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親の愛を知らず
「旨い酒だ、かつて必死に産道を降りてきた甲斐がある。生まれてきて良かったって奴だ」
「なんだい君、面倒な手段で産まれてきたんだね」
「他にやりようがあるのかい?」
「神様の奴に札束握らせば、木の股からだろうが、コウノトリだろうが、キャベツ畑だろうが、さ」
「なるほどなぁ、そいつはうまいことをやったね。しかし金を払ったばかりで、君が貰えただろう両親からの愛だとかそういったものは受け取れたのかい?支払っただけ損じゃないか」
「どうだって良いさ、旨い酒が飲めてる。世はなべて事もなし、と言う奴さ」
「そうかもな。後学までに聞いておきたいんだが、君は一体何から生まれたんだ?」
「そりゃあ決まってる、今飲んでるお酒の、その原料の大麦からさ」