意識と生命の本質(神の視座で解き明かす)
別エッセイでも取り上げている『神の視座』を使って、「意識」や「生命」といった捉えづらいものの本質を解き明かしてみましょう。
まず「視座」を発達に伴い進歩していく、次の7つのグラデーションとして定義します。
・神の視座への歩み
無境界の中にある自我の理解→自己を通じて得る他者への理解→メタ視点による物事への理解→正解の導き方への理解→不確実性にあてるべき動的な洞察プロセスの理解→不確実こそが全ての物事の真の姿であることへの理解→あらゆる物事が勾配と分布のある無境界にあることの理解
この最終的に到達する視座(神の視座)、つまり、あらゆる物事が「勾配と分布のある無境界にあることの理解」によって次のことが導かれます。
「意識にしても生命にしても散逸構造であるので、これは「勾配と分布を持つ無境界にある要素群が秩序を生成する動的なプロセス」として解釈可能である」、と。
初めに用語の説明をします。
散逸構造とは何か?
散逸構造とは、熱力学的な非平衡状態でエネルギーの流れ(例えば、勾配)によって駆動され、自発的に秩序を形成するシステムのことです。たとえば、ベナール対流(液体が加熱されて規則的なパターンを形成する現象)や化学振動子(化学反応が周期的に変化する現象)がその例として挙げられます。これらのシステムは、エネルギーや物質の流れがある特定の条件下で、混沌から秩序を生み出します。
意識や生命もまた、エネルギーの流れや情報の処理を通じて動的な秩序を維持していると考えられます。
意識は、脳内のニューロンの活動やシナプスの接続が複雑なパターンを形成し、それが意識という現象を生み出しています。このプロセスは、エネルギーの勾配(例えば、電位差)やニューロンの活動パターン(分布)に依存しており、自己組織化によって高次の秩序が生成されます。
生命、つまり、細胞内の代謝や遺伝情報の伝達は、エネルギーの流れ(濃度勾配など)を活用して動的な平衡を保ちます。これにより、生命は外部環境との相互作用の中で秩序を維持し、また、進化していきます。
どちらも、勾配(エネルギーの差や情報の流れ)と分布(ニューロンの配置や分子の濃度分布など)を持つ無数の要素が相互作用することで成り立っています。そして、これらの要素群には明確な境界がない(無境界)にもかかわらず、全体として秩序ある状態を作り出すのです。
意識や生命を散逸構造と見なすと、それらは静的な「もの」ではなく、絶えず変化し続ける動的なプロセスとして理解できます。
意識はニューロンの活動が時間とともに変化し、外部からの刺激や内部の状態に応じて秩序を再構成するプロセスです。
そして生命は、代謝や進化を通じて環境に適応しながら秩序を維持・発展させるプロセスです。
この動的な性質こそが、散逸構造の特徴である「エネルギーの散逸を通じて秩序を生成する」という点です。
だからこそ、意識や生命は「勾配と分布を持つ無境界の要素群が秩序を生成する動的なプロセス」として理解できるのです。
神の視座は、単純な物理法則から複雑な現象が生じるメカニズムを考える上で強力な枠組みを提供します。また、科学だけでなく哲学的な問い—例えば意識の本質や生命の意味—にも新たな光を投じる可能性があります。
このアプローチを通じて、意識や生命がどのように生まれ、維持され、進化するのかを、動的で秩序あるプロセスとして捉え直すことができるのです。