表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/58

22.視察準備完了

いつもご覧頂きありがとうございます。


登場人物がこれからどんどん増えてきて人名が混乱しそうです。


ではお楽しみ下さい。

かつて画家が使っていた寝室の扉の上には”薬学研究室”と書かれた木製のプレートが付けられている。

以前までベットやクローゼットがあった教室くらいの広さの部屋は今、エキサイルの指示で運び込まれたあらゆる器具で埋め尽くされ、もはや画家の暮らしていた面影は一切なくなっていた。

画家の描いたであろう大きな絵が飾られていた壁には黒板が取り付けられ、その前には新品の教卓が1つおかれている。

さらにその教卓前には光沢のある大きな黒い机とクッションだけが異様にフカフカの椅子が2つ仲良く並んでいた。


今その椅子に座っているのは期待に胸を高まらせた様子のネイリーンと、もう1人。

毛先だけがピョンピョンと跳ねている亜麻色の髪を持つ少年だ。


緊張した面持ちで固まっている少年の名前はクロードといい、なんとあのセドリックとシーネの2番目の子どもで現在8歳。

ハリオットの1つ、ネイリーンとは3つ離れている。

少し長めの前髪から覗くブラウンの瞳はちょっとだけ垂れていて、迫力のある両親と比べると随分のんびりした印象の男の子に見えた。


ハリオットの乳兄弟でもあるクロードは、ネイリーンが生まれると将来側近として側に仕える事が決められ、よくナナリーと一緒にネイリーンの遊び相手をしてくれた。

ネイリーンがする女の子特有の我が儘な振る舞いに困った顔を浮かべつつも、最後にはハイハイという感じで後ろをついてきてくれる優しい男の子である。


まぁファンドールにいる男子全員に共通するが、結局は女子の押しの強さには勝つことができないんだね。

なので今回の毒物勉強会も、あらゆる場面で主人となるネイリーンをサポート出来るようにと一緒に学ばせることになったのだ。


ちなみにハリオットの側近に決まっている兄はウォルトルといって、こちらは大人びた雰囲気を漂わせる10歳の少年だ。

ブラウンの髪に両親譲りのグレイの瞳の彼も、この度ハリオットに伴って魔石や魔道具を学ぶことが決まっている。

どちらの子も主人となる人物が変わり者なので苦労が絶えないと思うが、どうか見放さないでやってもらいたいと心から願っている。



というわけで

本日はネイリーンとクロードにとって初めての授業の日である。

初日と言うことで私も軽く様子を見るべく、教室の端に席を設けてもらった。

少しだけ待っていると指定の時間になったのかヒールの音を響かせて白衣を着たエキサイルが室内に入ってきた。


おお、白衣姿になると一気に学者の雰囲気が出てカッコいい。

この前はなかった眼鏡もポイント高いです。

いつの時代も白衣に対する萌えはあるもんね。



カッカッカッ!!


黒板の上を走るチョークの子気味よい音が室内に響く。


”毒をもって毒を制する”


そう書いたエキサイルがくるりと振り返り教卓に両手を付くと、やや前のめりな姿勢でこう始めた。


「初めまして、ネイリーン様、クロード君。これから貴方達に毒を中心とした薬学をお教えする、エキサイルと申します」


エキサイルのハスキーだがピンと張りのある声が二人に向けられる。


「貴方達にはこれから私が知っている毒などの知識を幅広くお教えしていきます。けれどまず覚えていて頂きたいのは毒は何の為の物なのかと言うことです。花にしろ、生物にしろ、毒を持つ物はその毒を悪意で使う事はありません。自分の身を守るため、種を守るために毒を使うのです。そして一口に毒と言ってもどこまでを毒と言うのかなどの決まりもありません。貴方達が普段飲む水でも飲み過ぎれば毒となるのです。逆に普段毒として用いる物も時には薬として使われる事もあるのです。正しき知識、正しい心でこれからお教えする事を自分の中に取り込み、決して悪意に晒すことはせず世の為に、人の為に活かして頂きたい。よろしいですか?」

「「はい!!」」



ああ、すごい先生だ。


私は率直にそう思った。

まず最初に心の在り様から説いてくれるなんて、エキサイル先生は素晴らしいわ。

あの時アルフレッドリからエキサイルを勧めてもらえて本当に良かったと感謝する。

この先生なら私が恐れているネイリーンの悪役令嬢としての行動も抑えられるんじゃないかと期待が出来た。


「では始めましょう。最初はネイリーン様がどんなことを知ってらっしゃるか、私に教えていただきたいですわね」


その後私はネイリーンの語る知識の多さに脱帽しながら、活気に満ちた3人の様子を静かに見守った。




季節はあっという間に流れ、蝉時雨がやかましい夏になりました。

領邸内はもちろん、エンナントにいる皆の気持ちがソワソワとしております。


なぜなら、とうとう明日、マグノリア王国王太子であらせられるシャスティン殿下がこのエンナントへ視察に来るからです。


あー早かったなーこの3か月。

ネイリーンを毒漬けにさせるだけじゃないのですよ、私の仕事は。

これでもこの領地を治める領主夫人ですからね。

殿下をお迎えする為に領邸内のゲストルームを殿下仕様に、それはもう気合の入った仕様に整えて、さらに殿下に付き添う方々の部屋や、警備の方々の宿やらを準備し、ギルバートが殿下の側仕えと協議を繰り返し立てたスケジュールを把握し、そこに組み込まれた行き先に先触れや準備を整わせ、その進捗を確認したり…


ミスは許されませんからね!

ただでさえファンドールはサザノスをやらかしたので、殿下はともかく周りの大人の目は大変厳しいのです。

つけ入る隙は見せてはならないのです。


侍女、侍従、使用人の教育しかり、お出しする料理のチェックしかり、挙げたらキリのない細かな作業が山ほどございましたわよ。


忙しいのには慣れてはいるけれど、今までとは種類の違う王族絡みはもう気が疲れる…


ハリオットやネイリーンにも徹底的に挨拶や作法を教え込んだし、掃除も皆が頑張ってくれたからどこもかしこも光り輝いている。


よし、もうこれでどうにかなるだろうと息を吐けたのはすでに日が落ちてからだった。


今は一人、寝室でマーサが下がる前に淹れてくれたリラックスできるハーブティーを飲み、以前、前世を思い出した時に作った年表を読み返している。


私が念入りに読み込んでいるのは、年表の横に記した登場人物の項目だ。

今回視察でやってくる人物、シャスティン・ウォン・マグノリア。


ゲームではネイリーンの婚約者であり、ヒロインのメインターゲットだったマグノリア王国第一王子。

ゲームの始まる15歳の彼の容姿はもう運営の溺愛が分りすぎる程、甘いマスクの王子様だった。

王道のサラサラ金髪ヘアーと王家にしか見られないアメジストの瞳が揺れるくっきりとした力強い目。

通った鼻筋にシャープな顎のラインの黄金比はまさに眉目秀麗の言葉が良く似合う。

他を圧倒する立ち居振る舞いはカリスマ性に満ち、まさに王国を統べる為に生まれてきたような男だった。


前世の大村さんも大いに盛り上がって壁にポスター貼ってたよ。

等身大パネルは手に入れられなくて悔しかったんだよねー。

あの声優さんの声も良かったんだよ!

男の子から男性に代わる絶妙な甘さっていうのかな?

幼さの抜けた艶っぽい声。

いやー悶えたもんです。

何度もイヤホン付けて耳元でささやいていただきました。

15歳に成長した時、あの声になってたら泣くかもしれない。

中身どうなってんのよとか思うかもだけど。


いや、そうでなくて!!

声とかはいいのよ。


彼の性格は正義感溢れる、曲がったことが嫌いな子。

常に正しく強くあろうとする真っ直ぐな子だった。

ただ自分の理解の出来ないことに関しては融通が利かず突き放してしまう場面も多々あった。

ヒロインの登場によってその自身の常識が崩され、広い見識を得て素晴らしい統治者へと成長していくんだ。


でも今はまだヒロインと会えていないから自分の中の常識しかいない。

この性格を踏まえればネイリーンとの対面時にネイリーンの毒愛を目にすれば、拒絶の態度を示し突き放しに掛かるはずだ。


うん、それでいい。

殿下の側仕えもネイリーンにドン引きしてもらい、殿下と一緒になって“あの娘はないです。”と王達に掛け合ってくれればいいのだ。


このシナリオに進むためにこの3か月、皆で頑張ってきたんだもの。

明日はまず昼前に到着されてから歓迎の昼食会。

その後国立図書館へ移動し古の本の見学と国立図書館と研究所の視察。

その後は領邸に戻ってきて夕食までは休憩。


イベント起きるならここね。

ここで子どもたちに屋敷を案内させる予定だもの。

もしくは次の日かな…


どうか上手くいきますように!!

この婚約が破棄されればこんなに大きいフラグ回避はないわ!!

あとはヒロインと勝手にイチャコラしてもらえばいいんだから。


私は持っていたノートを鍵付きの引き出しに仕舞ってからバルコニーへ続く窓に向かった。

ギルバートは最後の調整を行っているようで今夜はまだまだ掛かるのだそうだ。

なので、今夜はこのまま一人で就寝することになるだろう。

一人でいると、いよいよ大舞台を前にしてるからか緊張で手に力が入ってしまう。


「もう、やーね。」


私は愚痴をこぼしながらバルコニーに出ると、山から下りてくる涼しい風が心地よく吹いてきた。

夏と言っても山と湖に囲まれたエンナントの夜は過ごしやすい。

この心地よい風と湖面にぼんやり映る街の灯の美しさを見ていれば不思議と落ち着いていくはずだ。

王都ではこんな風にぼんやりと外を眺めるなんてしなかった。

見たとして空に浮かぶ月を眺める程度だった。


エンナントに来て4年。

何度こうやってここから外を眺めただろう。

真っ暗な湖畔とそれを取り囲む優しい暖色の灯がユラユラと水面に揺れる様子を見ていると、自分が転生して今この世界に生きている不思議な因果を思い起こしてしまう。

こうして前世の記憶を持って私が生まれてきた意味はきっと、不幸に陥るこの家やそこに関係している多くの人を救うためだと信じていたいのだ。


だから、きっと、上手くいく。

皆で笑い合ってずっと生きていける未来を、それを築くために私がこうやって存在しているのだと思いたい。


暗闇に浮かぶ幻想的な光を見ながら、スーッと気持ちが凪いでいくのを感じていた。

声優さんの声ってなんであんなにいいのでしょうか。

皆様の好きな声優さんで当ててみて下さいね。


では次は王子登場だ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ