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11.ハリオット再び

ご覧頂きありがとうございます。


無事にステフィアさんはお宝探しに行けるのか?

乞うご期待です。


お楽しみください!

ペチペチと顔に暖かいモノが触れる。

なんだろう、あ、でもちょっと痛いかな?

ペチペチペチ…ペッチン!!


「痛い!!」


目を開けると三日月になっているハリオットの目と目が合った。


「おはようございます、母上。ミリアがこまってますよ-。」


…はっ!!

ガバッと上半身を上げると、そこには申し訳なさそうに眉を下げたミリアが立っていた。


「おはようございます、奥様。お休みの所申し訳ありませんが、そろそろ夕飯のお時間ですのでご準備をしなければ…」


どうやら思っていた以上に眠ってしまったようだ。


「ごめんなさいね。すぐ起きるわ」


布団も掛けずに倒れ込んでいただけだったのだ、幸いドレスはグチャグチャになってはいなかった。

それでも髪や化粧は崩れていたのでミリアが急いで整えてくれる。


「お疲れのご様子ですが大丈夫ですか?」


三つ編みの赤毛にオレンジの瞳のミリアはまだ10代と年若いお嬢さんだ。

芯の強い優しい侍女で私の変化にもよく気付いてくれる。

ただちょっとだけ臆病なところがある娘で、きっとさっきも強く起こすことが出来なかったんだろう。


「ええ、大丈夫よ。ミリアもいきなり泊まりになって悪かったわね。部屋は大丈夫?」

「シーネさんと同室なんて、同期の皆が知ったら羨ましがられます」


体格がよく、男前なシーネは女子に大人気なようだ。

後ろでハリオットに食事のマナーについて口酸っぱく言っている姿では説得力に欠けるが、シーネがかっこいいのはわかる気がする。


「ギルバートはどこにいるの?」


部屋を見渡してもギルバートの姿は見えない。


「旦那様はセドリックさんと先に行かれました」

「あら、じゃあ急がなくてはね」


私は大人しく前に向き直って化粧を直して、もらった。



「お待たせしました」


ダイニングルームに着くとすでにギルバート、オーガン、ディノンの他に、数人の幹部も席に着いていた。

玄関でお出迎えをしてくれた面々である。

ギルバートは私の姿を確認するや否や席を立ち、私を席までエスコートしてくれた。

まるでこの家の主人のような振る舞いだが、どこにいてもその空間を自分の物にしてしまう、ギルバートにはそんな力があった。

実際この中で1番偉いんだけどね。


「では食事にいたしましょう。急遽でありましたが、このように公爵家御一家と食事を共に出来ますこと、サザノス管理人一同、誠に嬉しく思います。ささやかではございますが当屋敷のシェフに腕を揮わせました。是非ご堪能ください」


オーガンが挨拶をしている間に使用人達がグラスにワインを注いで回っていた。

ハリオットはもちろんジュースだ。


「乾杯!」

「乾杯!」

 

そこからはごくごく穏やかな晩餐だった。

美味しい料理に舌鼓を打ちながら、ワインを嗜み、会話に花が咲く。


挨拶止まりだった幹部の人達とも初めて話をする事もできた。

サザノスの町の様子や人々の暮らしは大変興味深く、血気盛んな鉱夫達は夜になり酒が入るとあちこちで諍いが絶えないらしい。

夜に町には出ないでくださいと念を押された。


「あら、幹部の皆様は全員オーガン様就任後での着任なんですか?」


ある会話に私は食いつく。


「はい。古参の者達は鉱夫達に無理を強いる働き方をさせていて、その改善に当たられたオーガン様とは合わなかったようですね。どんどん成果を上げるオーガン様の手腕を前に、自分の未熟さを悔いて山を降りて行きました。確かに鉱夫達を駒のように使う様は、側で見ていても良い物ではありませんでした。その後私を始めとする者達がオーガン様に押される形でこの任に着いたのです」


幹部3人の中でも1番年若い青年が精悍な表情で答えてくれる。


「鉱夫達も自分達を守ってくれるオーガン様に皆感謝しております。サザノスの繁栄はオーガン様なくしてあり得ませんから」


もう1人が付け加えるように言った。


オーガンは随分とサザノスの皆に慕われているようだ。

裏では国を裏切る行為に手を染めているなんて、今ここで言っても誰も信じてはくれないだろう。

私が仮に今晩何らかの証拠を得て、ギルバートにそれを叩きつけ、罪が明るみになったとしたら、ここにいる彼らはどれだけ悲しむのだろうか。

私は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべてしまいそうになるのを必至に堪えて、笑顔で「そうですか…」と流すのがやっとだった。




「楽しい時間でしたわ。ありがとう」


無事に晩餐を終え、私とハリオットだけは一足早く部屋に戻らしてもらった。

男性陣はまだまだこれから一飲みするらしい。

どこの世界も男は酒が好きだな。


部屋に備え付けてある浴室にまずはハリオットが入り、次に私が浸かった。

もちろん私もハリオットも侍女が付きますよ。

私的には1人で、もしくは親子で入ってもいいんだけどね、世話好きなので許してくれませんでした。

まぁ私は少しだけだけどお酒入ってるしね。


用意された寝衣を着てハリオットと二人で寛ぐ。

今日1日のことをあれこれと語り合う幸せな時間である。

ハリオットは鉱山見学で見たもの、触ったもの。

騎士のよりも筋肉隆々の鉱夫達が少し怖かったけど、とても良くしてくれたことなど次々に話してくれた。


「母上、しってますか?オーガンのキーチェーンにはいろんな魔石がついているのですよ」

「あら、知らなかったわ」

「ぼくのお顔の前でキラキラひかるので、とってもキレイでした」


さすが魔石オタク。目敏いのね。


「おもしろい魔石もついてました」

「あら、なぁに?」

「レディロウです。この魔石はマグノリアでは採れないので、とってもめずらしいのです!」


???

どう言うことかしら?

ハリオットはエッヘンと得意気に言っているが、魔石素人の私にはその意味がわからない。


「マグノリアでは採れない魔石なの?」


わからないことは素直に聞こう。

この子の知識は侮れない。


「そうなのです!レディロウはエジルブレンでしか採れなくて、しかもとても少ししか採れないのでめったに見られないんですよ!!」


“ラッキーでしたぁーっ”とパァッと明るい表情をしてるハリオットとは対照的に私は驚愕していた。


え?エジルブレンって言ったよね、今。


「間違いではなくて?あなた図鑑でしか見ていないのでしょう?」


そうそう、子どもの見間違えはよくあるしね。

珍しいなら尚更ねぇ。


「そんなことはありません!」


おっと、ちょっと怒ってるわね。


「ぼくの目の前にあったので、よぉーーーーく見えました!レディロウにしかない泡が見えましたぁ!!」


またわからない事を。


「泡?」


私は思わず呟く。

そこからハリオット先生の魔石講習が始まってしまった。


「レディロウは赤の魔石の中でもとってもとっても貴重な魔石ですが、見た目はマガラカという魔石にそっくりなのです。よく間違えられますが、よーーーーく中を覗くと小さな泡が入っているのです。これはマガラカにはありえません。オーガンの魔石には泡が入っていましたから、あれはレディロウで間違いありません!あんな珍しい魔石をもっているなんてすごいです!オーガンは!」


おおう、凄いのはあなたですよ。

もう立派な魔石研究員ね。

将来は領主やめてそっちに行ってしまうのかしら?

いや、それはダメよ!

後継がいなくなったらファンドール家が断絶するわ!

ネイリーンとは違う意味でキケンよ!


思考が逸れてしまったので元に戻そう。

えっと、オーガンが持っている魔石の中に、エジルブレンでしか採れないので珍しい魔石レディロウがぶら下がってると。

これは魔石博士曰く、とても貴重でめったに見られない。

なぜそんな魔石持ってるの、オーガン!

もう疑惑が止まらない。

あああ、ソワソワする!落ち着かない!!


「ミリアっ、お茶いただけるかしら?」

「はい!かしこまりました!」



そうして、どうにかこうにか気持ちも落ち着かせて、とうとう夜になりました。


こんばんは、皆様。

淑女にあるまじき夜中の徘徊を決め込もうとしております、ステフィアです。

ベットにはハリオット&ギルバートがスヤスヤと寝息を立てております。

よし、酒飲んでぐっすりだな!


私は無事にベットを抜け出し、寝衣の上に厚手のガウン羽織って準備万端!

では、行きますかね、深夜の執務室、お宝探検!


扉を少し開いて顔を出す。

右、左…よし!誰もいない!

もし誰かに会ったとしても、夜風に当たりたくてくらいに言えばよい。

とにかく、静かに、執務室までの道を歩いた。

夜の屋敷は明かりが灯っているとは言えどこかやはり不気味で、静まり返る廊下の先から何か見えちゃうんじゃないかという気さえする。

ちょっと怖いわねぇー、こんな時は1人が身に染みるわ。

怖気付きそうになる気持ちを、没落未来回避の情熱で押さえ込んだ。


それにしても人気がない。

夜中だけれども、見回りの気配すら感じない。

いつもは公爵家だから当たり前のように夜勤の護衛が屋敷内にいるけど。

あくまでここは鉱山管理棟だからなのだろうか。

普通がわからないので何とも言えないが、人に会わないならそれに越したことはないのでズイズイと進んだ。


そして、とうとう執務室前に辿り着いた。

が、ここに来て私はふと思ってしまった。

鍵、開いてるのか?


当然、扉には鍵穴があった。

それもそうだ、重要機密があるような部屋なのに鍵がないなんてありえない。

ピッキング?出来ないわ!

でももしかしたら開いているのかもしれないじゃない。

一縷の望みを掛けて恐る恐るノブに手を掛けて回す。

すると、―カチャ―

なんと、開いてたわ。

オーガンもディノンも信じられない不用心加減ね!

でもラッキーだったわ。


お邪魔しまーす!


私はドキドキする胸を押さえながらそーっと執務室の中に入り込んだ。


出ましたね、ハリオくん。

その知識で大人の思惑をぶち壊していきます。

無邪気って怖い。

さて、次回はとうとう執務室侵入です。


頑張って書いてきます!


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