ。
カイン曰く元居た人間は無事らしいので。
隣国は大変かもしれないけれど大きい国だったから大丈夫だろう。
まぁ頑張ってほしい。
そして長い時間をかけて生まれた俺は姿も少し変わっていた。
カインと同じような、でも少し小ぶりの角が生えました!
おそろいのようで嬉しい。
あとはシッポも生えている。
これのせいで身体のバランスが少しとりにくいんだよな。
カインはすぐに慣れると言っていた。
でもカインのシッポは大きくてドラゴンみたいな立派なものだけど、俺のは細くて…なんか虫歯菌みたいだった。
ちょっと気に入らない。
しかもこのシッポ、感情によって勝手に動くから手に負えない。
まだ新しい身体に慣れていない俺をカインが甲斐甲斐しくお風呂に入れてくれた時の事。
カインが傍にあるタオルを取ろうと立ち上がった時に、離れたくない気持ちが湧き出てしまったのか勝手に巻き付いてしまったのだった。
まるでどこにも行かないでと言うように。
カインはすごくうれしそうにシッポにキスを送っていたが、俺は恥ずかしかった。
シッポの感情の制御が出来ない。
生まれたばかりだから多少大目に見てほしい所ではある。
「…に…さま…」
牙が生えたせいもあってか言葉はまだうまく話せない。
ただ元々俺はそんなに話す方でもなかった。
家の中で会話できるのはカインだけでもあったし。
静かにしていないと怒られていたからその内に話す事もやめてしまった。
当時からだけど俺がジーッと見つめていると、不思議な事にカインは俺が言いたい事が全部わかるようだった。
だからますますしゃべらなくなっちゃったけど。
また会えてうれしい大好きを込めてカインを見つめてからおでこにキスをする。
これも当時からやっていた久しぶりの二人の挨拶だ。
いつも別れの時にしてたからキスに少し寂しい思い出もあったけど、これからは一緒にいられるらしいのでし放題だ。
と喜んでいたのもつかの間、カインに真剣な目で見つめられていた。
あ、ダメだったかな?と思う間もなく今度はカインから噛みつくように唇にキスをされた。
「…んっ…」
カインの肉厚で長い舌が口内を探ってくる。背筋がゾクゾクする…
口の中もちゃんと変化しているか確認したかったのかな?
でもカインの顔すらまだ見慣れていないのにこれは俺には刺激が強すぎる。
と快感と上手く呼吸できない事で意識を飛ばしかけていたところで唇は解放された。
「ふふ…これから徐々に慣れて行こうな」
とまた見たことのない色気たっぷりの表情でささやかれる。
こんなの慣れる事なんて出来るのでしょうか?
魔族は長い生だそうなので時間はあるけれども、何年かかってもこんな表情豊かでイキイキとしたカインが間近にいる事に慣れるなんて出来そうになかった。
俺は嫌われ者で存在する事すら許されなかった。
カインを不幸にするのが嫌で、でも死ぬのが怖くて、
逃げて逃げて俺のいないどこかで問題が解決すればいいと思っていた。
でもそんな俺をカインは見つけてくれた。
本当はカインが生きて、幸せでいてくれればそれだけで良かった。
でも魔族として生まれ変わって考えが変わった気もする。
魔族たるもの少しくらい欲望に忠実になってもいいよね。
カインが生きてくれる事
幸せでいる事
そしてその傍に一緒に存在していたい事
誰にも求められなかった俺だけどカインだけは求めてくれた。
だからこの先なにがあってももう離れない。
物語を変えたくて舞台から逃亡した俺の末路は
とてもとても恐ろしい魔王に生涯捕らわれの身となってしまったのでした。
もう少しだけ続きます




