「ピーネも行きたい」
シンフォニア掲示板
佐倉幸さくらこうの事
・転生の女神による転生ボーナスで、音楽の能力値が現世の100倍にアップ
・ギターの魔力の1つ 【音楽は言語を越える】
幸のギターに魅力されたものは、例え魔物であっても、意思疎通が可能になる
・ギターの魔力の1つ 【心酔】
幸のギターに魅了されたものに、命令を下せる魔法の力だ。
この世界の事
この世界は6つの国からなる。
【レナシー共和国】、【ミグニクト】、【ファードナル】、 【ソドム】、【ライトメイト】、【シグルド連邦】
・世界で1番大きかった国【ドルトナティア】が、一年前に突然消えた?
・楽奴と言う、音楽をさせられる専門の奴隷がいる。
この世界の人々は音楽が大嫌いで、その結果なのか、音楽が聞こえなくなった。
そして、音楽は、まるで黒光りするGのように、存在するだけで気持ちの悪いものとなっている。
そのような音楽の待遇の中、楽奴は何故か、音楽をすることを強いられている。
もちろん。自由や平等といった人権はない。
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宿の部屋に戻ると、ピーネが飛んでやってきた。
「また!!!
俺を置いて二人でどこ行ってた!!
ずるい!!」
またも、のけ者にされたと憤慨するピーネ。
当然寝ていたのは自分だ。
時刻は正午をとっくに回っていた。
幸とキヨラは、食料以外の旅に必要なものは全て手に入れて、服やギターケースの完成を待ちながら、これからの事を話し合う為に戻って来た。
「ピーネ!おはよう。
遅すぎるよ!」
キヨラはたしなめるが、ピーネの低血圧は一生治らないであろう。
キヨラはベットに腰かけた。
幸はもらって来たモノを仕分けして、整理しだす。
ピーネは寝床としていた、毛布の上に座る。
「これからのことなんだけどさ……。
今回色々あったじゃない?
楽奴解放の為のライブとか。」
キヨラはゆっくりとピーネに話し出す。
「おぅ!
ライブな!!
めちゃくちゃ楽しかった!!
みんなで演奏して、みんな笑って最高だったぞ!!」
羽を“バサバサ”と広げて楽しさの表現をしながら言う。
「それでさ、音楽が嫌いな人間に、音楽を届けるのって大変だったし、
魔物が村に入った時も、みんな家に隠れてさ。
ピーネ嫌だったでしょ?」
キヨラは少し顔を暗くして言った。
「確かになー、チケット受け取ってくれなかったもんなー。
でもチケット折って煙突入れれたし、俺。
石投げだって今度はするからさ、大丈夫だ!
隠れられても逃げられても、俺が捕まえる!!」
そう言って、ピーネは片足をあげて鋭い足の爪をワキワキとして見せびらかす。
そもそもチケットを折ってドローン操作をしているかの様な巧みな技術で煙突に入れたのはタックである。
「……そういうことじゃないのよ。
チケット作戦も次回もするか分からないし。」
話の根幹が分かっていないピーネに諭す。
「それでね、幸は……。
この世界に来て、何かを【成さない】といけないのよ。
それをするためにはね、世界中を回る旅に出ないといけないの。」
話が少しずつ核心に向いていく。
「おぉ!!
旅!!!
俺も種族混合村まで来るのに旅したぞ!!
色んな森で色んなもん食べたり、木の上で寝たりした!!
俺も旅、出来る!
俺も幸と旅するぞ!!!」
ピーネは旅というワードに“ウキウキ”が止まらない。
「でもね、これは、楽奴を解放するための旅なの。
そうすると、森や原っぱにばかり野宿するんじゃなくてさ。
人間の街に泊まったりしないとダメなんだよ。」
キヨラは続ける。
「そうするとさ、ピーネは人間の街になんか、簡単に入れないじゃない。
バーウの村は、今かなり特別な状況で入れているんだよ。」
ここらあたりで、キヨラの言わんとすることがなんとなく分かってくるピーネ。
「……。
えっ、嫌だ。
ピーネも行きたい!!
幸とキヨラと旅したい!!」
目尻がどんどん滲んでくるピーネ。
「魔物だけど、大人しくするから!!
人間の村では!!
だから、ピーネも行きたい!!!
幸と離れたくない!!」
しまいには泣き出すピーネ。
「私だってピーネと行きたいよ……。」
つられて泣き出すキヨラ。
「そのことなんだけどさ……。
ほら、これ見てよ。」
ベットの反対を向いてずっと荷物の整理をしていた幸が不意に喋り出す。
幸は異世界の服のままだ。
”birds”でのライブの時に着ていた、薄い色の生地のネルシャツ。
今はこの何日かの異世界生活で、泥もいっぱい付いて、石などが当たったりもしたので、所々敗れている。
振り向いて見せたのは、ネルシャツのままの幸。ボタンを閉じて、手は襟もとで“ねずっちです”スタイル。
「……何よ幸。
いつもと何が違うのよ。」
涙で霞んでいるせいもあるのか、幸が見せたいものが分からないキヨラ。
「これだよ、これ!」
幸が襟元に付けているものを指さした。
それは、服屋のオネェから先にもらって来た、蝶ネクタイであった。
薄いネルシャツ生地に真っ赤なそれは確かに、言われると印象的ではある。
「それがなんなんだ?」
ピーネは見ても分からない。
「だからさ。
……サーカス団だよ!
これはほら、団長がよくつけてるやつ!!」
幸は続ける。
「サーカス団なら、魔物がいても、ライオンとか虎とかいたりするから大丈夫かなって。
楽器だってさ、サーカスするなら音楽って相性抜群だと思うし。
“音楽隊です”って言って街に入っても、絶対に受け入れられないだろうけど、サーカス団なら入れるよ。」
幸はにやりと笑いながら言う。
「「サーカス団!!」」
キヨラとピーネがハモる。
「確かにそれなら、魔物も村に入れるかもしれないし、バンドも今後人数とか楽器とか増えた時にも、融通が利きそうね!」
キヨラはあごに手をあてて言う。
「サーカス!
それ昔、ドルトナティアで見たことあるぞ!
頭ボサボサで白い顔の鼻がおっきくて赤い奴が色んな事して楽しかった!!」
おそらくピエロのことを言うピーネ。
「でしょ!!
それならピーネだって一緒に行けるからさ!!
ピーネにも改めて……。
俺と一緒に旅に行こう!」
ピーネの肩を抱いて、目を見て言う幸。
「もちろんだ!!
幸は俺の嫁!!
どこまでも一緒だ!!」
ぎゅっと抱きしめて放さないピーネ。
_____楽奴解放の為の長い長い旅【成すための旅】_____
大切な仲間も無事に連れていける算段が付いて、3人は喜び合う。
佐倉幸の異世界ファンタジーの大冒険がようやく動き出そうとしていた。
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出会ってくださりありがとうございます!
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去年の終わり頃から始めてフォワーやブックマーク全然ないので、嘆いております。
リタイアせず、頑張ろうと思っておりますので、何卒応援よろしくお願いします!