表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/58

4.ナナリーとピート

新キャラ2名追加です。

お楽しみください。


8/19一部訂正しました。

ようやく目覚めたネイリーンをナナリーが抱えてやってきたのはつい先程。


一日たった愛娘は、翡翠色の目をうっすら開けて定まらない視点を泳がせていた。

私が一目見て気に入った桜色のベビードレスが良く似合っている。

すっぽりと私の腕に収まると、ネイリーンは本能でおっぱいを察知したのか、ふぇふぇと胸にすり寄ってきた。


「はいはい、今あげますよ」


ネグリジェのボタンを数個外し、慣れた手付きでネイリーンに初めての授乳をする。

ンクンクと胸に吸い付いてる姿は本当に可愛くていくら見ていても飽きない。


「上手ねーネリィ。たくさん飲んで大きくなるのよ」


やわらかいほっぺをプニプニと人差し指でつつくと、邪魔だよと睨まれた気がした。


「昨日のネイリーン様は本当に手がかからないお利口さんでございましたわ。大騒ぎすることもなく、よく飲んで、よくお休みになられました」


ベットから少し離れた場所でこちらの様子を眺めているナナリーは、昨晩掛かりきりだったはずなのに疲れた様子は見られなかった。


ネイリーン専属乳母ナナリー。

正式にはナナリー・スコット子爵夫人。

私よりも3つ年上の24歳で3児の母だ。

彼女がその年齢よりも若く見られがちなのは、口ほどによく物を言う薄青の大きな目のせいだろう。

ふわふわと癖のある金髪の彼女は、しっかり者のお母さんといよりも可愛らしいお母さんという感じがした。


「ナナリー、近くへいらして」


私も子育てにはガッツリ関わっていく予定だけど、公爵夫人という立場から家の事やら社交の事やらで全ては見きれないだろう。

なので私の代わりにナナリーにはネイリーンを心優しい淑女に。

大事なところだからもう一度言おう。

心!やさしいっ!!決して人をいじめたり、はめたり、手を出したりしない!!

まっとうな淑女になれるよう力を尽くしてもらいたい。


「昨夜からのお勤めありがとう。とうとう昨日無事ネイリーンが誕生しました。ファンドール公爵家の令嬢として、これからこの子には様々な事が起こるでしょう。良いことだけでなく、時にはひどく傷付けられることもあるでしょう。私とギルバートは親として出来うる限りの愛情を注ぎこの子を守っていくつもりです。そしてナナリー。あなたにも深い愛情をもってこの子を一緒に育て欲しいと望んでいます。あなたの力が必要です。どうか私に力を貸してくださらないかしら?」


ネイリーンをまっとうに育てるためにも、ナナリーの協力は欠かせないのだ。

ここは1つ、へりくだってでも私の手足にするべくナナリーを懐柔しておきたい。


私はネイリーンを抱いたまま、傍で立っているナナリーを請うように見つめた。

そんな私の気持ちなど分かるはずもないナナリーは、私の言葉にひどく感動したようで、両手を胸の前で握りしめながらプルプルと震え始めた。


「なんてもったいないお言葉!お任せください奥様!このナナリー、命に掛けましても誠心誠意ネイリーン様にお仕えし、淑女中の淑女へとお育てしてみせますわ!」


よしよし、これでナナリー、ゲットだぜ。

こうやって着実に足場を整えていくことは大事なことだ。

ましてや、直接子育てに関わる乳母なのだ。

友好的である事は大変望ましい。


「ありがとう、ナナリー。これからどうぞ宜しくね」


腹黒い感情は一切出さない見事な笑顔で、私はナナリーと熱い握手を交わした。


その後ナナリーとは今後の予定やネイリーンの将来の展望などの話で盛り上がった。

同世代ということ、同じく子育て中という事もあり、思った以上に打ち解けられたように感じる。

立場の違いはあるけれど、ナナリーとは良き友人関係を築いていけそうだ。



「奥様。ピートが来ました」


しばらくするとマーサから声が掛かる。


ピート、来たわね。


「ありがとう、通してちょうだい。ナナリーはネリィを頼むわね」


いつの間にかおっぱいを飲み終わり、そのままスヤスヤと眠ってしまったネイリーンをナナリーに預け、少しはだけていた衣装を正す。

ナナリーはネイリーンを起こさないように大事に抱え、私に軽く会釈をするとそのまま部屋を後にした。


「奥様、お呼びとの事ですがいかがされましたかな?」


ナナリーと入れ違いに私の前に現れたのは、後ろに撫でつけられたシルバーグレーの髪に立派な顎髭を蓄えた線の細い初老の男性。

穏やかそうに細められた髪と同じグレーの瞳が、銀縁の眼鏡の奥から覗いている。

彼こそがこの屋敷の全てを切り盛りする公爵家筆頭執事のピートだ。


一見、好々爺然としているが、かなりのキレ者であることは間違いない。

先々代の頃から公爵家に仕えている長老のような彼は、必然的にこの屋敷の使用人の頂点に立っていた。

ピートはギルバートの公私に渡る補佐の他、この屋敷の管理、領地の運営サポートと公爵家のありとあらゆる事に精通していて、彼なくして公爵家はまわらないとまで言われるほどだった。


そんなピートを私が呼び出す理由など、もちろん、例の宝石事件についてだ。



私、考えたんです、これでも。

どうしたらこの事件を防げるのか。


でも、この密売ってこれから始まるとかじゃきっとないと思うんだよね。

いつからかは分からないけれど、すでにエジルブレンと接触していると思うし、もしかしたらすでに密売されているかもしれない。

あんな大きな事件が突発的に起こるとは思えないし、大きい事件であればあるほど機密が漏れないように慎重に作戦を練って進めていくはずだ。

だからエジルブレンとの接触の前に阻止することはもう出来ないだろうと思う。


じゃあどうするのか。


ギルバートの罪はこの事件について無知だったことだ。

自分の領地内で起こっていた事に気付くことなく、国によって発覚するまで何も知らなかった事。


一番始めに事件を掴んで、自ら逮捕しなくてはならないはずなのに、まるで蚊帳の外にいた事。


それが領地管理能力に対する疑問となり、周りから不審の目で見られ、「無能」と見放される事に繋がるのだ。


ならば、ギルバート自身にこの事件を解決してもらえば良い。

事件自体を止めることは出来ないが、領主がきちんと領内を把握して、自浄する力を見せることが出来れば、そこまで非難されることにはならないだろう。


そこで大事なのは国が動き出す前にこちらが動かなければならないということだ。


私の記憶によれば、宝石事件が起こるのはネイリーンの1歳の誕生日の前だったはず。

残された時間は1年弱だから、それよりも早い段階で動いて相手の尻尾を掴まなければならない。


…なんだかあまり時間がない気がするな。


そこで思い立ったら吉日とばかりにピートを呼び出したのだ。


なぜギルバートじゃなくてピートなのか。


いきなりギルバートに鉱山が怪しいから調べてみてよって言ったところで、何を根拠にと鼻で笑われてしまうだろう。

ましてや私は今まで領地経営などには興味を持っていなかったし。


ならば、”将を射んと欲すれば 先ず馬を射よ”である。

ギルバートの右腕でもあるピートから進言させるのだ。


ピートなら私が調べて欲しいと言うことを無下にはできないはずだ。

これでもこの屋敷の女主人だからね!

理由はなんだっていい、適当に言おう。

とにかく探りを入れて欲しい。

疑問に思うきっかけを作りたいのだ。


私は意を決してピートに向き合った。


ピートさんの想像図を書いた見たら、カーネルサンダースさんになってしましいました。

一回り小さくなりますが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ