第3話 〜ワン国〜
「ここがワン国の首都【騎士】か」
屋敷から約1日と13時間。長すぎた旅路は終わりを告げ、着いたのはベリリン国の隣国。正義と剣を司る騎神を崇める由緒ある国【ワン国】。
この国の首都の真ん中にあるお城は騎士学校としても使われている。
そう、俺は試験に受かれば今日からお城に住むことになる。
「活気溢れてんな〜」
検問を抜け、俺は馬車から降り街をぶらぶらしている。
騎士試験まではあと1時間。余裕に間に合うし、この国の食べ物とかを知っておきたい。欲を言えばラッキーパンツを見れないかと思っている。
「それにしても……賑やかな街だな」
今日が試験がある日ということもあって、沢山の人がこの街を埋めつくしている。
露店や女、カッコイイ男。……あれは絶対に騎士試験に出る奴とかこの時に賭けてる人間たちがいっぱいだ。
こんなに人が居るのもワン国の治安が良いからだろう。
「……あわっ!?」
そして、俺の目の前にはあからさま戸惑い、困ってるんだろう剣を携えている女が居る。
よし、無視をしよう。田舎者と絡んでも意味が無いし、どうせ騎士試験の会場はどこですかとか言うんだろ。
「……あ、あのすみません」
「他の人をあたってくれ」
「え……そ、そんな」
それは周りの人も同じようで、誰もアイツを助けようとしない。可哀想な奴だ。どう考えても面倒くさそうな感じがプンプンする。こういう時に声をかけて助けるのが、騎士になる奴か——
「おっ嬢ちゃん、どうしたんだよ」
「…………あ、はい。こ、困ってます……!」
「ならおじちゃんが助けてやるよ。お礼は……体かな!」
「はうっっっっ!?」
あの酔っ払いジジイ、あの子の体目当てだな。お尻を掴みやがった。欲望丸出しなのがよーく分かるわ。あの女の体は正直にナイスバディだし、赤髪の髪と赤色の目、どう考えても美女! そんな奴のことを気にせず俺は探訪してぇのに!
だけど………あーーもう!
「こい!」
「はうあ!?」
「あっちょ、待てよ!?」
俺はこいつの手を握り、走っていく。どうせこいつは戸惑っているだろうが、俺はマジで気分が悪い! 俺はな、女が怖いんだよ!
変な汗がいっぱい出てくるし、お腹が気持ち悪くなる!記憶を無くして、思い出したのはシルフィードへの復讐心とパンツ、女性が苦手な事だった。
女が履いているパンツが好きなだけで女は苦手な馬鹿みたいな性格なんだよ!
その俺が女性の手を繋いんでるんだぞ!? 殺す気か!?
「ここまで来れば大丈夫だろ」
「あ、あひがとうございます!?」
「……別にいいけどよ。お前気をつけろよ……。この世界にはお人好しだけじゃねぇんだ。あとお前、そこそこ美人だし」
「あ、ありがとうごいましゅ……」
こいつはなんてシャイな奴なんだ。いきなり手を握った俺も悪いけどよ、そんなに恥ずかしがるなよ!
「じゃあ、俺は行くから」
「ああああの!」
「あ?」
「付いてって……いいですか?」
「…………好きにしろ」
◇◇◇◇◇
本当に俺の後ろを離れないで付いてきやがる。女嫌いな俺としては虫唾が走るような気分になってるからな!
こいつもこいつで、俺に付いてけば騎士試験に着くと思ってんだろ!?
その通りだよ! ってかもう付いたわ!
「開始15分前。今回はどんな試験なんだろうな」
周りを埋め尽くす、屈強な男や若い青年、年老いたジジイも居る。死ぬ確率があったとしてもここに居る奴らは当然、お金の免除や食事の提供とかを目的としてもあるが……英雄に憧れてるんだろ。
この世の人達は誰かに、強者達に助けられた奴らばっかだ。そいつらが夢を見て、ここへ受験する。
「これより騎士試験を開始する!」
やっと始まったか。あの舞台上にいる女騎士、確かあいつは第1騎士団副団長だった気がするな。
「試験は簡単だ! 今からここの決戦場へ一体のゴブリンと戦ってもらう! そのゴブリンに勝てば晴れて騎士団へと入団出来る!」
————ザワザワザワッッッッ
「ゴブリンだってよ。今年の試験は簡単なんじゃないか?」
「馬鹿言え! 騎士団がそんな簡単な試験するわけないだろ!」
「確かにな……。最初に行く奴を見て挑戦するか」
ゴブリンという雑魚モンスターと戦わせるとかどうしちまったんだよと思うが……決戦場に突如として現れたゴブリンを見て周りの空気が変わる。
「このゴブリンは忌まわしきゴブリン・ロードが作ったゴブリンだ!」
「ゴブリン・ロードだと!?」
「おい嘘だろ……。今回の試験は本気で来たな」
「……ゴブリン・ロードか」
世界には5体の歩く災害と言われるモンスターがいる。
歩く災害の中の1人ゴブリン・ロード。そいつが作り出した分身体は……とてつもなく強い。
「こいつを殺すか戦闘不能にすれば合格! もちろんお前らが殺されそうになったら私が助ける! さあ! 試験の……開始だ!」
わあ〜凄い!