「町民会議①」
シンフォニア掲示板
佐倉幸の事
・転生の女神による転生ボーナスで、音楽の能力値が現世の100倍にアップ
・ギターの魔力の1つ 【音楽は言語を越える】
幸のギターに魅力されたものは、例え魔物であっても、意思疎通が可能になる。
さらにこの力は協奏した場合、ライブを通じて他人とも仲良くなる様に、音楽を聴いていた者同士も意思疎通が可能になる。
・ギターの魔力の1つ 【心酔】
幸のギターに魅了されたものに、命令を下せる魔法の力だ。
・ギターの魔力の1つ【協奏】
幸が誰かと共に演奏すると、相乗的に、ギターの魔力の力が増幅される。
この世界の事
この世界は6つの国からなる。
【レナシー共和国】、【ミグニクト】、【ファードナル】、 【ソドム】、【ライトメイト】、【シグルド連邦】
・世界で1番大きかった国【ドルトナティア】が、一年前に突然消えた?
・楽奴と言う、音楽をさせられる専門の奴隷がいる。
この世界の人々は音楽が大嫌いで、その結果なのか、音楽が聞こえなくなった。
そして、楽器は、まるで黒光りするGのように、存在するだけで気持ちの悪いものとなっている。
そのような音楽の待遇の中、楽奴は何故か、音楽をすることを強いられている。
もちろん。自由や平等といった人権はない。
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【ゲリラライブ当日】
…………。
……。
その日は雲一つない快晴で、クラウディアの海を見下ろすピンクと水色の塔が、太陽の光を照り返し、より一層色鮮やかにそびえ立っていた。
”ガヤガヤ ガヤガヤ”
「凄い人ですわね。」
「そりゃぁそうさ!
このザンスター・サオールズの町民全員が集まっているんだからね!」
ワタークは誇らしげに語る。
「しかし……。
幸達は無事にゲリラライブが行えるのだろうか……。」
客席の中でユラーハとワタークが心配そうに幸達のことを話していた。
普段は、ほとんど漁師しか寄り付かないこの漁港の広場にも、今日はたくさんの人が集まっている。
ザンスター・サオールズは、この世界ではそれなりに栄えた港町だ。
2000人弱程の人で会場はごった返していた。
客席はステージから見て、左右に区部され、真ん中はぱっくり開けて道になっていた。
そして、今はまだ主役のいないステージにはギロチン台が"ギラギラ"と人々を見下ろして佇む。
幸達は幾度となくこの場所に来ていたが、ステージの殺風景さはあまり変わらず、変わった点としては、防雨天井から垂れ下ろされ、【ケイケス・サオルーズの町民会議】と書かれた看板が波風に揺れていることだけだ。
そして、催しがいつ開催されても失敗の無いように、警備兵も集まる人々を囲う様に100人配置され、ステージの前とサイドも合わせて100人と、200人の警備態勢で臨まれている。
…………。
……。
――ゴミ処理場――
「まだちょっと臭いぞぉ。」
ピーネは羽で鼻を覆った。
厳戒態勢の広場の中、隠れる事が出来る唯一の場所。
それがこの巨大なゴミ処理場だ。
先日まではこの中に隠れるなどとてもじゃないほどの、尋常じゃない悪臭を蓄えていた。
それをワタークが、二日前に身銭を切ってゴミの焼却をしてくれたのだ。
それでもまだ鼻を突きさす残り香が漂っている。
「ピーネちゃん。
静かにしないと駄目だよ。」
チャーコがたしなめる。
「段取りとしては、幸君がステージになんとか立って、演奏を始めた時。
ステージ付近の警備兵がステージに釘付けになってる隙を突いて、みんなでステージに駆けあがるのよね。」
鍵盤ハーモニカの女性があごに手を突き言う。
「あぁ、緊張してきた……。」
スネアの男がうろたえる。
顔面蒼白で身体も緊張でぶるぶると震えていた。
「フーガスカちゃんがステージに上がってくるまで、リズム隊は1人なんだからしっかりしてよね!」
チャーコが言う。
「わっ、わかってるよぅ!」
"ぶるぶる"と口を震わせて叫ぶ。
「……それにしても、フーガスカはどうやってステージ上がるんだ?」
ピーネが純粋に頭に疑問符を浮かべている頃……。
…………。
……。
――クラウディアの沖合――
美しいクラウディアの海から顔を出しているのは、可愛い人魚のフーガスカ。
ステージの真後ろから200メートル程離れた場所だ。
「ここやったら見つからへんやろー。
なー、ここからステージに人が上がんの見えたらー。
ぐぅーっと近づいてー……。
幸入りのミミックー、投げたらええんやろー?」
フガースカはミミックを頭の上に置いて、海の中を器用にヒレを動かし、同じ場所で保っている。
「うん!
ミミックならちゃんと着地出来るでしょ!」
ミミックの口から顔を出す幸が言う。
「もちろんでございますよぉー!!」
ミミックは本番で女王様に”バコバコ”に叩かれるのを想像して興奮している。
「でも凄いね、ミミックの口の中。
異次元とか言いながら今はちゃんと足が着くようになってる。」
最初は箱に手をかけて懸垂状態を覚悟しながらミミックの中に入っていった幸。
「箱の中は自由自在でございますぅー!!」
したり顔のミミック。
「自由自在なんだ。
じゃぁ音の深さも変幻自在って事だ!」
幸が言う。
打楽器は、主に叩く物体の大きさや、中の広さで音色が変わり、その違いによっていくつも種類がある。
主にバンドの後ろに鎮座するドラムセットひとつとってもそうだ。
バスドラム、スネア、ハイタム、ロータム、フロアタムと大きさと中の広さの違いで太鼓が5個もある。
「そうなん!?
ミミック―。
帰ったら特訓やな―。」
フーガスカは新しい打楽器の知識に、目を"ギラギラ"とさせて言う。
「まずはライブだね!!
めちゃくちゃ楽しみだ!!
……そうだ。
今日のライブが終わったらフーガスカに言いたい事が……」
「あー!!
始まるんちゃうー?」
フーガスカがステージを指さした。
…………。
……。
――広場――
「あっ!来たよ!!」
ゴミ処理場の窓の隙間から、会場を除いていたチャーコが声を押しころして叫んだ。
それは町民会議開始時間の5分前にやってきた。
"ヒヒィーン!!ゴロゴロ…"
白くフカっとした布が天井として覆い、ニスにより茶色光している木製の側面。
それにキラキラと光る宝石や、海に近いからか、クラーケンの青銅彫刻など、高級そうな装飾が数々に施された豪華絢爛な風貌で、大きな木製の車輪の着いた"カブリオーレ"と言う形の馬車。
美しい鬣がサラサラと流れる白馬がそれを引いていた。
そして、馬車の後ろからは"占有預かりの楽奴"のミナが、ヴァイオリンを弾きながら追従している。
「きゃー!!」
「えっ!?」
「なんで!?」
「あれ……、まさかケイケス様!?」
中道を通って行く馬車。
客席でも中心に近い場所に立ち位置があった人々が次々に悲鳴に似た叫びや、疑問符を投げかける。
「なんだぁ?
こっちからは何も見えないぞー?」
ピーネも窓から身を乗り出して馬車の中を見ようとするが、位置的に全く見えない。
隠れていたピーネ達も今だけは、多少の身の乗り出しや、声をあげても問題がなかった。
なぜなら、客席後方で警備する兵士も、ステージ付近の警備兵も、全員の意識が馬車に注力してしまうほどのインパクトがその中にはあった様だからだ。
"ヒヒィーン ゴロゴロコロ… ブルッ!!"
馬の身震いの様な声と共に馬車は停止した。
そして登場人物の1人が降りてくる。
豪華で尊厳な、いかにも貴族の馬車から出て来たのは、毒々しいギラギラとした貴族の服を見に纏った、いつものケイケスではなかった。
「ふぅー。ブヒィー。
はぁ〜。ブヒィー。」
「「……。」」
人々は声が出ない。
馬車から降りて来たそれは、鼻息を荒げながら、四足歩行でステージの階段を一歩ずつ歩いて行く。
目の開かない赤ちゃん豚の様に、辿々しく。
白い肌膚を露出し、脂汗でギラッと光らせて。
それは確かに汚らしい白豚だが、本当に動物の豚と言う事もなかった。
ケイケスだった。
裸一貫。
白ブリーフ一丁の四つん這いの状態。
"ボールギャグ"と呼ばれる口に玉をいれて拘束する猿轡と、視力を奪うアイマスクを装着。さらに鼻フックまで添えられている。
ケイケスはステージの中心で停止した。
その頭上には【ケイケス・サオルーズの町民会議】の看板が波風に揺られていた。
…………。
……。
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