表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔剣の呪いがスパルタって!  作者: 軒下水滴
アトラス編
2/31

2.強者に教えを乞う

 ご飯の合間に、おれが魔剣に取り付かれたことをリハクさんに伝えに行った。

「そうか、やはりお前は面白い男だ!」

 とリハクさんに笑われてしまった。


「その魔剣スパルタンだが、持ち主が強くなるに従って、剣の構成成分を変えていくらしい」

(スパルタン、リハクさんがこう言ってるけど、どうなの?)

『はい、マスター。オリハルコンの比率を調整してます』

「あのー、リハクさん。魔剣スパルタンが、オリハルコンの比重を変えるといっています」

「オリハルコンなら、そこにもあるぞ。要るなら持っていけ」


(スパルタン、リハクさんがオリハルコンをくれるっていっているけど、どうする?)

『必要なオリハルコンはストックしていますが、予備があると助かります』

「すみません、リハクさん。必要な分は確保しているんですが、予備があると助かるといっています、オリハルコンを頂いても構いませんか?」

「ああ、好きなだけ持っていけ」

『ありがとうございます』


 目の前のオリハルコンが消えた!魔剣スパルタンが取ったみたいだ。

「リハクさん、魔剣スパルタンが《ありがとうございます》とのことです」

「魔剣にお礼をいわれるとは、思ってもみなかったよ」

 リハクさんが少し照れてた。


 後で知ったが、オリハルコンはものすごく高価な物だった。


………

……


半年後:

 魔剣スパルタンに憑つかれて半年が過ぎた。

 今は魔剣を振っていても、意識をなくすことがあまりなくなった。

 魔剣スパルタンのサポートなしでも、十分会話が行えるようになった。


20時~6時の修行が終了した。

『マスター、剣を振るための体力は付きました。闘気量、魔力量も申しぶんありません。次の段階の修行に移行します』

 闘気は、防御や物理攻撃に上乗せ出来るエネルギーで、体の中心線に沿って気を循環させて得られる。

 魔力は、魔法を使うためのエネルギーで、体に漂う力を集結させて得られる。

 闘気を循環させるのも、魔力を集結させるのも、練るというそうだが、正しい姿勢で練れば、段々量も大きくなっていくらしい。

 魔剣はおれの知らない間に、その正しい姿勢に矯正してくれていたのだそうだ。

 ただ、おれは未だに両方とも有効的に使えていない。


「スパルタン、次の段階って何?」

『強者に教えを乞います』

「その人物を訪ね、他の町に移動しなきゃならないということ?」

『いえ、その必要はありません。なぜならこの村のリハク氏が強者だからです』

 マジですか…そんな強そうには見えなかったけど。

『リハク氏は魔法を修めた最強の魔術師です。剣も体術も最強レベルまで達しています。正確には剣ではなくて杖ですが。

最強の強者は別に居ますが、今は関わらないほうが無難です』


………

……


 協力を仰ぐためリハクさんの元を訪れる。

「ほう、わしに稽古をつけてほしいと」

 リハクさんは立てかけてあった木の棒をおれに渡し、

「この棒でそこの岩に打ち込んでみてくれ」

 とおれに言った。

 おれは直径2メートルくらいのごつごつした岩の前に立ち、岩に向かって棒を振り下ろす。

「パーン」

 棒が木っ端微塵に砕け散った。

「今度はわしがやってみよう」

 そういいと、リハクさんは別の木の棒を持ち、岩の前に立つ。軽く棒を振り下ろしたように見えた。

「ズサッ」

 岩が真っ二つに切れた!

「棒に闘気を込めて打ち込むと木の棒でも岩が斬れる。稽古をするにも、打ち合ったときにすぐ棒が砕けてしまうのでは、思う存分稽古できない。まずは棒に闘気を込めることを覚えるように」

「分かりました。練習します」


「ところでタクマ、戦いのスタイルは両手剣ってことでいいのか?」

「はい、でも臨機応変に片手持ちでも戦えるようにと考えています」


 それからおれは、剣に闘気を込める練習に励んだ。


………

……


7日後:

「ズサッ」

 岩が真っ二つに切れた! これでリハク師匠との稽古に入れる。

「リハク師匠、稽古をお願いします」



「では、行きます」

 とおれは言い、棒を構えた師匠の正面に木の棒を振り下ろしてみた。軽く躱される。

「掛け声はいらないんでな」

 今度は不意に棒を振り下ろしてみた。また軽くかわされる。

「連続で攻撃してきてもいいぞ」

 それならばと、棒を振り下ろしからの横なぎ、突きなどを交え、頭、胴を問わず攻撃してみる。 すべて紙一重で躱された。

「もういい、大体分かった。素直な振りだ。まずはわしに棒を使わせるよう考えてみることだな」

 そう言葉を残し、リハク師匠はどこかに出かけて行ってしまった。


「スパルタン」

『はい、マスター』

「なぜこうも簡単に躱されたんだろう?」

『予備動作が大き過ぎます。予備動作や筋肉の動きで次の動作を推測されてしまいます』

「とりあえず予備動作を小さくする練習をしよう」


………

……


7日後:

 予備動作がかなり小さくなったのでまたリハク師匠に挑む。

 またリハク師匠に躱されている。

「スパルタン」

『はい、マスター』

「前に、素直な振りだと言われたけど、フェイントを加えたほうがいいか?」

『はい、単発で終わらず、数手先を考え、相手を徐々に誘導するフェイントが有効かと思います』

 それから、いくつかフェイントを考えながら練習に励んだ。


………

……


7日後:

「ガシッ」

ついに棒が交差した。

「うむ、まあまあだな。次はこっちも攻撃するから見事躱してみろ」

「寸止めですよね?」

「闘気の量が大きいタクマなら、当てても大丈夫だろう」


 軽く打ち合い、距離を取った。リハク師匠が軽く棒を振るう。

「シュッ」

「ビシッ」

 何かが飛んで来た。

「斬撃を飛ばしたんじゃよ」

「斬撃って飛ぶもんなんですか?」


「これよ」

 またリハク師匠が近くの岩に向かって軽く棒を振るう。

「シュッ」

 岩が裂けた。


「リハク師匠、その飛んできているのは、風魔法ですか?」

「風魔法で風を飛ばすやつも居るが、わしは闘気を飛ばしておる。」

 闘気を飛ばすイメージで魔剣を振るってみたがうまくいかない。

 その日は斬撃を飛ばすのは諦めて、がむしゃらにリハク師匠に向かっていった。


 ボコボコでした。魔剣スパルタンに《パーフェクトヒール(完全回復)》魔法をかけてもらわなければ立てません。


………

……


 次の日:

 リハク師匠に魔法について聞いてみた。

「リハク師匠。魔法については、何か教えて頂けないのでしょうか?」

「実は魔法についてこれといって教えることがないんじゃよ。

魔法は元をただせばイメージを魔力で実現しているだけなのじゃ。なので、既に小なりとも魔法を使えるタクマに教えられるとしたら、

どのような魔法があるとか、魔術師の視点からみた魔法のタイミングと種類くらいなんじゃよ」

「では、是非ともそれをお教え下さい」


「まず魔術師は魔法の発動までに少し時間が掛かるため接近戦に弱い。

そのためほとんどの魔術師は、魔力消費量は多いが発動時間の短い接近魔法をいくつか覚えている。ただこれが魔力を多く消費し、多発すると魔力が枯渇する。

まあ、魔力量の多いタクマなら、滅多なことでは枯渇しまいがな」


「次に、魔法を無力化するための無効化魔法、防御魔法、対抗魔法がある。

無効化魔法は、魔法発動前にその発動を妨害させる。

防御魔法は、防御壁を設けて魔法を遮る。土壁は長時間持続するが、風や炎の壁は拡散してしまうので、保持するには魔力を使い続けなければならない。

対抗魔法は、発動した魔法と相対する効果の魔法や、同じ効果の魔法をぶつけて無効化する」


「それから、相手の体勢を崩す、しみったれ魔法がある。

例えば地面の摩擦係数を軽減させて足を滑らせたり、地面を泥沼化して沈めたり、落とし穴を作って落としたりするのがそうだ。

ただ、簡単にそれを躱したり、物ともしないような強者もおるので、あまり過信すると痛い目に合う。

睡眠や束縛などの精神魔法は、強者には効かないので戦闘中は使用しないほうが無難じゃな」

 魔法の過信は駄目ということか。

「まあ、他にあるが、おいおい教えて行こう」


………

……


ある晴れの日:

 今日もパトリシアさんとゴードンさんが代わる代わるおれの愛車を豪快に乗り回している。

 今日は150キロ以上出てそうだ。

 突然ゴードンさんが乗った自転車が横にブレ、そのままの勢いで飛んで行く。

「ドッカーン」

 ゴードンさんが転けた。

 少し恥ずかしそうにしながらも、そのまま何事も無かったように、また自転車に乗ろうとしていた。

「おや?タイヤが曲っちまった」

 ゴードンさんがタイヤを見ると自転車のホイールが曲がり、タイヤがパンクしていた。

「タイヤが壊れました。これじゃー走れませんね」

 おれも残念そうに言う。

「そいつはすまねぇことをした。直せねーのか?」

 申し訳なさそうにおれを見る。

「おれでは直せません」

「そうかー、残念だ」


 そう諦めかけた時

「「ちょっと待ったー」」

 キャシーさんとレイラさんが声を掛けてきた。

「タクマ君、新しい自転車、私達に作らせてくれない?」

 キャシーさんが嬉々として提案してきた。

「いいですよ」

「タイヤってチューブが難しそうだけど全部ゴムでいい?あとギアなくてもいい?」

 と今度はレイラさんが提案してきた。

「大丈夫です。タイヤが全部コムでも、ギアがなくても支障ありません」


「ボディはより頑丈なアダマンタイト製でいいかな?」

「なんですか、そのアダマンタイトっていうのはなんです?」

「鉄の1000倍重くて3倍硬い物質」

 鉄の1000倍重いって、自転車の総重量が20トンなるの?

 鉄の3倍硬いって、ダイヤモンドより硬いんじゃない?


………

……


2日後:

 転車らしきものが2つ出来上がった。

 フレームがやけにゴツイ。なぜかツーシータ―になっている。ALLアダマンタイト製だそうだ。かなり重たそうだ。

「一応走れるんだけど、こんなもんでどうかな?」

 キャシーさんが首を傾げながら聞いてくる。

「とりあえず、自転車の形になっているのでいいと思いますよ。自転車の《軽い》という利点は完全に無くなり、タイヤもペシャンコになって、まったく意味をなしていませんけど…」


 さっそくパトリシアさんとゴードンさんが乗ってみる。

「うん、こっちのほうが、重量感が在って、私達には合っているわね。多少のことでは壊れなさそうだし」

「わしもそう思うぞ」

「さあ、私に付いてこられるか?ゴードン」

「うむ、競争だ、パトリシア」

「「それっ シャカシャカシャカシャカ………」」

 ………あっという間にかっ飛んで行きました。ケイデンス半端ねー

 ま、おれには重過ぎて無理だな。今度、鉄製の自転車を作ってもらおう。


『マスター、あれ、すごくいいですね。下半身の強化に使えそうです。マスター用にあれをもうひとつ作ってください』

 魔剣が話しかけてきた。

 確かに自転車って下半身強化にもってこいだもんな。とりあえずキャシーさんとレイラさんに頼んでみる。

「すみませんキャシーさんとレイラさん、おれの自転車も作って頂けませんか?荷物も運びたいので籠があるとうれしいです」

「「いいわよー」」

 この時は気付かなかった。素材を指定するのを忘れていたことを。


………

……


3日後:

 出来上がりました。

 ALLアダマンタイト製の自転車。なんと後ろに巨大リヤカーまで付いている。

 籠っていったのに…


 その日の夜、白目を剥きながら、操り人形のようにシャカシャカと自転車を漕ぐおれの姿がそこにあった。


 …自転車はサイクロン号と命名した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ