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第1章8話 『離別』

シスターが出て行って1週間。

シスターは帰ってきていない。


というのも王都の協会から呼び出しを受けたらしい、書き置きにいてあった。


子どもを1週間置いていくのってどうなんだよ、とは思ったがシスターも顔を合わせづらかったのだろう。


俺のことはアンナさんに頼んでいたらしく、1日に1回は俺の様子を見にくる。


俺はというと、ローウェルさんに魔術の基礎を教えてもらっていた。


「アベルは飲み込みが早いのぅ。うちの弟子どもにも見習わせたいわ。」


魔術の基礎は魔力を感じることから始まる。


普通はここで時間がかかるらしいけど、俺の場合魔力が多かったお陰かすぐに魔力を感じることができた。


あとはイメージと自分の魔力を結びつけることで魔術として形になる。


もちろん強大な魔術を使う場合それ相応のイメージが必要になるため時間がかかる。


だが、俺の場合単純に小さい火を付ける、少しだけ水を出す、程度のことしかできないためイメージに時間がかからない。


お陰ですぐに使うことができるようになった。


「これ以上教えることはないのぅ。1週間経つし、そろそろ儂も王都に帰らんと怒られる頃じゃし、お別れじゃの。」


元々出立の準備は終わっていたようで、それから30分ほど経ってから馬車に乗ればもうすぐにでも出れる状態になった。


「色々とありがとうございました。」


「もうすでにアベルも儂の弟子じゃ。王都に来たら、儂を尋ねるといい。

ギルド本部で儂の名前を出せば家の場所を教えてくれるじゃろう。」


そう言ってローウェルさんはあっさりと出立して行った。


魔術についてはほぼこれで頭打ちだろう。


これから冒険者になったときどうすればいいか考えないといけないな…。


そんなことを考えながら12歳の誕生日を迎えるまで過ごしていた。














それから2週間が経ったがシスターが帰ってこない。

王都までは片道1週間らしいので、そろそろ帰ってきてもおかしくはないんだが。


まだ謝れてもいないし、早く帰ってきてほしかったんだけどな。


冒険者ギルドに顔を出す気にもなれず、一人で孤児院で木剣を振っていると知らない男性がやってきた。


「君がアベル・グラントか?」


「はい、そうですが。」


少し疲れた様子の男性が懐から丸まった羊皮紙を取り出した。


「私は教会の者だ。手紙を預かったので君に届けにきたのだ。」


「はぁ、ありがとうございます。」


多分、シスターからの手紙だろう。

教会関係の知り合いなんて他にいないし。


「…これから大変だろうが頑張ってくれ。」


そう言い残して男は去って行った。


一体何のことだろう…。


手紙を開けて中身を見る。


『アベルへ

シスター・セレーネです。いきなり手紙を届けて、何のことかわからないでしょう。ごめんなさい。

率直に言います、私は孤児院に戻ることができなくなりました。

元々無理を言って孤児院勤めにしてもらっていたのですが、色々な事情あって、教会本部に戻らなくてはいけなくなりました。

孤児院のことですが、孤児院は閉鎖となります。

アベル1人しかいない孤児院に資金を割くことはできないと至極当然なことを言われました。

まぁ、カデナではあまり孤児がいなかったので大きく問題にはならないでしょう。

貴方のことはギルドマスターとアンナに頼んでいます。

成人まで見守ることができないのが本当に申し訳ないです。

冒険者になって欲しくないというのは私のワガママでしょう。

次に会う時には、頭ごなしに怒ったことを謝らなくてはいけませんね。

ですが、これだけは言わせてください。

アベルがどう思っていようが、私は貴方と家族だと思っています。

また会う時には、お互い笑いながら話せるといいですね。

少し早いですが、お誕生日おめでとう。』


孤児院が閉鎖?こんなに突然?

情報が多すぎて整理しきれない。


何も考えられず、その場に立ち尽くした。


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