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彼……オレは、少女……フィユリアを見る。さっきの話が本当なら、コイツはとてもではないが、人前へは出せない格好をしているのではないか?と今更ながらに気がつく。
そしてフィユリアの手を強引に引き、服屋へ向かった。
さすがにオレがコイツの服を選ぶのは駄目だろう。なので、店員にコイツの服を選んで貰い、それを買った。
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オレは今、あの店員に服を選んで貰った事を、死ぬ程後悔している。フィユリアは、いわゆる“原石”らしく、めちゃくちゃ着せ替えられてた。そして、まともな服を着たコイツはどうやら“かわいい”らしく、あらゆる方向から見られている。ハァ……。
さて、これから“聖地”へ行くんだよな。場所は……分からん。とりあえず“聖地巡礼”という聖地の場所が記された本を買い、そこへ行ってみる事にした。どうやら、一番近くなのは……って帝都の近く!?マジか!?
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―――――そして現在、オレ達は、帝都から少し離れた花畑にいる。いや、元、花畑に。
今、花畑は枯れきっている。というか、ただの枯れた土地だ。どうやら元、聖地らしい。
フィユリアが元、花畑に向かって歩いていく。オレも後に続き、オレ達は元、花畑の中央にいる。
「朔兎さん、此処で私を殺してください。此処で私が死ぬと、この土地が潤う程の聖力が私からこの土地へ流れて、この土地は聖地として復活するでしょう。」
無表情で淡々と説明するフィユリア。
オレは何も言わず手にナイフを持った。そしてフィユリアの胸を刺した。フィユリアの傷口から血は出ず、胸からナイフを抜くとすぐ元通りになった。
「痛かったです。」
「我慢しろ。」
終わった途端そう言ったフィユリアに、オレは淡々と返す。ナイフを鞘に戻していると、突然、元聖地が光った。
枯れた大地から、草花が咲き誇り、そこは綺麗な花畑へと変化していた。
「これが、聖地……」
流石にオレでも驚きを隠せない。聖力、いや、聖女の力をまざまざと見せつけられた。
「これでここは聖地として復活しました。これで数百年程は、聖力が枯渇することはないでしょう。お疲れ様でした。朔兎さん。」
お疲れ様、か。それはお前の方だろ……。オレはそう思いながら、花畑に立っていた。そして、ふととある男の言葉を思い出す。
「女性は花が好きだから、それを渡して褒めると喜んでくれるんだ。君にはわからないだろうけどね。」
最後の言葉はムカつくが、まぁそれは彼方へ飛ばしておこう。花、か……
そう思いながらふと下を見ると、スノードロップの花が一輪あった。いや、今、春だし。季節違い考えろよ!
……そういえば、スノードロップの花言葉は………………よし。
そしてオレは、スノードロップを摘むと、フィユリアの髪にさす。オレはフィユリアの頭に手を置くと、
「お前もお疲れ様だ。フィユリア。」
と、言った。フィユリアは、驚いたのかずっと突っ立っているが、ゆっくりと口角が上がっていくのがわかった。そして。
「ありがとう。」
笑った。傷のついた目はまだ色を失い、死んでいるが、歪な笑みではあるが、フィユリアは笑っていた。何故かオレの耳が熱い。オレはサッと手を離し、 フィユリアに、次の聖地へいくぞ、と言い、歩き始めた。
後ろからフィユリアのついてくる気配がする。
熱い耳を白銀の髪で、赤い頬をマフラーで隠しながら、
オレ、次の聖地へと歩き始めた。何故熱く、赤くなっているのかはそのときのオレには検討もつかなかった。