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16.羽化

そうして限界を迎えた俺はまた水晶の中に戻された。

それからどのくらいの日にちが経ったのかわからない。

多分数か月くらいはかかっていたと思う。

その間もカインはずっと傍にいてくれた。

一度無理をしたせいか今度は目も開かなかったが、存在は常に近くに感じていた。

思えば今が一番幸せなのかもしれない。

ずっとこのままでもいいや…なんて思っていたころに水晶の中にも変化が起きていた。

俺は水晶の中で更に分厚い膜に覆われていた。

外からは完全に見えなくなったようだった。

カインの距離がより近くなったのと、姿が見えなくなった事で少し心配する気配も感じる。

いつの間にかカインの感情とかも感じられるようになっていた。

そんな中で俺の方の変化もどんどん進んでいた。

ちょっと例えが悪いかもしれないけれど、感覚としては羽化するような…

サナギの中のように一度ドロドロに溶けて身体を再構成しているみたいだった。

見えないので確認する事も出来なかったけど。

そうしてカインの気配を傍で感じて安心したまま俺はまた眠りについた。




それからまた幾日か経って唐突に水晶にヒビが入った。

ミシミシ…パキパキ…という音で意識が戻った。

あぁ…目覚めの時は近い

とうとうバキンッという大きな音と共に水晶は割れ、俺は外の空気に触れる。

以前にあった重苦しさや痛みなどは全くなく、むしろ澄んだ美味しい空気のように感じた。

重力も感じそのまま床に滑り落ちるかと思いきや、俺はカインの逞しい腕の中に納まっていた。

「あぁヴェル…無事に生まれてきてくれたな。ありがとう。」

ありがとうなんて言ってもらえるなんて思ってもみなかった。

実の親にも言われたことのないセリフに泣きそうになる。

生物が生まれる時に泣くのには色々と理由はあるけれど、これもその内の一つだ。

ただ嬉しいんだ。

あなたに会えたことが。

あなたに求められることが。

実の親にも認められなかった。

何もないと思っていた世界。

みんなに嫌われ、自分自身ですら嫌っていた。

存在するだけでこの世界には悪影響なのではないかと消えてしまいたくなる事もあった。

死ぬのであればせめてもう一度あなたの姿が見たいと、ゲームのヴェルと同じように感じて結局は戻って来てしまった。

そんな俺をずっと探していてくれていた。

あなたがいれば世界はこんなにも美しく素晴らしいものに変わるのだ。

それが魔族として生まれ変わった俺の最初の感情だった。

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