8.帰還の方法を探しに旅に出る
何度かゴードンさんと試合をし、直近10戦では6勝4敗と勝ち越している。
魔剣スパルタンの目標である、世界最強の名称を手に入れたといっても過言ではない。
なので、今後の行動について魔剣スパルタンと話し合うことにした。
「なあスパルタン、これからどうする?おれは元の世界に帰る手段を探しに、旅に出ようと思っている」
『面白そうなのでお供します』
「そうか!なら、これからもよろしく」
リハク師匠に見せてもらった文献には、ノーマン帝国、ラフランテ王国、リレイロード王国の3か所に《転移の洞窟》があるらしいと書いてあった。
まずはノーマン帝国の洞窟を見に行くか!洞窟はノーマン帝国の王都の向こうにある。
…
旅に出るなら格納魔法は必須だな。瞬間移動も覚えておきたいところだが。
まずは格納魔法。
子宇宙とかのイメージでいいんだろうか?
試行錯誤の結果、
何とか出来た。
何んか怖いんで、生き物を入れるのは止めておこう。
次は瞬間移動魔法。
瞬間移動した際に移動先にあった物質ってどうなるんだろう?
もし、素粒子と素粒子がぶつかったら…?
などとごちゃごちゃ考えていたら、
出来ませんでした。
……
…
旅立ちの前夜、集会場前の広場で送別会を開いてもらった。
キャシーさん、レイラさんには自転車を作ってもらった。
「タクマ、あなたの世界の科学というものは非常に興味深かったわ」
「まだまだ聞きたいこともあるし、作った物を見てもらいたいからまた戻って来てね」
アーロンさんには仕事をもらった。
「もしアースロードの王都に寄ったら、アントンという喫茶店に行ってみてくれ。マテ茶がお薦めだ。それからこのバッジを持っていけ。何かの役に立つかもしれない」
パトリシアさんには剣速を上げるヒントをもらった。
「今度自転車競技の大会を開催しようと思っているの。よかったら参加しに戻ってきてね」
ゴードンさんには滅茶苦茶ボコられた。
「130勝40敗だ、まだ断然おれのほうが勝っている。自分が弱くなったと思ったらいつでも帰ってこい。またおれが相手をしてやる」
リハク師匠は異世界に迷い込んだおれを助けてくれた。
「お前は強い。だが一人では解決しない問題もある。何かあったら遠慮しないで帰ってくるように」
夜は更けていく。
空の星を見上げてみた。
もし元の世界に帰れないのなら、この村で暮らすのもいいかなと思ってしまった。
………
……
…
翌朝、町の外れまでみんな見送りにきてくれた。
リハク師匠がおれを見つめ
「タクマ、元の世界に帰る前に一度戻ってこい」
「はい、必ず戻ってきます。それまで皆さんお元気で」
そしておれは、元の世界へ帰る手段を探す旅に出た。
…
ここから一番近い村を目指し、サイクロン号を走らせる。
その村の名はガラパゴ共和国の辺境の村コンタクト。
………
……
…
ガラパゴ共和国 コンタクト村:
コンタクト村は、周囲を木の柵で囲まれていた。
門番がいたので近寄って話しかける。
「ここは、コンタクト村で間違いないですか?」
「はい」
「村に入りたいのですが」
「身分証明書はありますか?」
「いえ持っていません」
「どこから来ました?」
おれはアーロンさんの紹介状を見せて、冒険者になりにきたことを伝えた。
冒険者ギルドの場所を聞き、そこに向かう。
……
…
冒険者ギルドのドアを開く。受付を見つけたので歩み寄った。
「トウゲン村のアーロンさんの紹介できましたタクマと申します。冒険者になりたいのですが、受付はここでいいですか?」
受付嬢から少し値踏みするような目で見られた。
「はい、新規冒険者の受付はここになります。冒険者登録するには1万デナ(約1万円)かかりますがよろしいでしょうか?」
「では、こちらの書類に記載をお願いします」
名前、出身村、身体的特徴を書き、指紋を取られるだけの簡単なものだった。
嘘発見器の前で、過去の犯罪歴があるか聞かれたが、ないと答えた。
これで冒険者ギルドカードが出来た。ギルドカードは身分証明書になるらしい。
「これが冒険者ギルドの説明書です」
ギルドについての説明書受け取る。
冒険者には冒険者ランクがあり、実力とギルド貢献度により上げっていくらしい。
ランクはD~A級があり、A級になると、より高難度の依頼を受けられるようだ。
おれは登録したばかりなのでD級冒険者ってことになる。
「自重してくださいね」
と受付嬢がつぶやいた。
「…はい」
何んかいろいろと知っているっぽいな。
そんなにお金に困ってはいないが、試しに仕事の依頼を受けてみることにした。
「王都まで行くのですが、行く途中で達成できるような仕事の依頼はありますか?」
「それならちょうどいい依頼があります。ノーマン帝国の王都まで荷物を運ぶ仕事です。報酬は王都で受け取れます」
受付嬢が仕事の依頼を紹介してくれた。
「じゃあその仕事の依頼を受けたいと思います」
「荷物はこちらです」
何やら厳重に梱包された荷物があった。
「差し支えなければ中身を教えて頂きますか?」
とりあえず中身の聞いてみる。
「ベヒーモスの角です」
「ああ、先日おれが取ってきた角かもしれませんね」
「あら、そうだったんですか!?助かりましたわ」
受付嬢が軽く頭をさげた。
「では、お預かりします」
格納魔法で、依頼の荷物を仕舞う。
荷物を持っていないと不振がられる可能性があるので、ダミーの荷物をサイクロン号のリヤカーに積むことにした。
コンタクト村からノーマン帝国の王都までの距離はおよそ700キロメートル。
サイクロン号ならそんなに時間もかからないが、途中ノーマン帝国のファスト町とネスト町で一泊する予定だ。
………
……
…
街道を、サイクロン号でゆっくり走る。
街道は、今は平時なので、国境には関所は置いていないらしい。
途中何人かの旅人をみた。
そのほとんどが徒歩で、数は少ないが馬に跨った人や馬車に乗った人もいる。
馬に跨った簡単な鎧のようなものを着た3人組が前方から近づいてくる。
ギルドで聞いた、ノーマン帝国の街道警備隊ってやつだろうか?
「おい、そこの男、その乗り物はなんだ?」
先頭の男が声を掛けてきた。
「これは自転車という、足で漕いで進む乗り物です」
おれが応える。
「自分の力で進む乗り物か!珍しいな。献上する気はないか?」
「ひとつしかない旅のお供ですので、ご辞退させていただきます」
「そうか。で、目的地はどこだ?」
「ノーマン帝国の王都です」
おれは、コンタクト村の冒険者ギルドの依頼で、預かり物をガラパゴ共和国のコンタクト村からノーマン帝国の王都まで運ぶのだと説明した。
ギルドカードと依頼書を見せて街道警備隊と分かれた。
………
……
…
ノーマン帝国 ファスト町:
ファスト町は、周囲を土の壁で囲まれていた。
ギルドカードを見せ、町の中に入る。
街並みは中世ヨーロッパってとこか!
とりあえず宿屋を探す。
(中世のパリみたいに空からウンコが降って来たりしないよなー)
建物を見上げ、そんなことを考えていると、洗濯物が落ちて来た。落ちて来たのは下着のようだ。
受け止めないと道路に落ちて汚れてしまうが、受け止めたら騒がれそうだ。
どうしようと考えていたが、目の前に来たので、瞬間的に手で受け止めてしまった。
建物の中から誰かが走って出て来た。トラブルの予感。
「すみませ~ん、それ私の洗濯物です」
う、可愛い。女の娘だ。思わず洗濯物を握りしめてしまった。
女の娘は一瞬驚いた表情をしたかと思ったら、ジーとおれの手元を見つめている。
「どうぞ・・・異性に触られてあまりいい気はしないでしょうが・・・すみません」
慌てて手に持った洗濯物を突き出す。
「いえ、どうもありがとうございます」
といい残し、恥ずかしそうに速足で戻っていった。
女の娘が去ったあとに、ふと建物の看板を見ると宿屋だった。そのままここに宿泊することにした。
その後、雑貨屋に行って旅に必要な物を購入し、宿屋に帰って休んだ。
………
……
…
翌朝:
早く起きたが、少し遅めに町を出た。