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1.走馬灯で思い出す前世

家を荒らしている侵入者の音

焦げるような匂い

使用人か誰かの叫び声

何かか起きていた


侯爵邸の一室

人の来ない物置と化した場所。

その部屋の中で唯一まだ使えると言っても過言ではないクローゼットに身を潜めていた俺は、恐怖とパニックの中にいた。

何か良くない事が起こっている。

誰かが家を荒らしている。

人は生命の危機に瀕すると走馬灯が見えるという。

この5年という短い生で、なにもなかった人生で一体何を思い返す事があるというのか。

それはわからなかったが頭の中では少しでも生き延びるための記憶の回帰が行われていた。

そうして俺の頭はぐるぐるぐるぐると廻り、廻りに廻って…

とうとう前世まで思い出していた。


あぁそうだ。

俺には前世がある。

思い出した。

こことは違う世界。

日本という国で生きていた成人の男性だったはずだ。

最後の方は朧気だったが若くして死んだことも覚えている。

そして今生きているこの世界の事も知っている。

いや元々知っていたんだ。

ここは前世でハマっていたRPGゲームの世界ではないのか。


日本には某大人気シリーズのRPGゲームがあったので少し人気は落としたが、

俺は大好きだったゲーム『勇者と黒き魔王』

勇者になった主人公が仲間を集めて魔王を討伐しにいく感じの良くあるRPGであった。


そのゲームの中ではないかと確信したのは今の自分の名前

ヴェル・オースティン

…オースティン。

そう、俺が大大大大大大好きだった

黒騎士カイン・オースティンの弟だ。

何故フルネームでまで覚えているかと言うと

実は俺の前世の名前が大須で、

カインが好きだった俺は事あるごとに色々なゲームでのユーザー名をオースティンにしていたからだ…。

こんな恥ずかしい黒歴史は思い出さなくて良かった…

そして同時に思い出す。

カインの弟ヴェルはこのゲームをプレイしたことがある人間なら皆知っていた。

作品内イチの嫌われ者のキャラであるという事を。



バタン!!!という音と同時に意識が現代に巻き戻る。

「?なんだぁこの部屋、埃くさっ!ってただの物置じゃねーか」

がやがやと数人の男どもが扉を蹴破って侵入してきたのがわかった。

とうとうこの部屋にも盗賊が来てしまった。

そう、盗賊だった。

カインの昔のエピソードとして語られていた事を覚えている。

クローゼットの中で震えつつも音を立てないようにする。

何とかこのピンチを乗り切らないと…

ヴェルはこの後のゲームのストーリーには登場していたが、この時にどう生き残ったかなど鮮明に書かれていたわけではなかった。

ゲームと同じく助かるとは限らない。

「お貴族様はこういう所にも金隠しているかもしんねーだろ。お前らもくまなく探せー」

あぁまずい…



ガタガタッと揺らされ光が差し込む。

クローゼットはとうとうあけられてしまった。



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