4.依頼を受けてみた 2
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本日の依頼:ビッグアントの蜜の収集と討伐
ビッグアント(虫):体長1メートルの蟻。女王蟻は30メートル。
巣の中には、お尻に蜜を20Lくらい溜め込む個体あり
タクマ(人間)
体力:大
剣技:普通(剣筋が少しよくなった)
闘気:大
闘気の制御:下手(少し使える)
魔力:大
魔法:生活魔法を少々 ロックランス(石槍) しみったれ魔法 他
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【村から遠く離れた砂地】
ビッグアント発見。
「魔物だよね」
『ただの虫です』
「………」
今日はただの討伐ではなく、蜜も回収するということだ。
ビッグアントに斬撃を軽く1発撃つ。
「ギーッ」
鳴きながら倒れた。死んだっぽい。
……
…
10秒後:
巣穴と思われる所からビッグアントがぞろぞろ這い出て、こちらに向かって来た。
ざっと見、50匹は居るだろうか。
「ギイギイ ギイギイ」
「《ロックランス》」
地中から岩の槍がビッグアントに向かって突き出す。
そのまま串刺しかと思ったが、ビッグアントの外骨格は意外に頑丈で、吹っ飛ばされるだけで、すぐに体勢を整えまた向かってくる。
「《ボッグ》」
地面が泥沼化する。
足を捕られるかと思ったが、溺れた個体を踏みつけて、次々と突き進んでくる。
「《スリップ》」
地面がツルツルになる
ビッグアントが勢いよく滑ってこちらに向かってくる。
順番に滑ってくるので、斬撃を飛ばし、片っ端から斬っていった。
……
…
その後もぞろぞろ這い出てきてはぶった切り、そんな状況がおよそ30分続いた。
そろそろ打ち止めか?
巣穴に近づき覗いてみる。
穴の直径は2メートルってとこか!
「スパルタン、魔剣って明かり灯せるの?」
『可能ですが、剣を振り回すと光源の位置が変わるので、影がチラつき、視界が安定しません』
「そうか、なら左の手のひらにでも灯すか《ライト》」
蜜を溜め込んでいる個体を探して、残っていた何匹かのビッグアントを倒しながら、巣穴を突き進んでいく。
お尻の袋に蜜を溜め込んだ個体を発見。一匹だけ残して周りの個体すべて倒す。
「問題は、このアリをどう生きたままここに留めておくかだ」
とりあえず魔剣の腹でぶっ叩いて気絶させる。
「ロープを持ってきているので縛ってみるか」
「亀甲縛で大丈夫かなー?でも時間がかるかー」
背面観音縛りにしてみました。なぜこんな縛り方を知っているかは秘密です。
…
一旦巣穴から外に出て、蜜を入れるための樽を持ってまた巣穴に潜る。
蜜を樽に入れて運び出す。
あとは殲滅するだけだな。
巣穴は、深いとこでも50メートル、広さは直径300メートルといったところか。
おれはまだ殲滅魔法を知らないので、巣穴に潜って一匹一匹倒していった。
女王蟻、グロかったです。
依頼成功。サイクロン号に乗って帰る。
………
……
…
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本日の依頼:墓地の調査
リッパー(?):大鎌を持つ死神。サイズ2.5メートル。頭からローブを羽織る
タクマ(人間)
体力:大
剣技:普通
闘気:大
闘気の制御:下手(少し使える)
魔力:大
魔法:生活魔法を少々 ファイアボール(火球) 他
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【村の外れの墓地】
リッパー発見。
「ねえ、あれって死神だよね?」
『さあ?』
「………」
試しに斬りつけてみる。
「スカッ」
手応えなし。リッパーが、そのままおれの魔剣や腕をすり抜けて近づいてくる。
と同時に頭越しに大鎌が振り下ろされる。
予想外の動きだったため、反応が遅れる。
体を捩じり辛うじて大鎌を躱す。
「危っねー」
「スパルタン、こういう輩には魔法が有効なのか?」
『少々の魔法ではダメージを与えられません』
「そういわずに、ちょっとお試しで」
リッパーの顔目がけて火球を出してみる。
「《ファイアボール》」
「ボファ」
リッパーの体を素通りした。リッパーの動きは止まらない。
「フードで顔が見えないが、やはり効いてないか!」
ならば闘気で剣を強化するのみ。闘気を腕から魔剣に流す。
『微々たる闘気を感じます』
「そういうのはいいから…」
…
「スカッ」
「スカッ」
「バシッ」
3回振って、1回当たるといったところか!
斬撃が何回か当たると、リッパーの姿が消えていった。
…
ふと墓石の方をみると、白い影が揺れていた。
「もしかして幽霊?」
『そのようです』
こちらを睨むわけでもなく、どちらかというと物悲しそうに佇んでいる。
「スパルタンを介して意思疎通出来るかなー?」
『可能だと思います』
『「こんばんは、ここで何をしているのですか?」』
「こんばんは、えーと、あなたは?」
どうやら女性の霊のようだ。
『「仕事の依頼でこの墓地まで来た、タクマという者です。ここで何をしているんですか?」』
「気づいたらここにいました。何かが足に絡みついて動けません」
見ると彼女の足に黒いモヤが纏わり付いていた。
それを見た瞬間かなりビビった。
「…この黒いモヤは何だろう?」
『たぶん《亡者の足枷》かと』
「どういった物なの?」
『家族にきちっと埋葬されなかった人の中には、自分が亡くなったことが分からないでいる人がいます。その霊を、亡者と呼ばれるやつらが、仲間にしようと捕まえているのです。亡者とは魂の浄化を拒み、現世にとどまろうとしている者達です』
「どうすれば魂の浄化が出来るんだ?」
『亡者を追い払い、亡くなったことを分からせればいいはずです』
「わかった。なら彼女に状況を話してみるか」
おれは彼女に現在の状況を説明する。
…
「そうですか。どこでどのように死んだのかは分かりませんが、ここに居る現状を考えると納得できます」
「では亡者も追い払いますか?」
「はい、もし出来るならお願いします」
おれは剣先に闘気を纏わせ、彼女の足元の黒いモヤを斬り裂いた。黒いモヤが散って消えていく。
「どうやら追い払うことが出来たみたいです」
「ありがとうございます」
「スパルタン、この後どうすればいい?」
『リッパーが迎えにきます』
「え!リッパーが?さっきおれ倒してしまったよね。えーどうしよう」
『大丈夫です。リッパーはすぐに復活します』
……
…
しばらくするとリッパーが現れた。
おれがビビって魔剣を構えるがリッパーは何事もなかったかのように女性の霊に近づいていく。
何か女性の霊に話しているのだろうか、女性の霊が何度か頷く。
すると女性の霊はおれのほうを向き、一礼したと思ったら、リッパーと共に静かに消えていった。
「ふぅー、そういえば依頼は《リッパー退治》じゃなくて《墓場の調査》だったね」
リッパーって悪い奴じゃなかったんだ。たぶん彼女を亡者から救おうとしていたのだろう。
………
……
…
後日談。
一か月ほど前のこと、この村の近くを通った旅人が、亡くなって間もない女性を見つけたらしい。どこか埋められるところはないか探していたところ、この村の墓地をみつけたので埋葬してあげた。