殿下、大好きだからあなたから逃げます
ご都合主義です、矛盾などには目を瞑って頂けると幸いです。
「殿下、お慕いしていました、大好きでした、愛していました、私の気持ちがご迷惑でごめんなさい、最後までご迷惑でごめんなさい、大好きすぎて苦しかった、振り向いて欲しかったです、あの方とどうかお幸せに」
涙が止まらないけど、眠っている愛しい人にお別れを告げて転移魔法を発動した。
予め決めてた辺境の森の移民の村の家に。
「プロテクション・マクシマ」
私が使える最強の結界魔法、破れるのは彼くらいだけど、私を探しになんか来るはずないのだから。
私は王太子殿下の婚約者だった、初めて会った時から大好きで、どう接したらいいかわからないくらい、必死で見合う令嬢になれるように努力した、好かれたかったし、愛されたかった。仲はそんなに悪くなかった、殿下は本当に素敵な王子様で、婚約者として大切にして下さって、一緒に居る時はドキドキして、上手く話せなかったり、お顔を直視する事ができなくても殿下は優しくして下さってた、たけど学園で殿下はハニーブロンドの令嬢に恋をして、私を疎まれた、冷たい瞳で、私が居なければ良いのにと言われる日々は心を抉られる様だった、消えてしまいたかった。彼がその剣を私に向けて、かの方に近付くなと言われた時は怖くて、でもそれでも大好きで、脅しで本気ではなかったけれど、もうあの頃には戻れない事がどうしようもなく悲しかった。どうしてここまで拗れてしまったのかしら?
かの令嬢に近付いた事などないし、会おうとさえ思わなかった、惨めになるだけだから。そのうちに、私を有責に婚約破棄なさりたいと知った、殿下にしか話せない大事な話があるからと、彼の部屋を訪れた、冷たくされたけど、最後だからと堪えた、私達に出される紅茶に男性に効き目の強い媚薬を侍女に懇願して入れてもらった。特別な蜂蜜と嘘をついた、女性には効き目がない事も知ってたから、毒味役の侍女も気付かなかった。
殿下は気付かれて動揺されたけれど、抗えなくて荒々しく私を組み敷いた。私は純潔だったから少し辛くて、覚悟していたけど震えた、気持ちが伴わないと分かっていたから、触れられるのが嬉しいのか悲しいのか分からなかった、でも何故かずっと冷たかった殿下が破瓜のその時から昔みたいに優しくして下さった、効き目が強すぎたのか何度も肌を重ねてしまったけれど、殿下は夢のようにその瞬間は大事にしてくれて、優しい言葉を下さった、閨の戯れでも愛を囁いてくれた、だから幸せだった。大切な思い出ができた。このまま朝を一緒に迎えたいと思うくらいに、殿下が少しは私を好きだったのかなと勘違いしそうだった、諦めきれない愚かな私な願望、、決意が揺らぐ前に眠っている殿下から私は逃げた。
誰も私を見つけられない、探しに来ないであろう場所に。
ここは私の小さな小さなお城。
誰にも邪魔されず、誰の邪魔もせずに暮らすの。
1つの可能性に賭けて。
あれから5年、私は賭けに勝った。あの時私は
身ごもった、ティアラと名付けた、私の小さなお姫様。私と同じストロベリーブロンドに王族の証になってしまうアイスブルーの瞳、大好きなあの方に良く似た娘。
娘が産まれてからは、結界魔法に認識阻害魔法も掛けた。魔法と近くの森や泉の恵みで贅沢はできないまでも暮らしていける。
たまに近くの街にポーションを売りに行ったりもするけど、基本はこの辺境の森の中の家で過ごす。
ティアと2人で過ごす日々は幸せで、穏やかで宝物。
「母様、今日も魔法を教えてー」
無邪気に笑うティアに頷いて、今日も訓練を始める、王家の血を引く彼女は魔力が多く、コントロールを覚える必要がある、才能か遺伝かまだ小さいのに魔法がとても上手だ。
「さぁ、今日はこれくらいにして、お昼にしましょ、今日はティアの好きなチーズケーキがデザートだよ。」
いつもと変わらない穏やかな昼下がりにお昼を食べてたら、結界にヒビが入った。
「えっ?ど…どうして?ハッ!プロテクション・マクシマ!!プロテクション・マクシマ!!」
ま…ま…まにあわない!どうして?なんで?
「い!嫌!!来ないで!!バリア!!!」
は、弾かれた?この魔力は、まさか?
「インバリド!!」
あぁ……ダメ…やっぱり私では敵わない。
私を探しに来るなんて思わなかった、もう2度と会うことがないと思っていた、
そこには愛しく思う人がいた、変わらず、いやあの頃より素敵になった彼、私を見て顔を顰めてる。
私は殿下に媚薬を飲ませた張本人、何罪に問われる?不敬罪?反逆罪かしら、大嫌いな私の娘を殿下はどうするのかしら?
「殿下、私を…私を…処刑しにいらしたのですか?私はずっと…ずっと大人しくしていました。ご迷惑をかけないようにして、私が居なくなれば殿下の憂いはなくなると思いました、どうか、どうかご慈悲を…娘がいるのです…ずっと…ずっと息を潜め…この場所から離れず、死人のように暮しますから、どうか……」
ティアを抱きしめて懇願した。
「イヤ!!イヤ!!母様をイジメないで!!」
6年前より、大人になった彼が私とティアを見つめる…ま…まさか…ティアを
「で…殿下…子供に、罪はありません、どうか、私はどんな罰でも甘んじて受けますので」
「ほう…どんな罰でも?」
その目が細められる。
「はい、だから、だから…娘だけは」
大好きなティア…愛しい娘…あぁ…本当はずっと一緒に居たかった、成長を見たかった。
ティアを抱きしめていたら、急に引き寄せられた。
「そなたは誤解している、私はそなたを探していたが、処罰する為ではない、それに、そなたの娘は私の子であろう?紛うことなき王家の瞳だ」
「っ!!それは…で…では、殿下はなぜ?私をどうするのですか?娘をどうなさるのですか?」
「そなたは我が妃に、娘は正式に姫に」
えっ?でも?
「ハーニア様とご成婚されたのでは?だって彼女を愛しているとおしゃって、私は憎いと結婚などおぞましいと、殿下が」
そう何度も言って、彼女に近づくなと剣を。
「違う!!ずっと…私が愛しているのは、そなた…パトリシアだけだ」
「わかりません、信じられません。だって…だって、殿下は私と婚約破棄を望んでいらっしゃいました」
「違う!!話さなくてはならない事が沢山あるが、子供の前でする話ではない」
殿下はティアに微睡みの魔法をかけた。ティアが眠った後、殿下は教えてくれた、ハーニア様は闇の魔法を使う隣国の間者で魅了の魔法を使って殿下を傀儡にしようとしていた事、何とか支配を解こうとしていたけど、上手くいっていなかった、でも、
契りを交わしたあの日、私の純潔に触れた時魅了が解けた、正気に戻ったけれど抗えず、何度も求めてしまった、きちんと言葉にしなくても、気持ちが通じあったと思った事、目覚めたら私が居なくなったと聞いて驚き、私が私の意識で姿を消したと知って、私とちゃんと話さなかった事を酷く後悔したと。
それからずっと私を探していたと。
ハーニア様は魅力魔法が解けた事に気づくと姿を消されたと。でも国として対処はした、
とはなされた、けれど彼女と隣国に対する対応は教えて下さらなかった、でもきっと生易しい物ではないだろう。
「改めて、私の妃になって欲しい、ずっとパトリシアだけを愛してきたし、愛し続ける」
そう言って殿下は私の手に口付けた。
その手を取りたい、信じたい、でも、怖い、信じきれない、いつだって彼は私の心をかき乱す、愛しくて、拒絶されるのが怖い、また、あの目でみられたら?ここなら穏やかに居られる
「殿下は、責任を取ろうとなさっているのですか?ティアの事があるから?私は殿下に好きだと言われた事はありません、婚約者として、大切に優しくして下さった、でも、恋人としてではなかったですよね?」
いつも紳士的で、優しくて、でもどこか距離があって。手さえ繋ぐ事はなかった、あの日以外に、、一度も、だから……
「私はそなたが思う程、、良い男ではないのだよ、、私は優しくもないし、紳士でもない、
ただパトリシアにとって理想の王子様で居たかっただけだ、大切に慈しみたかった、無邪気に私を慕い、見つめるそなたが、私を意識して上手く話せなくなったりするそなたが可愛くてしかたかなかった、知らないだろう?私がどれだけ我慢していたか、どれだけそなたに触れたかったか、だが、あの夜のようにタガが外れたように自分の欲望を一方的にぶつけるつもりはなかった、一度でも触れてしまえば、抑えが効かないと分かっていたから、結婚するまではと思っていたし、傷付けたくなかった、大事に、誰よりも大事にしたかったんだ、そなたは私の唯一だから」
そんな言い方ってずるいと思う。だって私は
「殿下…私は…ずっと…ずっと…お慕いしております、初めてお会いした日から、あなただけをずっと」
「パトリシア、私と帰ろう、そなたも娘も幸せにするから」
私は、頷いた、殿下に私が抗えるはずもなく。
周りからの愛情に気付いたのは王宮に帰ってからだった。廻り道をしたけれど私達は幸せになれた。
好きだけど、逃げる、実は両思い的なのを書いて見たかったので。
誤字報告ありがとうございます。