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第1話 〜成長したな〜

「あれから……10年か……早いもんだ」


 ————カァンッッッッッッッッッッッッッッ!


「はあああああああぁぁぁぁぁ!」


 ————カァンッッッッッッッッッッッッッッ!


「同じ生き残った、あいつがまさかあんな強いなんてな」


 部屋の外から見えるだだっ広い中庭で必死にこの屋敷最強の執事と戦っている16歳の少女。

 あいつはルイセンス国で起きた大災害の被害者であり、生き残りのアオ・デーデルだ。生き残りって言っても俺とあいつしか生き残ってなかったんだけどな。


 俺は重症に対してあいつは”無傷”であの災害を生き残りやがった。後から聞いた話では覚醒し、伝説の色付き職業になったと。


「全ての才能は若干俺が勝ってるんだが……俺の職業は錬金術師(アルケミスト)ってのが皮肉なもんだよな」


 俺は周りの人から驚愕されるような才能を持っていた。


 剣術も、拳術も全てが俺に味方してたなんて。

 なのに俺は錬金術師。戦闘職には敵わない、最悪の職業だ。ある程度鍛錬を積めば職業が昇華されると聞き、頑張った結果は【失われた錬金術師】という意味の分からない職業になってしまった。

 殆どの錬金術が下手くそになっちまって、創れるのが武器とか俺の想像上の物。


 伸縮自在の鞭や、様々な武器に変形する指輪


 理屈や意味は分からないが創れてしまうのだからすげーよな。


「あ、あれは負けるわ」


 右上から斬りかかった剣は、執事のジェンソンの蹴りで弾かれた。細身のせいで体勢を崩し、アオはジェンソンの右殴りを素直に受けてしまう。

 痛そうな声が聞こえてもアオはまたジェンソンに斬り掛かる。


「また同じ癖が出てますよ」


 ジェンソンはアオの剣を右に避け、当たると思った剣が当たらなかった為体勢をまたもや崩す。

 もう隙だけらけのアオをジェンソンは長い脚で蹴り上げた。


「かはっっっっっっっ!?」


 ジェンソンにボコボコにされてても、アオはそこら辺の兵士よりも余っ程強いんだがな。

 ジェンソンが生かせん強すぎるのと、アオの——


「仲間意識というものが入ると……こうも弱くなりますか!」


 ジェンソンがよろめいたアオに更に左からアオの顔面へと殴ろうとしたがジェンソンの拳をアオは剣でガードはしたものの余裕で力負けし、顔面に剣が直撃する。


 ————ガァンッッッッッッッッッッッッッッ!


「うわっっ……痛そ〜」


 KO。アオは地べたに倒れ、頭から血を流す。


 女の子なのに将来を期待されてるからな……仕方がないな。これを見てると色付きなんかにならなくて良かったわ。


「パン! 貴方も久しぶりにどうですか!?」


「うるせー馬鹿執事! 俺は女のパンツしか興味無いんだよ!」


「いやはや、貴方が下着フェニミストではなかったら良かったのですがね」


 小声で言っても聞こえてるわばーか。


 別にいいだろパンツが好きで! あと下着フェニミストだとブラジャーも入るからな!

 俺はパンツが好きなんだよ!


「じゃっ俺は……創りますか」



 ◇◇◇◇◇



「パンーーごはんだよーーー!」


 ————ガチャッッッ


「うっわ、相変わらず汚いのは普通なのね」


 パンの部屋に散らかる様々な物


 鎧があれば武器があれば、指輪、ネックレスなどなんでもあるんじゃないかと思うぐらい、変な物がそこら中に散らばってある。


「あんたさ〜、もうちょっと部屋片付けたらどうなの? 流石に汚すぎない?」


「うるせーよペチャパイ。そんなこと言ってねーで早くパンツ見せたらどうだよ」


「…………あんた、今度殺すから」


 俺は今創っている最強の物を机に置き、アオと一緒に部屋を出る。

 この屋敷に住まわせてもらって約10年。

 変わったことがない屋敷でも、唯一変わったとするなら執事とメイドの年齢と、めぐるましいほど成長し、強くなったアオ位だろう。


 でも、アオは小さい頃からパンツを1回しか見せてくれず、メイドも見せてくれない。

 記憶を”失って”可哀想な俺なのに。


「そういえば……夕方ぐらいにジェンソンにぼろ負けしてたな」


「…………ジェンソンが強すぎるだけだし」


「はっ! お前が弱いだけだろ」


「なっ!? あんたも私に勝ったことないじゃない!?」


「…………パン———」


「あーーーーーーー! いいわよ! 負けたわ! 負けたわよ!

  だからその話はもう止めなさいよ!?」


 俺はこいつのパンツを幼少期に見た事がある。きっかけは剣の指導中、俺の方が執事に褒められるためアオが苛立って俺に勝負をしかけてきた。

 昔だから勝てたが今はぼろ負けだろう。


「まさかおまえが負けたらすんなりパンツ見せてくれるとはな」


「あーーー! うるさいうるさい! あの時が私の1番の汚点だわ! 」


 下ネタまみれのクソみたいな話をしていると、やっと食事を食べるところに着いた。

 この屋敷は本当に広すぎる。


「お嬢様、お坊っちま。今夜のお食事は——」


「いいわいいわ、メイビス。お前と俺達はもう家族のようなもんだし、俺達は実質捨て子。そんな敬語使われても気持ち悪いんだわ」


「ですが……私はまだ見習いの身、そんなことは到底許されることは」


「でも、ジェンソンやカルノとかは敬語だけどな。そんなかしこまってないだろ? だからいいんだよ」


「あらそう? 私は聞いていて気持ちがいいけどね」


「けっ、これだから高飛車って言われるんだよ」


「別にいいでしょ!? 私はこういう性格なの!」


「まっアオは気にしないで、普通にしてくれ。そっちの方が俺達は楽だから」


「かし……分かりました。では、普通の敬語にさせていただきます」


「それが1番いい。ってことで父さんを待つか」


 まだ書斎に篭っているであろう、父さんを待つこと約2分。父さんがドアを開け部屋に入ってきた。


「悪い遅れたな」


「全然いいよ父さん。アオはお腹空きすぎて死にそうだけどな」


「全然空いてないし! ってかパンだってお腹の音鳴ってましたけど!?」


「うるせーな」


「はははは。私が来る前に食べてればよかったのではないか?」


「それは有り得ないな」


「有り得ないわね」


 父さんはこのベリリン国の頭脳と言っても過言ではないほどの優れた頭脳を持っている。

 毎日書斎に引きこもり、国の政治やルイセンス国を陥落させ、居座っている最凶の敵 シルフィード率いる【風の国】の対策などを練っている。


「相変わらずうめーんだよな。この屋敷の飯は」


 父さんとアオ、俺はいつもこの時間に飯を食い、一言二言交わすだけで食事は終わっている。

 父さんは寡黙な方で、自分からは話題を出さないし喋るのが苦手な方だ。そんな父さんに気を使って俺達は話をせず、ご飯を食べているが……大抵、父さんが話題を出すのは大切なことの時だ。


「明日だな。アオとパンが旅立つのは」


「旅立つってただ学校にいくだけだよ父さん。……でも、当分は会えなくなるわね」


「俺が行く騎士学校って……ただの鬼畜学校だけどな」


 この世界には4つの学校がある。


 騎士学校


 魔法学校


 聖職学校


 色付き学校


 騎士学校は剣で戦う奴や、剣の戦闘をもっと磨きたいやつが行く学校だ。

 食料などお金の心配は入学した時点で免除されるが、圧倒的なほどに実践の戦闘を重視しており、毎年の死亡者多数。

 2年間の学校生活を終え、卒業した頃には騎士達の仲間入り。


 まっ簡単に言えばただの一般兵になるみたいなもんだ。


 魔法学校はただ魔法を極めるだけの学校。戦闘も行わずボンボンやプライドが高い奴らが行くクソ学校。


 聖職学校は回復を専門に行い、2年間の学校生活で人を治す術や助ける術を教える。


 そして最後にアオが行く色付き学校


 色付き学校は職業色付きにしか行くことを許されない。……云わばエリート学校。

 色付きはこの世界で数える程しかいなく、極僅かな色付きを育成するための学校。


 それほど色付きは最強だ。


 そして、4つの学校の中で1番死ぬ可能性と1番強くなる可能性があるのが俺が行く騎士学校。……うっわ、考えるだけで恐ろしいわ。


「……私は戦闘が得意ではなかった。だから頭を鍛えた。それだけだ。だが、お前たちは戦闘の才能を持っている。アオは誇り高く、パンは……パンツの為に生きている」


「……俺だけなんか違うな」


「だからだ。だから……父親としてこれだけは言っておく……死ぬなよ」


「もちろんよ父さん! ジェンソンには負けっぱなしだけど……きっと立派な色付きになるわ!」


「俺も、それなりの奴になるからさ。大丈夫だよ」


「ああ……そうだな。お前たちは立派な俺の子供だからな」


 これが家族との最後の食事。


 まさか……もう家族で飯を食べれなくなることになるなんて……誰も思わなかった。


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