12.訪問者
どうして…
どうしてこうなったんだ…
俺は身体も動かせず声も出せずパニック状態だった。
「魔王様、至急お耳に入れたい事が」
突然現れた知らない人…いや見た目からして魔族か。
キッチリとした姿で頭の良い参謀みたいな…
カインほどではないがとても美丈夫であった。
跪きカインを魔王呼びしているから従者ではあるのだろうがオーラがとても強そうだ。
「…俺の大切な時間を邪魔するほどの事か?」
先ほどとは違ってものすごく冷たい声
聞いているこっちの肝が冷える
「大変申し訳ございません。いかなる処罰も後ほど受けます。城への侵入者がありまして。魔王様のお名前も叫ばれていましたので、こちらで対処させていただく前に一度お耳に入れて頂いた方が良いかと…」
と参謀みたいな魔族は空間に魔力を放って映像を映し出した。
「あぁ、見知った顔だな…」
!!あれは勇者だ!そしてその仲間たち。
魔王をカインを倒しに来たんだ…
「ヴェル…すまない。お前と片時も離れたくはないのだが…面倒事を片してくるので少し待っていてくれ。」
またとろけるような声色に戻り、俺の入っているガラスのような水晶のようなものを撫でてカインは参謀を引き連れて部屋を出て行った。
身体を動かせない俺はそれを止める事も出来ずにただ見送るしかできなかった。
先ほど見た勇者はゲームの中とほぼ変わらなかった。
幼馴染の魔法使い、そして手には何かを持っていたー
まずい…
俺は唐突に思い出す。
カインの倒し方を…
このままではカインが危ない
主人公は幼馴染の魔法使いと決死の覚悟である技を繰り出すんだ。
2人の合体技のようなものでそれで魔王を瀕死状態にさせる。
そして手に持っていたアイテム…あれはたしか鏡だったと思う。
亜空間につながっている鏡。
その中にカインを封印する。
そうしてから鏡を叩き割って魔王を二度と出てこれないようにする。
そうして魔王を滅ぼすのだった。
まずい…
このままじゃカインは…封印されてしまう…
せっかく会えたのに…
俺はどうにかして身体が動かせないか、ここから出れないかあれこれ試行してみる。
10年も離れていたんだ。
こんな終わり方なんて嫌だ。
勇者に倒されるにしてもせめて最後は一緒に散りたかった。
俺は思い立ち、スキルを使ってここから出れないか試してみることにした。
俺のスキルは存在を消す事、その後また戻ってくる。
その時の座標をずらす事が出来ればこのガラスの檻から出られるのではないか。
どうせ死を待つだけならば色々試すしかない。
俺はこのスキルの禁忌の領域に足を踏み入れることも厭わなかった。




