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17.踊り場の所信表明

ご覧いただきありがとうございます。


今回はちょっと短めです。

新生活は挨拶からですね!

挨拶の回です。


いつも誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

キチンとした文を目指して頑張ります!


ギルバートとエンナント行きを決めてから早いものでもう3ヶ月経った。

私達一家は今日、無事にエンナントでの謹慎生活に入っていた。


あの後、ギルバートは予定通り王との謁見の場で自主謹慎を申し出た。

王は神妙な面持ちで「其方がそう言うのなら今回の件はこれまでとしよう」とこれ以上の罰を設けることはしない事を宣言してくれた。

周りの反応はやはり様々で、「甘い」と言う者もいれば、「公爵は無関係だ。」と反対してくれる者もいた。

ギルバートの仕事の引き継ぎや、オーガンの件の聴取もあるのですぐに謹慎とはせず、3ヶ月後と決められたのは幸運だっただろう。

尚書官の同僚達はギルバートの穴をどうやって埋めればいいのかと泣きついて来たらしく、その光景を想像すると微笑ましく思う反面、惜しんでくれる事への感謝でいっぱいになった。

彼らが困ることのないようしっかりと仕事は片付けて、わかりやすい引継書でも作成して欲しいと思う。


私も今までお世話になった人への挨拶周りや、直接会えない人達へ手紙を認めたりとやることはたくさんあった。

仲良くしてくれたご婦人の中にはわざわざ屋敷まで足を運んでくれる方もいて、私との別れを涙ながらに惜しんでくれた。

結婚したての頃に必死になって築いていった関係は、いつのまにかしっかりと根を張り実を結んでいたんだろう。

私はあの頃の自分を褒めてあげたい気持ちになった。


エンナントへの荷造りはピートやマーサが中心となって進めてくれたが、女主人である私が直接指示をしなくてはならない事も多かったので3ヶ月というのはかなりギリギリであったと思う。


エンナントの領邸も公爵一家が移り住むにあたって手を入れなくてはいけない所もあったが、そこはメイデルテン様が請け負ってくれたので本当に感謝だ。

ちなみに今まで領邸で暮らしていたメイデルテン様だったが、私達が移ることで領邸から離れると言いだした。

私達は申し訳なさ過ぎて引き止めたが、メイデルテン様曰く、「本当はギルバートが爵位を継いだら前公爵である兄が領主代理としてここに入るはずだったんだ。勝手に旅に出てしまったからしょうがなく代理を続けていただけで私だってもう引退したいのだ。あの時に用意しておいた私個人の屋敷にようやく移れるんだからもう邪魔してくれるなよ」との事だった。


お義理父様、お義理母様……本当に自由な人だったのですね。

そこまで言われるのだからこちらもありがたく領邸に移らせていただこう。


あれ?もしかしてメイデルテン様、自分が引退したいから私達にエンナントへの謹慎を勧めたんじゃないわよね?

自由人の家系に一抹の不安を感じたが、今確かめてみても何の意味もないのでやめておこう。

知らぬが仏なのだ。


バタバタと皆がそれぞれ忙しく3ヶ月準備に勤しみ、季節が夏に変わった本日、晴れて正式にエンナントへの移住が完了した。


私達一家のエンナントでの最初の仕事は、エントランスホールに使用人を集めて挨拶をする事だ。

豪華なシャンデリアが吊されたエントランスホールは花や調度品が品良く飾られていて、玄関扉を開けると飛び込んでくる中央の大階段の迫力は圧巻である。

私達はその大階段が左右に分かれる踊り場に並びホール全体を見渡していた。

大きな屋敷を支えるたくさんの使用人達の中には王都から付いて来た見慣れた顔も多くある。

マーサやミリアを始めとする侍女達の他、乳母であるナナリーにシーネ、そしてミリアを追ってなのかゾルディクスの姿もあった。

ただ、筆頭執事としてギルバートの横にいるのはいつものピートではなく、顔に冷静沈着を貼り付けているセドリックだ。

なんとピートは王都にある公爵邸の管理人として、エンナントには来ず王都に残るらしい。

「いつ戻って来てもいいようにしっかり管理しておきます」だそうだ。

一番信頼を置いていた執事の思わぬ世代交代には少々驚いたが、サザノスでのことを踏まえるとなるべくしてなったのだろう。

セドリックの有能っぷりは鞭姿も含めてすでに堪能済みなので、安心して任せられると思う。

出来ればもう一度どこかであの姿を見せていただきたいと心の中で叫ばせていただきたい。

いや、本当に!切実に!!


「本日は忙しいところ集まって貰って申し訳ない。今日からこちらに移り住むことになった私がファンドール公爵家当主、ギルバート・ファンドールだ」


ギルバートが私達よりも一歩前に出て挨拶を始める。


「皆も知っての通り、先日のサザノスでの騒動で我がファンドールはマグノリアへの謀反の疑いを掛けられる所であった。王により疑いは晴れたが、ファンドール領地内で国を揺るがす事件が起きてしまったのは事実である。そしてそれを未然に防げなかったのは不甲斐ない私の責任だ。本当に済まないことをした」


ギルバートはそこに集まっている皆に向けて頭を下げた。

その瞬間、集まっていた者の顔が一気に曇り、戸惑いに満ちた声があちこちで上がる。

なぜなら普通遙かに高い身分である貴族の、それも公爵自らが使用人達に頭を下げることなどはあってはならない事だからだ。

そもそも貴族と平民の間にはきっちりと身分による線引きがされていて、貴族が平民に頭を下げるなんて事はあってはならないことだと教えられるのだ。

しかし、ギルバートは頭を下げた。

自分が自ら犯した犯罪ではないが、オーガンという人物を輩出してしまったという罪が彼の中にはあるからだ。

そしてその罪は何も悪くない民達にとんでもない苦労を背負わしてしまうところだったのだ。

これはギルバート本人とギルバートに近いほんの数人しか知らない事実だが、彼は自分こそがファンドール領を危機に追いやった張本人だと悔いている。

周りは管理責任を問われての謹慎と見ているが、ギルバートにしてみれば自身の罪による謹慎なのだ。

行いを悔い、反省し、改める為にここに来たのだから、彼は周りからどう思われようが危険に晒すところだった民達にきちんと詫びたかったのだろう。

ギルバートの頭を下げる行為は、ギルバート自身の潔癖さを表しているようだった。


「今日より私達はここエンナントに移り住み、領地のより一層の繁栄の為に尽力していくつもりだ。今はまだ不甲斐ない私達だが、これからは私が領主で良かったと認めてもらえるよう努力する事をここにいる皆に誓おう。何か気付くことがあれば遠慮せずに言って欲しい。私に直接言いづらければこのセドリックに伝えても構わない。より良い領土にしていく為にどうか皆の力を貸してくれ。宜しく頼む」


熱の籠もった真摯な声がホールに響くと、使用人達が「恐れ多い」「こちらこそ宜しくお願いいたします」と次々に声をあげてくれた。

この声に私とギルバートは目を合わせ、なんとか上手くやっていけそうだと安堵する。


「今晩はメイデルテン様を始めエンナントの有力者をお迎えして顔合わせの晩餐会を行われます。皆、用意は周到にお願い致します。では各自持ち場に戻るように」


セドリックが指示を出すと、キビキビとそれぞれがホールから動き出していった。


「始まるわね、エンナントでの生活が」


私は高まる気持ちを胸にギルバートの

隣で皆の動きを注視しながら呟いた。


「ああ、これからも頼むよ、ステア」


同じように辺りを見渡すギルバートの瞳も熱い光が宿っている。


「それでは旦那様、奥様。あちらで本日いらっしゃるお客様のリストの確認をお願いいたします」


さぁ、エンナントの生活のはじまりだ!!

結婚をしてすぐ駆けずり回ったあの頃のように、今度はエンナントで一から築いていこう。


私はハリオットとネイリーンにの額にキスをしてギルバートと一緒にセドリックの後を追った。

ゾルディクス覚えてますかね?

モブなのにちょいちょい出てきて昇格を狙ってる感があります。


ではまた次回!


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