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ラストメモリー / 肉付き
ラストメモリー
卓上地層の下層にて
封までしかけて
出しそびれていた手紙を発見
読み返してみれば
さほど悪くもない
その昔怖れていた事柄は去った
別の不安は抱えているが
影は濃くも薄くもない
病と陽気と嬌声の透き間
古い記憶をトレースするも
過去はそのまま過去だった
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肉付き
割れたカップが
元に戻るのを待っていた
R博士のように
きのうの手紙をシュレッダーから
取り出そうとする
滴るような感傷を
毟ったぬいぐるみに軟膏を塗る
三歳児になら許しても
いまとなっては
眠りの羽根を生やしたままでも
駆け続けていたい
振り返る暇のないように
流行りの音と
ストレスが首を支えて
疲労と娯楽が惹かれ合う
脳内を卑猥に染め上げても
その方が誠実に
現実を生きているように見える
過去が海馬で足踏みしている
短髪日焼け生足の
十六歳の少年