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アルテミス【完結】

卒業パーティのその後は

作者: あんど もあ

2024年1月24日 日間総合ランキング6位!

読んでくださった皆様のおかげです。

本当にありがとうございます!


五日前まで読み専だったので、2位と6位に自分の名前があるのが信じられません…



1月25日 ランキング4位 ありがとうございます!

さらに

5位に「卒業パーティのその後のその後」

6位に「私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?」

って夢のようです( ;∀;)

「アルテミス・ダークムーン! お前とは今日で婚約破棄だ!」


 卒業パーティでガイア王子が私の名を呼びました。断罪シーンの始まりです。私はガイア王子の前へ足を運びます。

 ガイア王子の腕に絡みつくのは、魔力の多さから学園の奨学生になった平民のサンディ。勝ち誇った視線を私に投げかけますが、薔薇無し・BGM無し・エフェクト無しって、歴代サンディで最も地味な婚約破棄シーンですわ。あなた、本当にガイア王子の好感度を上げる以外なんにもしてなかったんですのね…。

 こちらを窺う周りの人たちも、あなたたちに興味無さそうですわよ。ヒロインがそれでいいんですの?


「婚約破棄の理由をお聞かせください」

「お前が私の婚約者の座に胡坐をかいて、いたいけなサンディをいじめたからだ!」

 もう何十回目かのやりとり。



 そう、私は数えきれないほど学園の入学式から卒業パーティまでの時間を繰り返している。私が何かをしてもしなくても、ガイア王子はサンディを好きになり、私がいじめてもいじめなくても、卒業パーティで婚約破棄される。

 やっと卒業パーティまで来たと思えば、また入学式になって新しいサンディが現れる。


 周りの誰にも理解されず、絶望する事にすら疲れた頃、当時のサンディが私が記憶を持ったまま人生を繰り返している事に気付いて、この世界について教えてくれました。


 ここは「太陽の乙女は約束の地でキスをする」というハレンチな題名の乙女ゲームの世界で、サンディはヒロイン、アルテミスは悪役令嬢なのだと。

『ここはね、このゲームが好きだった人の、最後の夢なのよ!』

『夢?』

『そう! 病院のベッドでスマホ越しにしかお目にかかれなかった推しのガイア王子とリアルに触れ合えて、ガチで話せて、マジで恋愛できるんだよ! きっとゲームの神様からのプレゼントだよ!』

 分からない単語が飛び交ってますが、かなり嬉しいのですね。

『アルテミスはつらいだろうけど、私たちには最初で最後の最っっ高の夢なの! どうか立派な悪役令嬢であって』

 そう言われたら、腹を括って悪役令嬢するしかないではないですか。

 そう決心してからどれくらいの時がたったのでしょう。私は、たくさんのサンディに満足いくエンディングを提供できたと自負しております。



「私はいじめたりなどしていませんわ」

 だけど、今回のサンディにだけは私は何もしてませんの。ガイア王子にお似合いのサンディなら、ちゃんと自分の役目を果たすのですが(階段から突き落としても膝を擦りむくだけですものね。さすがはヒロイン)、今回のサンディは魔法を使う練習もせず、当然その魔法で人を救う事も無く、学業もほっぽり出してガイア王子と遊び歩き、ガイア王子の威を借りて身分の低い生徒たちに嫌がらせ。

 そんな人をいじめるなんて、悪役令嬢の矜持が許しませんわ。私にいじめられたかったら、私が認めるだけのサンディと成りなさいませ。

 ガイア王子は、どんなサンディでも好きになるみたいですけど。(「強制力」と言うそうです)


「ひどぉい。ガイア様ぁ〜」

と、ガイア王子に身を押し付ける度に髪飾りとイヤリングとネックレスとブレスレットの宝石がキラキラ輝きます。あなた、平民でしたわよね…?

「きっとアルテミス様には、私なんていじめられて死んじゃっても気にならない存在なんですぅ」

「なんと傲慢な!」

「だから、何もしていませんわ」


「いじめた」「いじめてない」と、頭の悪い水掛け論が続く。証拠くらい捏造しといていただきたいわ。


「アルテミス様ぁ、どうして罪を認めてくださらないのですかぁ?」

 サンディが私に駆け寄る。

「やっていないことを認めるわけにはいきません」

 悪役令嬢としては、断罪されるのは仕事の一環ですが、冤罪をかけられるのは許容できません。

「私、怖かったのにぃ。一言、謝ってさえくだされば…」

 ウルウルと私を見上げるサンディ。ガイア王子はサンディの健気さに打ち震えているようですが、そのサンディは

「あんたには分からないだろうけどぉ、あんたは悪役令嬢なんだからどっちみち断罪されんのよ」

と、小さな声で嬉しそうに伝えてますわよ。

「知ってますわ。前のサンディが教えてくれました。若くしてお亡くなりになったそうですね。お気の毒に」

「…えっ?」

 あら、『乙女ゲームとは乙女がするゲーム』と聞いたので乙女だったのだと思ったのですが。そうですね、乙女と決めつけるのは早計でしたわ。

「私が…死んだ?」

 あ、そっちでしたか。死んだと自覚の無い方もいらっしゃるのですね。


 バッと後ろを振り向き、自分を見つめるガイア王子に目を見開くサンディ。

「何よこれ、もうエンディングじゃない」

「王子ルート攻略成功、ですね。おめでとうございます」

「エンディングの後、どうなるの? …まさか地獄?」

 物騒な言葉が聞こえました。そうだわ、亡くなる理由は病気とは限りません。このサンディは、ろくな死に方をしなかったのかもしれませんわね。

「さあ…。私はまた入学式で新しいサンディと出会うので」

 失礼します、とカーテシーをして背を向ける。出口へと歩き出すと、後ろから「嫌よ! こんなクソな世界…冗談じゃないわ!」と声が聞こえ、サンディが私を追い越して走り去って行きました。

 皆、サンディが扉の向こうに消えるのを、呆然と見送るしかありません。


 そして、サンディはそのまま姿を消してしまいました。扉の横に立っていた衛兵にすら気付かれずに。




 なぜか、もう時間は巻き戻りませんでした。

 多分、ゲームの神様(?)が、ヒロインのサンディにこの世界を否定されたことで、もうサンディを招くのはやめたのではないかしら。(神様のくせに打たれ弱い…)


 初めて迎える、卒業パーティの後の生活。

 ガイア王子は勝手な婚約破棄を国王陛下に叱責され、挽回を目指して公務に励んでいます。サンディは逃走中(という事に)。

 私は王子有責の婚約解消となり、「これからはキズモノ令嬢として念願の地味で静かな生活を…!」と、思っていたのですが。


「ニシダ王国は鳥を神の遣いと考え、決して食べません。晩餐会には鶏料理を出さないでください。特に第三王子は神官になる清浄なお身体なので、卵も禁止です」

「ミナミノ王国の王妃様は職人の手作業を尊びますので、お土産にクフ織を差し上げては? 我が国では地味だとあまり人気が無いクフ織ですが、あの緻密な地模様は王妃様のお気に召すはずです」

「クフ織の職人ですか? クフ山の麓の村に三人いますわ」


 うんざりするほど繰り返した日々のおかげでたっぷり溜まった知識を求められるままに使っていたら、宰相補佐室に私の机が用意されました。


「それはいいのですが、何故か私がどの補佐官とくっつくか皆さんの話題になってるみたいなんですの」

 仕事で顔を合わせたガイア王子とおしゃべり。強制力が無くなり、婚約者でも無くなったガイア王子は、今は話しやすい元同級生です。

「そりゃそうだよ。王子を振った君が次に誰を選ぶか、皆興味津々だから」

「王子を振った? 王子が私を振ったんですよ?」

「世間では、才女の君がアホな王子を見限ったと思ってるのさ。君を狙ってるのは宰相補佐官たちだけじゃないよ。蝗害予防の防御魔法を打ち合わせに行った魔法省の人や、土砂崩れへの救助を頼みに行った騎士団の人とか、貧民街への定期的な炊き出しの予算をもぎ取りに行った財務省の人とか…」

「女子力のカケラもない仕事の事しか話してませんわよ?」

「ちなみに君を国外に出させないように、誰かが君を射止めるように父上も彼らを煽ってる」

 

「……めんどくさい」

つい、淑女らしからぬ声が出て、ガイア王子が大笑いしてます。




 ねえゲームの神様、まさか私がヒロインの乙女ゲームが始まっていませんよね…?


曖昧な終わり方なので、後日談をアップするまで感想欄を閉じています。

感想を言いたいと言う方、少々お待ちください。



後日談「卒業パーティーのその後のその後」をアップしました。

「乙女ゲームが始まったのかどうかはっきりしろ」と思ってる方におすすめです。


感想欄も開放しました。

この作品を読んで思った事がありましたら、一言残してくださると嬉しいです。

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