「それぞれの前日」
シンフォニア掲示板
佐倉幸の事
・転生の女神による転生ボーナスで、音楽の能力値が現世の100倍にアップ
・ギターの魔力の1つ 【音楽は言語を越える】
幸のギターに魅力されたものは、例え魔物であっても、意思疎通が可能になる。
さらにこの力は協奏した場合、ライブを通じて他人とも仲良くなる様に、音楽を聴いていた者同士も意思疎通が可能になる。
・ギターの魔力の1つ 【心酔】
幸のギターに魅了されたものに、命令を下せる魔法の力だ。
・ギターの魔力の1つ【協奏】
幸が誰かと共に演奏すると、相乗的に、ギターの魔力の力が増幅される。
この世界の事
この世界は6つの国からなる。
【レナシー共和国】、【ミグニクト】、【ファードナル】、 【ソドム】、【ライトメイト】、【シグルド連邦】
・世界で1番大きかった国【ドルトナティア】が、一年前に突然消えた?
・楽奴と言う、音楽をさせられる専門の奴隷がいる。
この世界の人々は音楽が大嫌いで、その結果なのか、音楽が聞こえなくなった。
そして、楽器は、まるで黒光りするGのように、存在するだけで気持ちの悪いものとなっている。
そのような音楽の待遇の中、楽奴は何故か、音楽をすることを強いられている。
もちろん。自由や平等といった人権はない。
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【ゲリラライブまであと1日】
…………。
……。
”ダンダ ダンダンダ ボンダ ボン”
クラウディアの海にグルーヴの効いた軽快なリズムが響く。
その深い打撃音は波の打ち返しの音と相まって心地よい。
「せやー。
うちが腹の下の方叩いたら”ウ”の口に窄めんやでー。」
フーガスカは続ける。
「ほんでー。
この耳のトコ叩く時は”ア”の口して大きくしてやー。
ほならなー。高い音出て気持ちいいからー。」
「はいぃぃ!!
女王様ぁ!!」
ミミックは目をハートにしながら叫んだ。
フーガスカは"ミミック"という打楽器を手にしてからと言うもの、叩くのが楽しくて楽しくて、ご飯と睡眠中以外は、一日中ずっとミミックを打ち込んでいた。
ミミックの前面部の鍵穴の下の方は叩かれ過ぎて白くなっていた。
「強く優しく叩くんやー。
明日本番やでー。
楽しみやー!」
黄色の髪を揺らし満面の笑みで言うフーガスカ。
既に演目の流れも把握し、準備は万端で明日を望む彼女は明日が楽しみでしかない。
緊張は一切なかった。
「はいぃぃい!!
私も精一杯の喘ぎ声を響かしますー!!」
ミミックが叫ぶ。
「それはいらん。」
”~♪”
…………。
……。
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【次の町民会議まで残り1日】
「いよいよ町民会議が明日だぞ……。
次は誰が犠牲になるんだ………。」
男がため息交じりに言う。
「前回までは、1週間前とかにケイケス様に連れ攫われる奴がやり玉だったから、噂でどこの者か分かったが……。
今回は何の話も聞かないなぁ……。」
もう一人の男が言う。
朝のこの時間は、港は絶賛稼働中で、漁師達が荷揚げを行っていた。
町民の関心はやはり町民会議で、働きながらもその話題で持ちきりだった。
「いっそ、今回は不発で誰も裁かれないのならいいのに……。
それか楽奴の奴らとかな。」
「ははは。
だったらいいなぁ……。
誰も迷惑にならねーな。
……俺ぁ、やっぱりワターク様に領主になって欲しいぜ。
こんな毎月毎月びくびく怯えて過ごしたくねぇよ。
町民会議も以前の様に町の為に行いてえなぁ……。
ワターク様と一緒に最高の海の町にしたいぜ。」
漁師達のボヤキは続く。
…………。
……。
漁師達が、ガヤガヤと仕事をしている間、広場に住んでいるチャコ達、楽奴はと言うと……。
隅っこの方に集まり会議をしていた。
「いよいよ明日だね。
ゲリラライブ。」
チャーコが言う。
「あぁ。
この一ヶ月の集大成だ。
絶対に成功させたい。」
息まくのはウッドベースを持つ男。
「今から緊張で”ゲロ”が出そうだ……。」
スネアの男が蒼白な顔をして言う。
6人は、自分達のパートの確認を輪になって行いながら、漁師たちの仕事が終わるのを待っている。
人がいなくなってから最後の合わせ練習を行う予定だ。
「キヨラさん大丈夫かな……。
私のせいで……。
ミナも無事だろうか……。」
チャーコは二人の事を考えるとすぐに眼がしらに涙が溜まってしまう。
「大丈夫よ。
キヨラさんならきっと大丈夫。
ミナは明日みんなで正気に戻しましょう。」
チャーコをぎゅっと抱きしめて落ち着かせるのは鍵盤ハーモニカの女性。
ふくよかな身体にチャーコの小さな身体はすっぽりと挟まっている。
「ありがとう。
泣いてられないね。
みんな明日絶対頑張ろうね!!」
「「「「「「おう!!!!!!」」」」」」
…………。
……。
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幸とピーネは、攻略したはずのシーガーディアンの塔1階のボスの間に来ていた。
正確にはキヨラが攫われて以降、ほぼ毎日来ていたのだが。
「こんにちは!
コカビエル!
今日はどうだい?」
幸が毒々しい悪魔に爽やかに言う。
「ああぁ!!
幸様!!いつもいつもお越し頂きありがとうございます!!」
深くお辞儀をするコカビエル。頭に生えた二本の角が幸を挟み込む。
「今日もあの女は来てないです。」
コカビエルは言う。
「そうかありがとう!
また来るね。」
幸はそう言ってピーネの脚に掴まる。
ピーネは翼を広げて勢いよく窓から飛んで出ていく。
…………。
……。
キヨラは結局、自身が持つダンジョンコア一度も使わなかったようだ。
よほど安全マージンが取れているとしか考えられない。
「キヨラ……。
大丈夫だよな?
明日ステージで元気な顔見れるよな?」
ピーネは羽をバタつかせながら足元の幸に向けて呟く。
「あぁ、きっと大丈夫だよ。
キヨラは賢いから、冷静な判断をして、今ケイケスの所にいると思うんだ。
だから明日ステージで何かされる前に必ず助けよう。」
幸は続ける。
「楽曲はしっかり頭に入ってるはずだし演奏もきっと大丈夫。まぁ合わせはちょっと足りないけどね。」
「そうだなぁ……。
じゃあ俺が!!
俺が、キヨラの分も頑張ってハープ弾くぞ!!」
ピーネが”えっへん”として言った。
「そうだね!
俺達で明日のライブ絶対に成功させよう!!」
2人はそう言いながらいつものベースキャンプ地に向かって飛んで行った。
いよいよ明日がゲリラライブの当日。
幸達はどんな景色を望むのか。
…………。
……。
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