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9.かの国

孤児院での生活は平和そのものだった。

そうして過ごしていくうちに何年も時が経っていた。

俺ももうすぐ16歳を迎える年だ。

この国でも成人は16歳であった。

そろそろここを出る準備をしなくてはならない。

孤児院では誰にも貰われる事なく一番上の歳になった。

世話をしてくれている大人に混じり子供の世話をしていた。

子供たちも甘えてきてくれて、俺を孤児院の仲間というより世話をしてくれる大人の一人としてみていたと思う。

いつからか、なんでお兄ちゃんは大人の人に貰われないの?と聞かれることもなくなっていた。

このまま孤児院で働くのも良いかなとも思っていたが、ずっとここにいるのも違う気がしている。

俺はなんとなく旅に出ようと思っていた。

色々な場所に行ってみたい。

たしかゲームでのヴェルは16歳で死んでいたはずだ。

カインは26歳。

もう一年くらい様子を見たら色々と落ち着いているだろうから

平和になったあの国をこっそり見に行ってみても良いだろうかと思っていた。


しかし最近あまり良い噂を聞かなかった。

離れているこの国にも噂が広がってくるぐらいだ。

距離的にはだいぶ離れているはずだけれど、かの国があった方角の空はいつもどんよりと暗かった。

そして逃げてくる人々も日に日に多くなっていた。

最終局面なのだとしたら良いのだけれど

もしかしたら勇者一行は魔王に苦戦しているのだろうか…

ならば尚更今は様子を見に行ったりは出来ない。

しかし不安も残る。

一番の最悪なパターンはカインが魔王討伐に行っていない事だった。

もし家族を全員失ったカインが心を病んでしまって戦うどころではなくなってしまっていたら?

俺は無責任すぎたのかもしれない。

カインなら家族を失っても勇者と一緒に旅をするものだと思い込んでいた。

どうしよう…

俺のせいでこの世界が滅んでしまったら

どうしよう…

カインが立ち直れていなかったら…

唯一の家族を奪ってしまったのだ

あの時、カインの様子を確認して勇者と旅をするまで隠れて見届けるべきだったのか

そんな最悪な想定を一度でも考えてしまったらもう不安で居ても立っても居られなかった


俺は死んだことになっているし、成長した姿では誰にも気が付かれないだろう。

なにかあっても気配を消せば大丈夫なはずだ。

大丈夫、少し様子を見るだけ。

何かあればすぐに戻ればいい。

そう思って俺はかの国の様子を見に行くことにしたのだった。

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