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魔剣の呪いがスパルタって!  作者: 軒下水滴
アトラス編
1/31

1.魔剣に憑つかれた


 買物帰り、自慢の自転車に乗ってゆっくりペダルを漕いでいた。

(前籠が欲しいなー。でもこのマウンテンバイクに前籠って…無いなー)

 などと考えていると、急にピンク色のモヤに包まれ、辺りが何も見えなくなった。

 おれは慌てて自転車を停止させる。

 数秒後、ピンク色のモヤに代わり、今度は眩しい光が辺りを包み込んだ。


………

……


 桃のような花を咲かせた木が見える。近所にこんな場所は無かったはずだが?

 …ここは何処だ?

 現状を把握しようと辺りを見廻すと、一人の紫髪の老人がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

 どこか飄々としている。


▲&◇%@@$(こんにちは)

 紫髪の老人に話しかけられたが聞き取れなかった。よく聞こえるように耳に意識を向ける。

▲&◇%@@$(こんにちは)

 どうやらおれの知らない言語らしい。


 挨拶しているようなので、とりあえずこちらも挨拶してみる。

「こんにちは。ここは何処ですか?」

 紫髪の老人が首を傾げている。困惑しているようだ。


……


【老人視点】

 桃畑のほうで何かが光ったので、様子を見に来てみたが、1人の少年が見たこともない薄っぺらな機械に跨っていた。

 とりあえず、少年に声を掛けてみる。

▲&◇%@@$(こんにちは)

 少年が首を傾げている。再度、声を掛けてみる。

▲&◇%@@$(こんにちは)

 また少年が首を傾げる。


 この少年はさっきの光と何か関係があるのだろうか?

 顔を見るとかなり困惑しているようだが、敵意や悪意は感じられない。

(とりあえず村まで連れて帰るか!)

 身振り手振りで付いてこいと誘ってみた。


……


【少年視点】

 紫髪の老人は、一緒に来いと誘っているみたいだ。

 もう少し状況を整理したいが、逆らわずに付いていってみることにした。何かあったら自転車で逃げよう。

 自転車を引きながら山道を30分くらい下っただろうか、目の前に開けた場所が現れた。家屋も見える。



 紫髪の老人に、集会所らしき場所に連れてこられた。

 数十分後、20人くらいの人が集まってきた。初老の人が多い。


 紫髪の老人が近寄ってきて、1本の禍々しい剣を差し出してきた。握れということなのだろか?戸惑いながら握ってみる。

 紫髪の老人が何やら話しかけてきた。

「言葉が分かるか?」

 頭の中に言葉が響いてきた。

「分かります」

 思わず日本語で返事を返す。

 しかし自分の口から出た言葉は日本語では無かった。ただなぜか意味は合っていると感じた。


「これはいったい…?」

「その魔剣スパルタンが、通訳してくれているんじゃよ」

 紫髪の老人が応える。

「わしの名は《リハク》。お前がなぜあそこに居たのか、聞かせてくれるか」



「名前は佐藤琢磨。神奈川県在住。年齢16歳。高校1年生」

(あと家族構成は父と母と兄の4人家族で合っているよな?)

 自分の記憶を頭の中で確認してみる。


「神奈川県?高校?何やら分からない言葉もあるが、それも含め説明してくれ」

 おれは自分の立場やここに来た経緯などを語った。

 ・神奈川県というのは日本という国の一行政単位であること。

 ・高校というのは学業を学ぶ機関であること。

 ・さまざまなインフラや電化製品に囲まれて生活していたこと。

 ・この自転車に乗って走っていたら、ピンク色のモヤと眩しい光が辺りを包み、

  気付いたら桃の木の近くにいたこと。

(それにしても、ここはどこだろう?)


「ここは《ガラパゴ共和国》の《トウゲン》という村だ」

 リハクさんがこの世界について語り始めた。

 その電化製品という便利そうな物は、この世界には存在しない。何かに火を着けるには魔法を使う」

(魔法…?)

「私の世界でも魔法という概念はありますが、物語の中でのみ存在する空想の力です。あくまで空想で誰も使えません」

「では、違う世界から来たのかも知れないな。200年ほど前にもあったが、また《異世界人》か!」


 どうやらここは、地球ではないようだ。


「ところでその魔剣スパルタンだが、そのまま使い続けると最悪死に至る。

魔剣は装備した者に呪いを掛け、極限まで鍛える。魔剣を装備した者が最強に至るか、死ぬか、または精神に異常をきたすまで離れない」

 リハクさんの言葉に、ちょっとビビって魔剣を離しそうになった。


「では、すぐに返したほうがよいのですか?」

「呪いにかかる前に兆しがある。それまでは身につけておいても大丈夫だ。ただ最低限の会話が出来るようになったらすぐに返すように」

「分かりました。呪われる前にお返しします。それで、呪いの前兆とは?」


 リハクさんがいうには、

 ・この魔剣を携え続けていると、ある日突然魔剣を握り、素振りを始める。

 ・10回くらい素振りをしたところで完全に呪われる。

 ・完全に呪われる前に魔剣から手を離せば、呪いは回避出来る。


 手を離せばいいのであれば、問題ないか!?


「リハクさん、私の元居た世界に帰ることは可能でしょうか?」

「分からぬが、

今から200年くらい前に、お前と同じような異世界人が現れた。

なんでもその世界には、別の世界に転移することが出る《転移の洞窟》があるらしい。ただ困ったことに、その洞窟の力がたまに暴走して、予期せぬ場所で転移が発生する」

「では、私も私の世界の《転移の洞窟》の暴走に巻き込まれたかも知れないということですか?」

「その可能性が高いな」


「その異世界人は、その後どうなりました?」

「古い文献をみて、この世界でも《転移の洞窟》があることを見つけた。そして、そこへ行ってみるといい残し、そのまま帰って来なかった」


「その文献を見ることは出来ますか?」

「原本はあるはずだが…探してみよう」

 元の世界に帰れる可能性が出てきた。


……


 その後リハクさんに、村に一軒ある宿屋《桃色仙人》に連れていかれた。

「当分、ここに住むといい。必要なお金はわしが出そう」

 リハクさんが住む場所と食事を提供してくれるという。今は素直に世話になろう。

「ありがとうございます。この御恩はいつか必ずお返しします」

「そう固く考えるな、この村は娯楽が少ないんでな。何か面白いことが始まりそうでワクワクしているよ」

 そういってくれているけど、あまり世話になるのも気が引ける。とりあえず早く自立しよう。


 そういうわけで、おれは[桃色仙人]にお世話になることになった。

[桃色仙人]にはお風呂が在った。よかったー

 桃色毛のマリアンさんというおねえさんが、一人で経営している。

 早速夕飯を頂く。味は絶品だった。その日はそのまま床についた。


………

……


 翌日から、村の広場に行って情報収集を始めた。

 まずこの世界の名はアトラス。アトラスには6つの国があり、ここはガラパゴ共和国の辺境の村トウゲンだそうだ。隣のノーマン帝国に接している。

 村の広場のベンチはいつも賑やかだ。みんなおれの世界の話に興味があるようだ。何人かが不思議そうに自転車を見ていたので、貸してあげる。


 村人の何人かと仲良しになれた。

 おれの世界の科学やインフラの話を興味深く聞く、金髪のおねえさんキャシーさん。同じく青髪のおねえさんレイラさん。

 おれの世界の政治の話を興味深く聞く、茶髪のおじさんアーロンさん。

 自転車を貸すと時速100キロくらいでかっ飛んで行く、赤髪の暴走おばあさんパトリシアさん。同じく黒色のマッチョおじさんゴードンさん。2人とも、なぜそんなに早く自転車を漕げるのか不思議だ!?


 みんな、おれの相談にのってくれる。


………

……


 10日目、魔剣スパルタンの通訳無しでも、村人と簡単な会話が出来るようなっていた。

 明日、リハクさんに魔剣スパルタンを返そう。そう思っていた。


 11日目の朝、起きて服を着ようとしたら魔剣に手が触れた。

 その瞬間、おれの体が勝手に魔剣をつかみ、素振りを始める。

 1回.2回.3回.4回.5回.

 これは前兆というやつか?やばい、はやく魔剣を離さないと。

 寝ぼけているのだろうか?精神干渉されているのだろうか?手が開かない。

 6回.7回.8回.9回.10回

 破滅の音が聞こえました。


『あなたを魔剣スパルタンのマスターと認めました』

 暖かみの無い女性の声が頭の中に響いた。

「何んか頭の中で声が聞こえたが、もしかして魔剣か?」

『はい』

「意思の疎通は出来るのか?」

『はい』


「おれを解放してくれる?」

『拒否します』

「とりあえずこの素振り止めてくれる?」

『チッ仕方ない』

「今舌打ちしたろう?」

『なんのことでしょう』


「そもそもお前はいった何んなんだ?」

『私は遥か昔、世界の最強を目指す者に作られました。この剣のマスターを最強とならしめるため徹底的に鍛えます』

「え、強化魔法とか、必殺のスキルを与えてくれるんじゃなくて?」

『そんな都合のいい剣ではありません。修行あるのみです。短期間で最強に至る方法を提供します』

それを聞いた瞬間、頭の中に、とあるダイエット会社のCM曲が流れた。

「この世界だと、おれはどれくらい強いの?」

『カスです』

「…」


「それと、魔剣に呪われた人はみんな精神に異常をきたすと聞いたけど?」

『呪いだなんて心外です!むしろ恩恵です。ただみんな修行についてこられるだけの強い精神力を持っていなかったということです』

「おれは耐えられると思う?」

『あまり期待はしていません。ただ、修行は辛いですが、ある程度の実力が付けば修行内容の交渉も受け付けます』

「修行内容を交渉出来るのか!?」

『はい』


「ならちょっと頑張ってみようかな」

『そもそも拒否権はありませんが』

(このままここで生活するのには、おれは弱過ぎるらしいし、とりあえず修行してみるか。魔法を覚えたら楽しいだろうし)


『早速ですが修行の内容を説明します。まずは体力と魔力の強化から始めます。ある程度強くなるまでは、かなりハードな修行となります。

次にスケジュールですが、

7時から12時まで魔法の修行。13時から19時まで体術の修行。20時から6時まで剣の修行となります』


「あれ、寝る時間が無いんですけど?」

『問題ありません。意識を失っている間は私が操り修行させます』


「え、ちょっと待って、それ怖いんですけど」

『待ちません』


「拒否します」

『拒否権はありません』


「逃亡します」

『位置探知と瞬間移動がありますので、私からは逃げられません』


「壊れた筋肉が再生する暇がないんですが?」

『《パーフェクトヒール(完全回復)》魔法で治すので問題ありません。そうやって鍛えると何倍も強くなれます』

 回復したら強くなるって、どこぞの野菜星人かい。


「ご飯を食べるのに、働かなければいけないんですけど」

『リハク氏に集っているのを知っています』

 詰んだな、おれ………


………

……


7時~12時:魔力の練り方というのを習った。

 魔力を練っている間に何度か気絶し、魔剣スパルタンに何度も《スピリッツヒール(癒し)》魔法をかけてもらう。


13時~19時:闘気の練り方というのを習った。

 闘気の使い方が下手なため筋肉の筋や腱が何度か切れ、魔剣スパルタンに何度も《パーフェクトヒール(完全回復)》魔法をかけてもらう。


20時~6時:…

 白目を剥きながら、操り人形のようにカクカクと魔剣スパルタンを振い続けるおれの姿がそこにあった。


………

……


 7時の朝飯時、食事しながら半分眠っているおれの様子が心配になり、マリアンさんが声を掛けてくれた。

「あの~、生きていますか~?」

「ほへ、マリアンさん。だ、大丈夫であります」

「思ったより頑丈ですね~。本当に大丈夫~?」

「Zzzzzz]


 あとで知ったが宿屋《桃色仙人》の料理には、凄い癒しの効果があるらしい。


………

……


初めての投稿です。まだ何も分からない状況ですので、温かい目で見てくれるとありがたいです。

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