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第2話 〜旅立ち〜

 ————ガチャッッッ


「…………パン」


「あ? なんだよアオ?」


 夜遅く。


 明日は早くにそれぞれが旅立つってのに、アオがこんな時間にやってきた。月明かりと俺の机の上にある、少量の明かりのランプでアオの顔がギリギリ見えるぐらいだ。

 何も言わないでああやって立ってたら、アオは絶世の美女なんだがな。……その美女と合わないほど俺の部屋は散らかってるが。


 思えば今日が最後……会えるのは確かにもう当分はないけど……ってかこの状況は——


「もしかして昔みたいにお化けが出た〜っとか言うんじゃないよな?」


「ばっか!? それはもう忘れなさい」


「へいへい。それでどうしたんだよ」


「ただ……今日が最後だと思って」


「それがどうしたんだよ」


「それがって……。あんたから見たらそうかもしれないけど、私から見たら——」


 俺とアオはあの悲劇からの唯一の生き残りで、一緒に暮らしてきた家族。

 アオは多分死なないし、俺は死ぬ確率がある。


 なんたって俺は錬金術師だからな。


「俺は今日が最後の夜だとは思ってないぞ。俺は……シルフィードを倒す最強の騎士なるからな。そして、お前が最強の色付きになって一緒に倒せばいいんじゃねーか?」


「……当たり前よ! 私の言いたいのは別にあるの! 私…………私とパンはもう当分会えないから……寂し……いってことよ!」


「お前が俺と会えなくて……寂しい!? あははははは! お前そんな性格してたっけ?」


「もう! いっつもそうやって茶化すのが嫌いなの! だから……もう当分会えないからここで言っとくわ!」


 アオは俺に指を指し、大きな声で……この屋敷の人達全員に聞こえるような声で喋る。


「私は伝説の色付きになってシルフィードを倒すわ! その時……まだ私とパンが生きてたらつ……つつつつつ、付き合い……ましょ!」


「……最後めちゃくちゃ声が裏返ってたけど……。まっ考えといてやるよ」


「なっ!? 私の一世一代の告白が!?」


「だがな! お前の宣言は一生叶わないがな。なんたって俺がシルフィードを倒して、パンツを履かせて……次いでにお前のパンツも見る! どうだ? お前より最高の夢だろ?」


「もう! なんで……私はこんなやつが好きなのよ!?」


 アオは怒った顔をするが、まだ頬が赤い。それほどあの告白が恥ずかしいし、思いが籠ってたんだろ。

 まっまーー、俺も少し……ほんのほんのほんーーーの! 少し嬉しかったから——


「夢が叶った時は、俺がお前に告白するわ」


「うぇっっ!? あっっっ!? 言ったわね! その言葉……絶対に忘れないから!」


「ああ、忘れるな。俺とお前の約束だ」


「あううぅ……も、ももう私は寝るから! おやすみ!」


 ————バタンッッッッ!


「は……はや」


 アオが勢いよく閉じた扉を見て俺は吐息し、天井を見上げる。あいつのことは一目見た時から……好きだった。

 俺の夢とアオの夢が叶うのは……何年後か分からないが……その時になるまで突き進もう。


「その為にはこれを創んねぇとな」



 ◇◇◇◇◇



「よしっ支度よし! この部屋のゴミ達を収納バックに全部入れてっと!」


 俺は今日の旅立ちの為に作った何でも入るバック、無限バックを創りこの部屋にあるゴミを全て入れといた。

 いつか使えるかもしれないし、持っておく価値はある。


「今日でこの屋敷ともお別れだな」


 俺は長い廊下を歩き、玄関へと着く。俺が乗る馬車はもう着いていて、アオは今朝もう旅立った。

 最後の言葉は案外ざっくりしたもので、「頑張んなさいよ」

「おう」ってな感じで別れた。

 あいつには俺の過去最高作品のブレスレットを渡したんだが、まさかダサいと言われるとわな〜。


 今度会ったらぶっ殺してやる。


「坊っちゃま……今日でお別れですね」


「メイビス。今日も今日とてお前は綺麗だな。パン——」


「坊っちゃまと出会えて幸せでした」


「あ、うん。パンツは……もういいわ」


 数々のメイド、執事達が門までの道を創り、俺に挨拶をしていく。

 気持ち悪いほど丁寧で、気持ち悪いほど心にくる。


 あーーー行きたくねぇんだわ。


「坊っちゃま……」


「ジェンソン。お前には結局1度も勝てなかったな」


「いや、坊っちゃまがもっと研鑽を積まれたら私なんか足元にも及びません」


「はっ……最上級騎士がよくそんなことを言えるな。……この屋敷を頼んだぞ」


「はい。任されました」


「よっしゃ! じゃあ行ってくるわ! お前ら元気でいろよ!」


「「「「「「「はい!」」」」」」」


 これからだ……俺の冒険は



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