「ザンスター・サオールズでの情報収集」
シンフォニア掲示板
佐倉幸の事
・転生の女神による転生ボーナスで、音楽の能力値が現世の100倍にアップ
・ギターの魔力の1つ 【音楽は言語を越える】
幸のギターに魅力されたものは、例え魔物であっても、意思疎通が可能になる。
さらにこの力は協奏した場合、ライブを通じて他人とも仲良くなる様に、音楽を聴いていた者同士も意思疎通が可能になる。
・ギターの魔力の1つ 【心酔】
幸のギターに魅了されたものに、命令を下せる魔法の力だ。
・ギターの魔力の1つ【協奏】
幸が誰かと共に演奏すると、相乗的に、ギターの魔力の力が増幅される。
この世界の事
この世界は6つの国からなる。
【レナシー共和国】、【ミグニクト】、【ファードナル】、 【ソドム】、【ライトメイト】、【シグルド連邦】
・世界で1番大きかった国【ドルトナティア】が、一年前に突然消えた?
・楽奴と言う、音楽をさせられる専門の奴隷がいる。
この世界の人々は音楽が大嫌いで、その結果なのか、音楽が聞こえなくなった。
そして、音楽は、まるで黒光りするGのように、存在するだけで気持ちの悪いものとなっている。
そのような音楽の待遇の中、楽奴は何故か、音楽をすることを強いられている。
もちろん。自由や平等といった人権はない。
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――シユウーッ――
ピーネは風を切って華麗に着地した。
直ぐに警備兵が駆け付けてこないことを見ると、飛行中も見つかってはいないみたいだった。
「幸!キヨラ!
無事に送り届けたぞ。
ちゃんと帰って来れるんだな?
楽器も持ってないんだぞ!?
大丈夫なんだな?」
ピーネは心配で心配でたまらない。
「大丈夫。
さっき渡しただろう?
“共鳴のミサンガ”。
何かあったらそれが教えてくれる。
その時はよろしく!
期待してるよピーネ!」
幸は優しく笑いかける。
ピーネは”えっへん”と鼻を鳴らした。
最後に「大好きだぞ!」と言って、ザンスターの森へ帰って行った。
「さぁ、もうだいぶ昼過ぎちゃったけど。
情報収集だ!とっとと行こう!」
幸が言う。
着地地点は、バレにくくするため距離をとっていたため、少し歩いてやっとの街の玄関への到着である。
当然のように警備兵が立っている。
「「……。……。」」
幸とキヨラは軽く会釈をし、警備兵は“キリッ”と敬礼をした。
ただそれだけだった。つまりは無事に入町出来たのだ。
ひとまず第一関門突破。
幸とキヨラは……。
「「うしし。」」
と笑った。
“ザンスター・サオールズ”は海に面した町だ。
町の入り口の門を抜けるとすぐに、汐風が鼻を通り、魚への食欲を想起させる。
幸達が、最初に目指すのは酒場だった。
情報収集の基本は酒場。
ファンタジーではそう決まっている。
酒場を探す道中に楽奴も探しながら歩いたが、見つける事は出来なかった。
恐らく、楽奴に近づけば“彼らの演奏する音”でそれは知覚できると思っている。
20分くらい歩き回ったであろうか。
幸達はついに、酒場の看板を見つける。
店の名前は【マリンルージュ】。
音楽に関わる人間であることがばれないか、ヒヤヒヤしながら、扉を開けた。
”カラン”
二人はドキドキしながら、バーカウンターまで歩いていく。
そしてバーテンに話しかけた。
「ビールひとつと、ルーコ……じゃなくてコーラください。」
幸はどぎまぎとしながら言う。
「あいよ。」
無事にビールとコーラを入手することが出来た。
合わせて3プオン。
「良かったねぇ……。
やっぱり楽器を持たずに普通の服を着てたら、わかんないんだね。」
キヨラは安堵したのか、涙が伝った。
それには本人も驚いていた。
楽奴としての束縛、自分達を見下す人々。それに蝕まれ続けたキヨラ。
幸との出会いで、解放されたつもりでもその確固たる確証がなかった。
バーウの村人は幸の音楽を聴いて既に音楽が好きになっているからだ。
それでは、《楽奴という概念の有無》について判断はつかなかった。
しかし今……。
幸の能力が及ばないここで、完全に楽奴の楔が無くなっていると確定した。
それはキヨラに、涙が自然に出てしまうほどの大きな安堵をもたらした。
「うしし。
良かったね。
じゃぁまず乾杯しよう。」
幸は自分のコーラのグラスを当てて、キヨラのグラスを“チン”と鳴らした。
そうして、完全に楽奴としての呪縛の消失と、《転生者としての違和感の有無の無》を実感した、キヨラと幸。
二人は自分の最大限のトーク技術で、なんとか酒場で得られるだけの情報を手に入れた。
◇◇◇
酒場で仕入れた情報は以下の通りだ。
2年ほど前に領主が変わり、圧政を強いるようになった事。
その領主は【ケイケス】という男で、ひどいサディストである事。
領主が船着き場を背にした大きなステージの上で演説を行う”町民会議”というものが月に一度開催されている事。
それの性質が悪く、その月のその領主の腹積もりで、気に入らない人間をステージに立たせ、町民の前で恐ろしい拷問を行い、のちに《公開処刑する》という最悪なものだった。
このイベントは、必ず《町民全員が参加しないといけない》らしい。
そして、貴族の占有預かりの楽奴も参加して何か楽器を弾くとのこと。
つまり正真正銘、町中の楽奴と、町民が集まると言うことだ。
ならばゲリラでライブを行えば、楽奴の解放、町民へ音楽を取り戻す事は出来る。
比較的難易度が低い町だと思えた。
ただ、その”町民会議”というものはつい先日終わってしまったと言う話。
つまり1か月ほどはそれを待つ期間が出来るのだ。
【成す】ことを達成するのに、どれほどかかるか分からないこの長い旅で、1か月はかなりきつい。
しかし、《別の事柄と組み合わせる》と話は変わってくる。
馬車の話だ。
今日のピーネの事を考えても、できるだけ早く欲しい。多少値が高くとも。
そう考えた時、この町は漁村で基本的に船移動なこともあって、馬車は通常より値が張るらしい。
それが30万プオンだという。
それはバーウの村なら、家でも建てられるんじゃないかという値段だ。
幸達は今、1,997プオンしか持っていないわけだ。
到底買えるわけがない。
馬車を買うには30万プオンだが、実はこれを《一気に稼ぐ方法》があるらしい。
それが今、冒険者達を募って攻略を進めている、突如現れた塔型のダンジョンだ。
【シガーディアンの塔】と呼ばれている。
このダンジョンの攻略報酬が30万プオンだそうだ。
町民会議まであと3週間ほどあるのだから、ダンジョン攻略をする時間は十分にあると思う。
なぜならこちらにはレベル52のピーネと幸のギターがあるからだ。
ぼちぼち準備をしていたらクリアは出来ると考えた。
そして、そのダンジョン化した塔があるのが、町のはずれにある、クラウディア海岸だと言うことらしい。
◇◇◇
”パチン”
有力な情報を沢山仕入れられた2人思わずハイタッチをする。
手に入らなかった情報は、この町の楽奴の話くらいであろうか。
幸とキヨラは満足な顔をして、酒場から出ていくのであった。
…………。
……。
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去年の終わり頃から始めてフォワーやブックマーク全然ないので、嘆いております。
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