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【祝10000PV感謝】異世界でもギターシリーズ  作者: bbbcat
第1章 異世界でもギターしかなかった ~迷わずの森とチケット大作戦~
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「成すべきことってなんだろう。」

シンフォニア掲示板


 佐倉幸さくらこうの事

・転生の女神による転生ボーナスで、音楽の能力値が現世の100倍にアップ

・ギターの魔力の1つ 【音楽は言語を越える】

 幸のギターに魅力されたものは、例え魔物であっても、意思疎通が可能になる

・ギターの魔力の1つ 【心酔】

 幸のギターに魅了されたものに、命令を下せる魔法の力



 この世界の事

この世界は6つの国からなる。

【レナシー共和国】、【ミグニクト】、【ファードナル】、 【ソドム】、【ライトメイト】、【シグルド連邦】

・世界で1番大きかった国【ドルトナティア】が、一年前に突然消えた?

・楽奴と言う、音楽をさせられる専門の奴隷がいる。

 この世界の人々は音楽が大嫌いで、その結果なのか、音楽が聞こえなくなった。

 そして、音楽は、まるで黒光りするGのように、存在するだけで気持ちの悪いものとなっている。

 そのような音楽の待遇の中、楽奴は何故か、音楽をすることを強いられている。

 もちろん。自由や平等といった人権はない。


************************


…………。


……。


              「……頭痛いー……。」


 しこたま飲まされた幸が、うなだれながら起きた。

前回の打ち上げのあとと全く同じ状況。


 幸はこの既視感に「ハッ!」となりすぐさま手を自分の両胸にクロスし、股はしっかりと腿で挟んで防備する。

 

 ……良かった。

 今回はしっかり服は着たまま寝ていたようだ。

ピーネもまだまだ起きなさそうだか、胸ははだけていない。

しかし寝相は悪い。


 ピーネが起きるまでまたすることがないぞと、思いつつ気が抜けた途端に視界の端の気配に気付く。


 ほっぺたに鼻が触れるのではないかという程近い位置で、キヨラが息をしていて、幸が気付いたと同時に口をだす。


「幸、おはよう。

 あなたって、本当は楽奴じゃないでしょ?」

ほっぺたをツンツンしながらキヨラが問うてくる。


「うわっ!!

 ……びっくりしたー。」

幸は女性の顔が近いという驚きと、ついて出た質問に対しても驚き、飛び上がる。


 でも、隠す事でもない。

そもそも、異世界転生者の話など、自ら聞きたかったのだ。


「おはよう。キヨラ。

 ……、そうなんだ。

 俺は楽奴じゃない。

 ……別の世界から来た転生者なんだ。」

幸はキヨラの目を見てはっきりと告げた。


 キヨラは驚かない。


「……やっぱりそうなんだ。」

キヨラは"やはり"と告げた。


 まさか別の転生者の話を知っている?

過去にそんな事例があったのか……!?


「そうだよねぇ〜!

 楽奴だったら楽しそうに演奏なんてしてるわけないもんねぇ〜。」

全く検討違いの返答。


「でも私、昨日本当に楽しかったんだよ!

 初めてバイオリンを弾く事が楽しいと思えた!!

 これは全部幸のおかげ!!

 ……これからもずっと一緒に楽しい演奏していきたいな……なんて……。」

キヨラは冗談まじりに本音を含ませて幸にウィンクする。


「ありがとう。

 俺もめちゃくちゃ楽しかったんだ。」

幸は本気の笑顔を見せる。


「でも俺は、転生する時に言われたんだ……。

 【成しなさい】って……。

 何を成せばいいのかはまだ何も分からないけど、俺にはやらなくちゃならないことがあるんだ。」

幸は真っ直ぐに言う。


「そっか……。

 幸は何かを成さなければならない……。

 ね!ね!ね!幸!

 私にもそれ手伝わせて!!

 私も幸と何かを成してみたい!!」

キヨラも真っ直ぐな気持ちで応える。


「……いいの?

 キヨラが手伝ってくれたらそりゃ俺だって心強いけど……。」

こんな綺麗な女の人が自分なんかを……、と幸は思う。


「いいの。

 言ったでしょ。

 私は幸の演奏を聞いて一発で落ちちゃったの。

 ……今からだって、私の全部をあげてもいいんだよ……。」

抜け駆けはまずいと思ったのか、キヨラはほっぺたに唇を触れるだけに止める。


「ん……!?」

元高校2年生には刺激が強い。


「それに、私、何を成せばいいのかもなんとなく分かってるんだなこれが!」

キヨラは腰に手を当て鼻を高々。

ピーネの"えっへん"癖がうつったか?


「え!?

 何を成せばいいの!?」

幸は藁をも縋る勢い。


「世界中で苦しんでる楽奴達を助けるのよ!」

キヨラは迷いなく言った。


「幸の演奏を聴けば分かるわ。

 音楽は絶対に"音が苦"であってはならないの。

 音楽は人を幸せにするものよ。」

キヨラは続ける。


「神様がそう言う風に、苦しむように……。

 人を、音楽を作ったのだとしたら、私のこの気持ちは何?

 そして、幸のその楽しそうな笑顔は?

 魔物達のあの幸せな顔は?」

さらに強く訴える。


「楽奴だけじゃない。

 そもそも人間が音楽を嫌ってること自体がおかしいのよ!

 だから、幸の成すべき事は、楽奴を解放すること。

 この世界に音楽を取り戻すことだと思う!」

キヨラはついつい涙が溢れる。


 キヨラはずっと楽奴として、苦しんで苦しんで音楽と向き合って来た。

 誰に強制されているのかも分からない。もともとそうプログラムされているロボットみたいに、キヨラは演奏をさせられ続けた。

 雨の日も風の日も、誰も聴いてくれない演奏を、誰に届けたらいいのかも分からず、鬱鬱と。


 しかし、それが、幸の出現で思い知ったのだ。

音楽は人を笑顔にするもの、人を幸せに出来るものなのだと。

 それはキヨラにとっての解放だった。


「……キヨラ、ありがとう。

 なんか俺、すっごい胸に刺さった!

 そうだよね!

 俺の音楽でみんなの心の色……。

 空っぽの灰色から、色んな色に変えたい!!」

キヨラの言葉がすんなり入って来た。


 そもそも幸も、この現実世界から一緒にやって来た相棒。

このギターを持って何かを成すのだと思っていた。

 それがアルメイヤの言う【成しなさい】なのかは分からない。

それでも幸は、キヨラの言う"楽奴の解放"、この世界に音楽を取り戻す事に全力をかけたいと思ったのだ。


…………。


……。


************************

出会ってくださりありがとうございます!


ブックマークや感想など書いていただいたりしたら、本当に励みになります。

去年の終わり頃から始めてフォワーやブックマーク全然ないので、嘆いております。

リタイアせず、頑張ろうと思っておりますので、何卒応援よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] "音が苦"、上手い言い回しだΣ(゜Д゜) 「この世界に音楽を取り戻す」カッコイイ(*´∀`*)
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